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同類誕生?


 ――その言葉には、嫌な予感しかしなかった。


「この後ですが。ソフィアは少し残りなさい」


 私への忠言。そして、お父様やお兄様へのいくつかの確認事項を経て。


 家族会議の場はやがて家族団欒へとその趣きを変え、旅行の感想を話すような和やかな雰囲気になってたもんだから完全に油断してた。


 どんなに楽しい話をしていようと、お母様はお母様。


 例え穏やかに微笑んでいるように見えてもそれは仮初の姿であり、笑顔の裏に隠したその正体とは、私をいじめるのが趣味という性格の歪み切った、悪鬼羅刹が如き性悪の――!!


「……ソフィア?」


「ひう」


 うっひょう、出たよ悪口読心術!


 おおおお母様が相手だろうと、私はもう、すぐに屈したりはしないんだからね! ちょっとは反抗するんだからね!?

 だからお互い暴力はナシでいきましょう。どうかそれだけは何卒、何卒宜しくお願いしたく。


 恐怖のあまり、お母様の視線から逃れるようにそそくさとお兄様のお傍に寄れば、私の不安を敏感に感じとったお兄様が少しだけ困った様子で微笑んでくれた。


「ソフィア。あんまり母上をからかってはダメだよ」


 からかってません! 何も言葉にしてないのにいじめられてるんです! 現実を見て!!


 そう伝えたいのに、お母様がジーッとこちらを見ているので潤む瞳で見上げる事しかできない。


 でも大丈夫。私はお兄様を信じている。


 お兄様と私の絆があれば、目と目で会話をすることなんて容易いのだ!!!


「それと、母上も。いくらソフィアが可愛いからとはいえ、あまり干渉しすぎるとまた恐がられますよ」


「……いいから、早く行きなさい」


「はい。ソフィア、それじゃあまた」


「はい、お兄様。また……」


 また、いつだろう。お母様から解放されたら会いに来てねって事かな? それとも単に、会いたい気持ちが溢れ出た系? んふ、んふふふふ。


 も〜、お兄様ったら。お母様に向かって可愛いだなんて。私がそんなに可愛いだなんて。うふふふふ。もうもう、お兄様ったらぁ♪


 どうしよう、旅行を挟んでからお兄様からの好感度が爆上がりしてる気がする。やっぱりあれ? 夜中の念話が良かったのかな? あれ特別感すごかったもんね! 完全に恋人同士の雰囲気できてたもんね!


 いやあ、これはもうお兄様の目は私に釘付けなんじゃないかな?


 アネットには悪いけど、私は今、この世の幸福を噛み締めているよ。


「それでソフィア。話なのですが」


 そして幸せの後には必ず不幸がやって来るんだ。うん、大丈夫。知ってた知ってた。はは……。


 私もお父様のように気配なく消え去るスキルが欲しい。

 そしたらきっとお母様にも捕まること無く、今頃はお兄様との時間が過ごせてたのにぃ。


「単刀直入に聞きます。ヘレナの件、貴女が関わっていますか?」


「……? ヘレナさん、ですか?」


 が、しかし。半ば諦めてたのに、どうやら叱られる案件ではなさそうな流れ。まだ確定じゃないけど無罪放免の可能性も出てきた。


 ヘレナさんの担当はお母様の領分!! 私は責任なんて絶対取んないよ!!


「心当たりはありませんけど……ヘレナさんが何か?」


 なんのことだか分かりませんわあ? と心底不思議そうな顔で首を傾げてみたら、お母様が僅かに眉を寄せて、穴が空くほど凝視してきた。


 そんな見られても本気で知らないんですけど?


「……………………どうやら嘘は吐いていないようですね」


 私の信用低すぎませんか。


「お母様に信用して貰えたようで、とても嬉しいです」


 とりあえずにっこりと笑っておいた。「もっと自分の娘を信頼してね?」という心の声をおまけに付けて。


 まあしかし、お母様の謎原理による読心術も偶には役に立つね。


 そう、私は無実!

 お母様に怒られるようなヘレナさん関係の事は、例の闇水晶をぽーいとあげちゃったこと以降はきっと無い! はず! 多分!!


「で、ヘレナさんが何を?」


 そして身の危険が過ぎ去ったのなら、残るは新たな話題に対する好奇心のみであった。


 私の関与を疑うってことは、割りと常識を吹っ飛ばしたやつだよね? ヘレナさんは自己評価低いけど、あれで結構破天荒な事するタイプだと思ってたんだ。


「……今日の昼過ぎに、彼女から連絡がありました。とても興奮していたようで、文章を判読するのにも苦労しましたが、その内容を要約すれば――」


 そこで何故かタメを挟んだお母様。

 伏せた瞳が再び開かれた時、そこに浮かんでいたのは――戸惑い?


「――彼女はどうやら、二つ目の固有魔法を発現させたようです」


 ………………ふむ。なるほど?


 固有魔法ってあれよね。お母様の《無言》みたいな、学校で習わないタイプのやつ。その人だけの特別な魔法。


 そんでもって、使えない人も大多数ではあるけど、使える人にしたって一種類が限度って話だったよーな。


 私は自分の口元が、自然と釣り上がっていくのを感じていた。


 そうか……ついにヘレナさんもこちら側へ来たか。


 つまりヘレナさんは、私と同様に、好きに魔法を作り出せるようになった訳だね。


 やったね、非常識仲間が増えたよ!


ソフィアパパ、実はこの集まりの前に既にお叱りを受けていたり。

ソフィアはきっとお父さん似だね。

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