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恋話に飢えてた勢の襲来


 結局カレンちゃんとミュラーは水浴びをして帰ってきたらしい。土を被って汚れている姿を見た先生方のご厚意だとか。


 戻ってきた途端、カレンちゃんがみんなにも迷惑を掛けたことを謝ってたけど、優しいクラスメイトたちはみんな笑顔で許していた。麗しい友情である。


 なおその根本の原因であるミュラーからの謝罪はなし。


 いやいいけどね別にぃ。


 それ言い出したらウォルフも謝れって話にもなるし。

 カレンちゃんのお陰でストレスも発散できたようだし、これ以上の面倒がないなら何も文句はないさ。


 密かに息を吐いていると、同じように肩の力を抜いていたカイルの様子が目に入った。


 ……そういえば今日は、やけにカイルが優秀な気がする。

 いつもより気が利くというか、言う前に行動してるというか。役に立ってて悪いものでもないんだけど、若干居心地の悪さのようなものを感じる。気の所為かな……?


 なんとなく観察を続けていたら、視線に気づいたカイルがニヤリと笑い、手をひらひら。その意味は「あとは任せた。俺はもう何もしない」……へえ。


 やっぱりカイルはカイルだった。


 あれだね、きっと不良が捨て猫に優しくしてたらギャップで普段の行動の悪辣さを見逃しちゃうみたいなやつだね。評価は一時の印象じゃなくて普段の行いこそを見て判断するべきだよね。うんうん。


 今日珍しく頑張ってくれたカイルくんは、ご希望通り何もしないのが良いと思うよ。

 今日これから何か問題が起きても気にせずに、無駄な介入をせず、大人しく事態がどうにもならなくなるまで待っているのがいいんじゃないかな。勿論私はその間に、最大限自己保身へと走らせていただく所存ですけど。ついでにカイルくんの将来の為に、お姉さんが苦労を買いつけて送り届けてあげる優しさを発揮する予定ですけど、他人に任せちゃったんだから多少の不利益くらいは仕方ないよねぇ、うふふ。


 問題なんか無いに越したことはないんだけど、今ならちょっとくらいの問題はむしろウェルカムですよ〜。まるっと一本化してカイルにお届けするよ〜、んふふ。


 不敵な笑みを向けると、カイルはあからさまにたじろいだ。そしてふいと顔を背ける。ふっ、勝った。


 ――勝利を確信した私の左右に、二つの気配。


「目と目で会話。仲良しの証」


「ソフィアが特別な笑顔を向けるのは、いつだってカイルだけなのよね♪」


「違うよ?」


 私の発言を無視して「大丈夫。全部分かってるから」と言わんばかりの表情を浮かべる四人。って四人? あれ??


 待ってください、増殖するのが早すぎませんか。

 いくら恋バナの気配を感じたからって来るの早すぎるしそもそも集まる必要だってまるで無いと思うんですけど!!


「私が調べたところによると〜、今日ソフィアはカイルくんの事を気にしてた様子? ちらちらと見ている姿を目撃したという情報が多数寄せられていまーす」


「私の方には、ソフィアはカイルくんと視線で会話した後、嬉しそうな笑顔を浮かべていたという情報が……! これは決定的な証拠なのでは!?」


「ソフィアは照れ屋。追い込むのはダメ」


「それでも、時には攻めの姿勢を見せないと! ミュラーとウォルフを見たでしょ? いくら心で通じ合っていると思っていても、男は身体で迫られただけですーぐコロッといっちゃうんだから! カイルの事だって、ちゃんと捕まえておかないとどうなるか分からないわよ!?」


 おかしいな。カイルを罠にはめる策略を練るつもりが、私が罠にガッツリ嵌った。これもカイルの陰謀か。


 もはや脱出は不可能と潔く諦めた私の頬に、人差し指が突き付けられる。んむぉお。


「ソフィア、認めちゃお? ほらほら、自分の心に素直になろ? 好きなんでしょ? カイルの事がぁ、好きなんでしょおぉ〜?」


「社交に出てこなかったソフィアは知らないかもしれないけど、カイルくんの評価って今凄いんだよ? なんか騎士団に内定もらったーなんて噂まで出てて」


「絶賛大人気。婚約まで秒読み」


「とまでは言わないけど〜。……そろそろ予約しておかないと、危ないかもよ〜?」


 そうなんだ、凄いね。

 でもおかしいな、私その騎士団知ってる気がするんだ何でだろうね。


 黙っているのも不自然かと思い、一応の反論を試みる。


「知ってる? 聖女って結婚できないらしいよ」


 だから諦めてね、というつもりで言ったのに、何故か瞳がギラリ。獲物を見つけた目になった。なんでじゃ。


「でも恋はできるっ!」


「むしろ恋が盛り上がる要素でしょ?」


「禁じられた恋。背徳感」


「つまり聖女になったから泣く泣く諦めたって解釈でいいのかな? 本当は結婚したい程に愛して――」


「ないです」


 知ってる。これもう何言っても無駄なやつよね。


 私は無駄な労力は使わない主義なので、早々に黙秘権を行使する事にした。だから早めに諦めてよね。


「この休みの間にも何も無しかー」


「これもうカイルくん(そそのか)した方が早くない?」


「でもそれだとロランド様が――」


「恋心の自覚が必要」


 本人を目の前にして始まった密談から意識を逸らし、窓の外へと視線を向ける。


 今日も楽しい一日になりそうだった。


休み明けの情報収集兼ソフィア弄り。

ソフィアも素っ気なくしてるけど、これはこれで楽しんでいる模様。

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