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ほっぺた神の迷推理


 ネムちゃんとのじゃれあいから始まった「ほっぺたもにもに大戦争」は、ヒースクリフ王子の勝利で幕を閉じた。


 カレンちゃんを巻き込み、ミュラーを巻き込み。

 カイルまでもを巻き込んだところで、もじもじそわそわ、仲間に入りたそーにしていた王子様が参加を表明。


 けれどネムちゃん以外は王子様のほっぺたをみょいーんと伸ばして遊んだりは出来ないので、自然と勢いが消失。かといって王子様を無下にする訳にもいかないので、やがて「誰のほっぺたが一番触り心地か良いか」という遊びに内容が変わり、順番にみんなの頬の触り心地を確かめる謎儀式がスタートしたのだった。


 一人の両ほっぺたにみんなが一斉に手を伸ばして触りまくる世にも珍しい謎空間だったけど、案外悪くなかったよ。


 で、その後の厳正なる審査の結果。


 アネット商会の美容品に加え、美容魔法&防御魔法の応用で理想の赤ちゃんほっぺたの触感を再現した私が全会一致で優勝を超えた優勝、「ほっぺた神」の称号を与えられ、人部門ではしっとりなめらか触感の王子様が優勝ということで無事にこの馬鹿騒ぎは終わりを告げた。


 いまいち納得はいかないけれど、楽しかったので良しとしよう。


 なお優勝賞品は、みんなと仲良くなれたことです。良かったねヒースクリフ王子! 友情はプライスレスだよ!!



 ――というわけで遊びの時間も終わったので、私はついにずっと気になっていた、この場にウォルフがいない件について話を聞こうとしたのです。


 そしたらね、それまで楽しげに笑っていたミュラーさんが、ひんやりとした笑みを浮かべられましてね。「……気にしなくていいんじゃない?」って。


 どうしてだろう、建物の中にいるのに極寒の風を感じた気がしたんだ。


 今年の冬は寒いね。もっと暖かくなるといいよね。その為にもこの話はやめよう。きっとみんなも同意見なんじゃないかな、だってみんな急に静かになったもんね。ネムちゃんまでって相当じゃないかな。


 この話題は安易に触れてはいけないやつだと敏感に察知した私たちは、即座に話題を転換。


 次なる話題は、私が発したヒースクリフ王子に関する話になったのだった。


「なるほど。つまりヒースクリフ王子が神殿騎士団に居ることによって、【聖女】という御旗の知名度を上げようと、そういう事なんですね?」


「そうだな。もちろんそれに加えて、私自身がソフィアの傍にいたかったという理由も大いにあるぞ」


 ……でもこの人、実は未だに私の事が好きだったみたいでね?

 お兄様がいる目の前だってのに、やたらと猛烈なアタックをかけてくるんですよ。ホント勘弁して欲しい。


 私は王子様の好意を笑顔で流し、頭の中で情報を整理する。


 つまりはこれから先、私はこのなにかが吹っ切れちゃってる王子様にずーっと付きまとわれるってことなのかな? もしかしなくてもその可能性が濃厚? っていうか確定済み? え、マジで? 真面目に?? うそん。


 ちょっと絶望で目の前が暗くなってきたんだけど……。


 私の人生、もうちょっとイージーモードにしてくれてもいいんじゃないですかね。え、既になってるって? いやいや、それならせめて兄妹の婚姻を認める法律を用意してから……とお兄様の方を見て気が付いた。お兄様は私を見て、ずっと優しい笑みを浮かべている。そう、ずっとだ。


 神殿騎士団はお兄様が用意した組織。

 そしてお兄様は、私が悲しむことなんて絶対にしない!!!!


 信頼を前提において、ここまでの情報を洗い直す。


 そうだ、冷静に考えれば必ず見つかるはずなんだ。お兄様が用意した最高のシナリオが!!


 ――お兄様。聖女。神殿。王子。


 灰色の脳細胞をフル回転して、答えまでの道筋を照らし出す。


 何故王子が必要だった? そもそも最近は――いや、教室での様子は。それなら――。


 ――教室での出来事。お兄様と王子の密談。関わって来なくなった王子。このタイミングでの好意。


 …………繋がった。全て繋がりましたよお兄様。つまりはそういう事だったんですね!!


 全てを理解した私は、お兄様に向かって頷いた。


 つまり、お兄様のお考えはこうだ。



 ――この王子は粘着系。素直に引き剥がしたところで聞きはしまい。ならばどうするか? お兄様が朝から晩までずーーっと付きっきりで守るしかない。

 更には万全を期すため、私を聖女という王族であろうとも無理に婚姻を迫れない存在へと推挙し、万が一襲われる可能性をも排するために護衛の人員まで用意した。そう考えれば全ての辻褄が合う。お兄様の深い愛情が証明されてしまうのだ。



 ――嗚呼。やはりお兄様は、私の為に……ッ!!


 王子が身近に居座るという懸念はある。けれど、見返りは絶大。


 お兄様のお考えを全てまるっとお見通した私は、お兄様とのラブラブ聖女生活と、友人たちとの楽しい毎日の為に、ヒースクリフ王子の神殿騎士団入りを笑顔で容認することにした。


 ……たとえ今更嫌がっても、私に拒否権とか無さそうだしね!


迷推理。

人はそれを妄想と呼ぶ。

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