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みんなで論評


 地面ボコボコ対戦の後、ミュラーとカレンちゃんは事情聴取という名目で、校舎から来た先生に連れ去られてしまいました。


 このままじゃ二人が危ない! 助けに行かなきゃ!


 なんてことは勿論ないので、私たちは二人が戻ってくるのをのんびりしながら待つことにしたのでした。


 のへへ〜ん。レモンティーが飲みたい気分〜。


「はい、終わり。どうかな?」


「んー……うん、大分スッキリした! ありがとねソフィア!」


 仕上げのブローを終えて確認を取れば、満足そうに微笑むクラスメイト。


 カレンちゃんの豪快すぎる戦い方により土被り姫が量産されていた現状を見るに見かねて、私は魔法による簡易ドライヤー屋さんを急遽開店したのだった。


 お代はみんなの笑顔だよ☆ それか後日、美味しいお菓子を献上してね☆


 なお女子を優先して相手してたら羨ましそうに見ていた男子はカイルが真似して対応してた。土埃を風の魔法で吹き散らしてびゅーんな簡易版。


 感謝の言葉もそれなりに聞こえるが「女子にやって貰う機会を奪うなんて……!」的な発言もちょいちょい聞こえる。そんな相手にも律儀に対応とかよくやるよね。女子側はとても平和で和やかです。


「いやー、それにしてもカレン、すごかったねー。あのミュラーがなんか、攻めきれなかった! って感じじゃなかった?」


「そうですわね。傍目には攻めあぐねているように見えましたけれど……実際はどうだったんですの? ソフィアさん」


「なんで私?」


 次のお客さんの髪を、もふあー! 風で膨らませていると、何故か会話に混ざるようお誘いがきた。


 魔法関連なら分かるけどなんで剣のこと聞くの? まあ分かることなら答えますけど。


「私にもそんな感じに見えたかな。多分だけど、カレンの対応力を見てたんじゃないかな」


 私も食らったから分かるけど、あのカレンちゃんの地面爆発攻撃は、来ることが分かっていれば攻めようはあると思う。でもだからこそ使い手もそれを十分に知っていると考えるわけで。


 あんな陽動の見本みたいなド派手な技で攻撃方法を限定されたら、誰だって罠かもって思うよね。


 ……まあ私は、そう思う前に土砂の中に沈められて負けたんだけど。完膚無きまでに策にはまって、人生初の生き埋め体験をさせてもらったんですけど!!


 そう考えると、あれを初見で避けたミュラーはさすが剣姫様って感じだよね。


 やっぱり剣を振るう威力とか見てるのかな? それとも視線から狙いを看破した的な?


 どちらにせよ、私には超反応で見てから対応する方が向いてそうだなぁ。


「対応力ってなに? 具体的にどんな?」


「えーっと……。毎回あんなことしてたらすぐバテそうだし、足元も自分で不安定にしてるからすぐ自滅しそう、みたいな」


「なるほど、確かに!」


 自分で言った事ではあるんだけど、納得されるとそれはそれでどうなのか。


 てゆーか冷静に考えると、あんな攻撃連発してたら魔力無駄遣いが激しすぎるし、自分にだって土が飛ぶ。なぜその戦法を選んだと問い質したくなるレベルの無理無茶だと思う。


 それをミュラー相手に成立させた事実を褒めるべきか、破壊神コースを選んじゃったことを咎めるべきか……。


 とりあえず次カレンちゃんと戦うことがあったとしたら、土には最大限の警戒をしよう。土の匂いも味も、戦闘中に感じるものでは無いと思う。


 …………はっ! 以前ミュラーに土礫を卑怯と言われたのも、もしやこの感情によるもの……!? だとしたら私は、カレンちゃんの事を責められない立場かもしれない……!?


 土を被るという、女の子なら誰でも忌避する行為で戦闘を優位に進めようとする、カレンちゃんの深遠なる謀略。


 つまり私は、カレンちゃんの策に敗れたということだったんだね……ふふ……。


 心理的嫌悪感を使った戦法。アリだな。


 そう思う反面、友人同士での模擬戦に多用したら普通に友達をなくしそうな気もする。考えるのはいいけど、使う相手は選ぶ必要がありそうだね。


「ソフィアだったらあのカレンにはどうやって攻撃してた?」


「うーん。土が吹き飛ばされないようにどうにかするか、そもそも振り下ろす前に……」


 自然に答えている自分にハッとした。


 いけない、これは罠だっ!


「……とか色々考えちゃうけど、ミュラーもそのくらいのことは考えただろうし、カレンにはきっとどれも通用しないよね」


 にへらとアホっぽく笑ってみたけど、誤魔化せたかは微妙な気がする。


 にまにまと笑うこの子達は、私の戦闘力を暴いてどうしたいんだろうか。仮想敵、……なんてことないよね? ミュラーじゃあるまいしね?


「やっぱりソフィアって、よく見てるよね」


「そうよね。土の被害も一人だけ少なかったものね」


「だからそれは風向きが……」


 言い訳を口にしつつも、納得はされないだろうという予感はあった。


 いいけどさ、別に。戦える人と思われるのはいいけど。面倒事だけは押し付けないで欲しい。


 そういうのは全部、あちらのカイルへお願いします!


 私は切に、そう願うのだった。


なおネムちゃん美容室は、その加減の効かない風力により主に衣服用土払いとして人気を博した。

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