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私の悪意は世界イチぃ……


 夕食を済ませてすぐに不貞寝しました。


 ってしたいとこなんだけど、したいとこなんだけどもー!


 お兄様の件。アネットの件。お母様の対応が出かける前と明らかに変わった事や、リンゼちゃんに確かめたいこともエトセトラ。でもでも長旅で身体も結構疲れてるから早いとこ寝たいのも本音だし、もーーー私はどうすればいいの!? ってな感じで、やりたい事とやらなくちゃいけない事とかがごっちゃになって頭の中が大変な状態だったので、これはもうやるっきゃないと、わたくし覚悟を決めまして……!


 結果、くじで決めました。

 夜にやる事……というか、やるかやらないかも含めて。


 こーゆーのって恋愛シミュレーションゲームの選択肢みたいだよね。夜の行動を決めましょう、みたいな。


 既にもう若干お疲れ気味だったので、選択肢の「もう寝る」系統のバリエーションもやたら豊富になりまして。

 王道スタンダートな「何も考えずにすぐ寝る」の他にも、「リンゼちゃんにマッサージされながら寝る」とか「お兄様にまた子守唄を歌ってもらいながら寝る」とか「いっそアネットと寝る」とかちょっと理性が飛びかけてるものがいくつか紛れ込んだけど、幸いにして私が選び取ったのは「今日はメリーとマリーと一緒に寝る」という比較的マトモなものだった。


 ぬいぐるみと一緒に寝るくらい、私の歳ならまだ普通の範疇だよね。


 ……こういうところが成長してないと言われる理由なのかもしれないけどさ。



 ――というわけで、くじの結果に従うべくお母様から二人……二体? を引き取ってきました。


 ベッドにいそいそと潜り込み、両手でぎゅっと抱き締めれば、返ってくるのは程よい弾力と心地よい手触り。


 そうそうこれこれ!

 お父様との旅行中も寝る時になるとなんとなーく手が寂しかったんだよねー! 今日はたっぷり補充しちゃお! むぎゅーう!


「二人とも、久しぶりー!」


 ぬいぐるみの身に痛覚はない。


 だから愛情の分だけめいっぱい抱きしめたところで、二人が苦しむなんてことも起こらないのだ!!


「おかえりなさい、ご主人様」


「おかえりだよ、ご主人様」


 あー、かわいい。あー、癒される。


 まさかぬいぐるみから声が出ることにこれほど癒される日が来るとは思わなんだ。やっぱり離れてみると有難みって分かるものなんだなーと実感した。


「私がいない間なにしてたの?」


 二人の感触を楽しみながら話を振る。


 腕の中でもぞもぞと動く感触がこそばゆかったので、むぎゅっと顔の近くに抱き直したら、短い手足が更に敏感な場所をくすぐるようになってしまった。


 うーん楽しい。


「歴史のお勉強を終えたわ。この国の歴史なら任せてちょうだい、ご主人様」


「報告書の書き方も覚えたよ。国への申請書類なら任せてね、ご主人様」


 お、おう。

 なんか思ったよりも数段実用的というか……えっと、すごいね?


 とりあえず「えらいねー」と褒めておいた。


 メリー達に関してはお母様と何度か話をしてるけど、本当に知れば知るほど謎がいっぱいの存在としか言いようがない。むしろ謎しか存在しない存在でもある。


 そして謎に優秀すぎるからまた扱いに困るんだ。


 もはや人間の子供程度の教養はマスターしてるし、ぶっちゃけ私のクラスにいたら最優秀レベルの学力もありそう。ぬいぐるみなのにこの子ら、本気で頭いいんだもん。


 ……ん、待てよ? ぬいぐるみなのに頭がいい……それは本当に頭なのか?


 ぬいぐるみって頭で考えないよね?

 たとえ頭で考えてたとしたって、それって他の部位と変わらない綿製だよね?


 ……………………なんだかもうよく分からなくなってきたよ。


 脳がないのにどうやって考えたり覚えたりしてるんだろうねこの子達は。実はこの子達に使われている綿は、考える葦的な特殊植物だったり……は、しないよねぇ、流石に。


 とならと、むしろ人の脳か。人の脳が記憶を司ってない可能性とかあるのかな?


 前世では当たり前だった常識が、異世界では当てはまらないとか……。いやでもそれを言うならぬいぐるみが喋って動き出す方がおかしい。それは間違いないはずだ。


 ……自信なくなってきたけど、多分。


「ご主人様、ご主人様。それより悪意、くれないかしら?」


「ご主人様、ご主人様。それより悪意、食べたいな」


 おっと、思考する事に没頭してたらご飯の催促をされてしまった。そういえばその件もあったね。


「ん、好きに食べていいよ。それで、お母様の悪意はどうだったの?」


 この子達は今まで、これほど長い期間私と離れていたことがない。


 定期的に悪意を得る必要があるらしいとは知っていたけど、それが私以外からでも可能なのかという疑問を解消する為に、恐らく私に次ぐ悪意保有量を誇るお母様に二人を預けておいたのだ。


 果たしてその結果は!!


「「全然足らない、美味しくない」」


「あ、そうなの……」


 断言された。


 予想以上にダメだったっぽい。



 ……私の悪意、しばらくダントツ一位は変わらなさそうだという事だけはよーく分かった。


 嬉しくなぁい……。


ソフィアからすると自分に次ぐ悪意の持ち主は母以外には考えられないみたいですけど、実際は兄の方が多かったりします。

それでもソフィアと比べれば、誤差の範囲ですけどね。

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