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新魔法が欲しい


 幻惑魔法に、変身魔法。


 自分の中のイメージが定まるにつれ、今まで思った通りの事象を起こせなかった魔法も段々と理想に近い効果を発揮できるようになってきた。


 けれどこれらは私にとって、新たな魔法という枠組みの中にない。


 思い付き、試し。失敗の原因を分析し。


 実現可能性とイメージ構築。

 それら様々な要素を信じやすい形へと落とし込み、研鑽することによって、やがて実用可能な魔法となる。


 それは使える魔法の種類を増やす為に必要な手段ではあるけれども、イメージとしては魔法を育てる感覚に近く、新しい魔法を生み出したという意識は薄いものだ。


 つまり、何が言いたいのかと言うと。


「新しい魔法が欲しい」


 一言で言えばそーゆー事だった。


 いやーー昨日ヘレナさんが新しいのを作ったって聞いてからどーーも創作欲みたいなものがねー、うずうずそわそわとして堪らなかったんだよねーこれがまた。


 私もなんか「これは新しい!!」と思えるよーな魔法をまた作りたい。できれば自主的禁呪指定するくらいのトンデモ系でひとつ。新しいのが欲しいのーっ。


 とはいえ、必要は発明の母とはよく言ったもので。


 今までは必要に応じて新たな魔法を開拓していったこの私。

「なんかすっごいの!」という曖昧すぎる条件だけで新魔法を作るほどの才能に恵まれている訳では無いのでした。


 だけどね、その才能はなくても別の才能はある訳でして。むふふ。


 いつもは封印している「あれいいなー、これもいいなー♪」と目に入る物を何でも欲しがる欲深な本性を解放すれば、新たな「必要」を生み出すくらい御茶の子さいさい屁の河童さんなのであーるっ!!


 たとえばー? 今くっついてる木の枝に、逆さまの状態でもくっつける重力魔法とかー? 木の幹を駆け上がれるような体重を限りなくゼロにする魔法とかねー。


 それが何の役に立つのかというのは置いといて、何かしらは思い付きはする。


 でも時間停止レベルのすっごいのとなるとー……うーむ。あ、地震起こすとか? 地殻変動魔法。


 上手く使えば温泉掘れるかもねー。


「……そ、ソフィア、さん。本当に、足がお早いですね……」


 お、アネットが追い付いてきた。考え事をしながらなせいで加減忘れてたかも。


 でもまあ、人に気を遣いすぎるのって苦手だし。早々に私のペースを知ってもらったと思えば悪くは無いかな。


「足っていうより、ほぼ魔法だけどね。私はアネットと違って魔力使い放題だから、地面蹴る時に足裏で風噴射とかしてるし」


「はあ、そんなことまで……。あ、もしかしてそれで足音が小さいんですか?」


「そだね。私の魔法って威力大きめだから、周囲の影響考えないとほら、地面とか爆発しちゃうし」


 魔法は万能感を与えてくれるけど、決して万能な力では無い。


 部屋を壊したり庭を荒らしたりすると「私がこの部分を壊し、その後で直した」とバレる程度にしか修復できなかったりするのだ。


 壁や天井なんかの破壊痕の隠蔽は大分上手くなった自信あるけど、やっぱり土とか植物とかの自然物はちょっとね。

 全部掘り返して均一にする訳にもいかないし、壊れた生垣とか再生しても全く同じ形には成長しないんだもん。


 ならばやはり、初めから何も壊さないのが一番。


 私も無駄に気を遣う必要がないし魔法の同時制御の練習にもなる。


 たまーに景気良く何かをぶっ壊したくなる以外にはなんの問題もない、完璧な解決策なのだ。


「そうだアネット。私、また何か新しい魔法作ろうかと思うんだけど、いい案ないかな?」


「あ、新しい魔法ですか」


 唐突な私の質問に、すぐに頭を悩ませて真剣に考えてくれるアネット。


 軽い気持ちで聞いてみただけなんだけど、こうも真面目な反応されるとどーしても嬉しくなっちゃうね。ほんとアネットっていい子だわー。どうせならアネットが喜びそうな魔法とかいいかもしれないとか思っちゃう。


 商人が欲しがる魔法といえば……お金? お金増やしちゃう?


 錬金術は果たして魔法と呼べるのだろうか、それだけが問題だ。


「花、などはどうでしょうか。この森には緑ばかりで彩りある花が少ないですから、好きな花を咲かせられたら素敵だと思うのですが」


 乙女かっ!! と私の心が叫んだ。同時に、自身の女子力の低さに絶望した。私からは絶対に生まれない発想…………ぐふぅ。


「いいね。とても素敵な案だと思う」


「お役に立てたようで嬉しいです」


 くっ、純粋な笑顔が私には眩しすぎる。


 素晴らしく乙女的な発想をもらったというのに「食虫植物を好きに生み出せたら定期的に虫を駆除する手間が省けるな」とか考えちゃう自分が嫌だ。


 私は女子力をどこに落としてきたんだろうか? アイテムボックスの中に間違えてしまっちゃったりしたのかな?


 ともかく、花を育てる魔法というのはとてつもなく印象が良く、その割りに実用性もめちゃくちゃ高いという素晴らしい案件だと思う。


 ちょっと真面目に考えてみよう。


 これで私も、女子力アップだ!!


魔物の殲滅を企て、虫の排除を敢行し、金の精製を目論む少女の女子力とは。

ソフィアとアネット(裏)。どこでこれだけの差が出たのか……。

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