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その名は神殿騎士団


「ふはははは!! 我らこそソフィアの盾! 聖女を守護する使命を帯びた神聖なる騎士団! その名も【神殿騎士団(テンプルナイツ)】なのだっ!!」


「……という訳なの。どう、ソフィア。驚いた?」


 とてつもなく楽しそうに、高らかな名乗りを上げるネムちゃんの横には、イタズラっぽい笑みを浮かべたミュラーの姿。


 その後ろでは、未だに恥ずかしがっているカレンちゃんを二人の男子、ヒースクリフ王子とカイルの二名が慰めていた。


 なんだろうねこれ。


「うん。とっても驚いたよ……」


 本当に。

 もう本当に、驚きすぎて。


 訳が分からなさすぎてもう、笑うしかないって心境に至っているよ……。



 お兄様に連れられてやってきた神殿風の建物。


 その中で待ち構えていたネムちゃん達の熱烈な歓迎を受けて、私はお兄様が隣にいるにも関わらず、珍しく動揺してしまっていた。


「ええっと……これは何の集まりなの?」


「親衛隊です!!」


「いや違うだろう。役割としては近いのかもしれないが……」


「ソフィアの部下よ」


「えっ、ソフィアのお目付け役じゃねーの?」


「ううぅ、恥ずかしい……」


 自信満々に断言したネムちゃんにツッコミを入れる王子様。

 同じく断言したミュラーに否定を示すカイルと、その足元で蹲り、顔を隠して縮こまっているカレンちゃん。


 意思の統一が成されていない集団から顔を背け、私は傍らに立つお兄様の袖を引き、改めて尋ねた。


「これは何の集まりなんですか?」


 お兄様はいつも通りの優しげな顔で私を見下ろし、こう答えた。


「聖女になったソフィアへのプレゼント、かな。学院を卒業した後、ソフィアはここにいるみんなと過ごすんだよ」


 聖女。プレゼント。


 親衛隊で、部下で、みんなと過ごす……。


 お兄様の言葉の意味を理解するにつれ、私の心の中が歓びの感情で満たされていく。やがて許容量を越えた感情は、すぐに言葉となって溢れ出た。


「お兄様、ありがとうございます!!」


 プレゼント。プレゼントと来ましたか。ほほうほうほう!


 つまりはあれか。私は卒業した後もこのメンバーでわちゃわちゃ楽しい日常を送れると? お兄様のお陰でその未来が確定している? 最高かな!!?


 聖女の仕事をさせるなら部下が欲しいという約束を、まさかお兄様が叶えてくれるとは!! それもこんなにも早く! 考えうる限りの最高のメンバーで!!


 もー、お兄様ってば本当に有能なんだから! だから好き! 超好き! ラブ、フォーエバー!!


 面倒くさいお仕事は全部カイルに任せて楽しい女子会暮らしを満喫できるなんて、なんて贅沢! なんたる至福!


 お兄様の素晴らしすぎる差配に、このソフィア、感謝の証として身も心も捧げたいと思いますっ!!! もう抱いていま抱いて!! なんならリンゼちゃんとか付けちゃうから!


 いいや、お兄様からの行動なんて待ってられない。なんなら私から抱きついてやるう!


「お兄様っ! 私っ、とってもとっても嬉しいですっ!!」


 ガバチョとお兄様の腕を抱きしめ感謝の言葉を繰り返す。


 みんなが見てる? 知ったことか!!


 なんだよぉ〜もぉ〜、お兄様ってばぁ〜〜。

 アネットと結婚する前に私と結婚でもしてくれるのかと思ったら、まさかそれよりも嬉しいプレゼントを用意してくれてるだなんて、想像もできなかったよ〜♪


 んもぅ、お兄様ってば驚かせ上手なんだからん♪ ソフィア、びっくりしちゃった♪


 流石は私の自慢のお兄様。想像を易々と超えてくるねっ! 何度惚れ直しても愛情度がとどまるところを知らないねっ! 私の末代までの愛はもう全てお兄様のモノだよっ☆ 末永く愛してねっ☆


 これだからお兄様の妹は最高なんだよなあ〜〜〜!! という感情の全てを込めて、お兄様の腕に思いっきり甘え尽くしてみた。ぎゅ〜ってしてぐりぐり〜ってしてみた。


 痩身に見えるけど、お兄様って意外と身体はがっちりしてるし、手も案外骨張ってて……実に男らしいよね! 好き!!


「ソフィアは相変わらずね……」


「ねー。ポーズの感想欲しかったのにー」


「はわ、はわわわ……」


「……彼女はいつもこうなのか?」


「いつもだよ。ソフィアはロランドさんの前だと途端にバカになるからな」


 はあ〜、外野がうるさいうるさい。


 君らだってお兄様みたいな素敵な人にこんなサプライズされたら私の気持ちが分かると思うよ。胸がいっぱいになっちゃって友達に見られて恥ずかしい気持ちとか全部どーでもよくなるから。本気でお兄様以外が些事に思えるから。


 ともあれ、お兄様の方がこの状況に恥ずかしさを感じていそうな雰囲気を感じたので、私は名残惜しくもそっとお兄様から離れる決断をしたのであった。


 私はお兄様を困らせたいわけではないからね。良い子で可愛いソフィアちゃんだからね。


 最後にもう一度だけお兄様に感謝の述べると、私は改めて、みんなの方へと向き直った。


「みんなも、私の為にありがとう! これからもよろしくね!」


 満面の笑顔を浮かべれば、みんなも笑顔を返してくれる。


 温かい笑顔に囲まれて。

 私は自分の心が満たされてゆくのを感じていた。


男性メンバーがいつもと違うよ。早くツッコミ入れてソフィアさん。

認識はしていても優先度は低く。

ソフィアにとって、兄以上に優先されるべきものなんてないのだった。

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