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私だって成長したいよ


 そもそもなーんで私とリンゼちゃんが言い争わなきゃならないのかーって話なんですよう!


 心配して来てみたらいつも通り元気だった。

 なら「よかったね!」で済む話じゃありませんか!


 そう思ったままを伝えたところ、リンゼちゃんどころかお母様にまで「ソフィアだものね……」みたいな反応をされました。


 解せぬぅ!



 ――リンゼちゃんの正論アタックを根性で乗り越えた私は、お母様の用件を聞いた。


 お母様は元々、私の体調を見るついでに食事を取れるかどうかの確認をする為にやってきたんだってさ。だったら初めからそう言えばいいのに。


 もちろんご飯食べるよ! お腹すいた!


 そうと決まれば早速……と食堂へと移動しようとしたところで、ふらりと視界が揺れ、慌てた私は思わずたたらを踏んでしまった。気付いたお母様が振り返る。


「ソフィア?」


「いえ、なんでもないです」


 あれ、おかしいな。体調に問題はなかったはずなのだけど。


 念の為にともう一度身体を精査。

 魔力を流して反応を見ても、何処にも異常は見受けられない……ああいや、分かった。あるな異常。原因はこれか。


「やはりまだ体調が良くないのですか?」


「いえ、ちょっと魔力が不足してたみたいで。すぐに治します」


 身体に魔力を流す時、どーにも普段とは違った感じがしてたんだ。


 違和感の原因はなにかなーと思ったら単なる魔力不足とか。

 そりゃ流す魔力自体が足りなければスムーズに流れるわけもありませんよね。あっはっは。


「……!? ソフィアでも魔力不足になるのですか!?」


 原因さえ分かれば対処は簡単。足りなければ増やせばいい。


 ぐるぐると魔力を練って増殖させていると、一拍遅れて、お母様から驚愕の声があがった。


 そりゃなるよ。お母様ってば私をなんだと思ってるの?

 そもそも魔力関連の基礎知識を私に教えたのはお母様じゃないか。


 全ての生き物は、魔力がないと生きていけない。


 なので魔力を使いすぎて体内の魔力量が減ると、体調に影響が出る恐れがある。


 私だって生きているので魔力が減ったら体調も崩すし、完全に枯渇すれば命の危険だってある。他の人と何も変わらないのだ。


 ……まあ、当然? そうならない為の備えはしっかりとしてはあるのだけども。


 ついでに言えば、普通の人が大気中の魔素から一日に精製できる魔力量なんかカスみたいに思えるほど莫大な魔力量を、いつでも好きなだけ生み出せたりもするのだけど。


 私自身の保有魔力量が他人と比べてそれほど多いという事実は無い。


 ただ使った分だけ即座に補充しちゃうので、傍から見たら無尽蔵に見えるだけだ。


「なりますよ。身体に必要な魔力が足りなければ体調だって崩します。お母様は私をなんだと思っているのですか?」


「それは……。……いつまでも成長しないけれど、魔法の才だけは凄い子だ、と」


 答えるか。答えますかよこんにゃろめ……。


 いつまでも成長しなくて悪かったね。そして魔法の才能「だけ」で悪かったねッ!!


 聞くんじゃなかった。

 まさか素直に答えるとは思ってなかったから言葉のナイフが無防備なハートにさっくり刺さった。心臓が今、血の涙を流しているよ。


 私だってなあっ、好きで成長しない訳じゃないんですよ!! 成長できるもんならしたいんですよ!!?


 知ってるんだぞ!! お母様は私くらいの時分には既にあちこちご立派に成長していたそうじゃないか!! アイラさんから裏付けは取れてるんだからねっ!


 それを言うに事欠いて「成長しない」なんて……ッ!


 言っていい事と悪い事があるでしょう!? お姉様だってすくすくと育ったのになんで私だけこんなちびっ子で! こんなまな板のままなのか!! これは全てお母様の責任でしょう!? 私にもその勝ち組ボディの遺伝子をちゃんと与えていてさえくれればっ、今頃は何の憂いもなく……ああぁああ!!


 わ、私だって、私だってなあぁぁ!!!



 ………………私だって、成長したいよ……。



 やば、なんか本気で泣きそう。本気で辛くなってきた。


 今日、ヨルに会えないかな……。

 もし会えたら私、あのたわわに実った偽乳をもぎりとってやるんだ……うふふ……。


 目に優しいリンゼちゃんの方を見ながら、私は心の傷にそっと蓋をした。


 当たり前に勝ち組の人達は、いつだって私たちに厳しい。


「……ソフィア? あの……もしかして、傷ついていますか?」


「傷つかないとでも思ったんですか」


 思った以上にいじけた声音になってしまった。


 なんなの。なんで今日のお母様は責め方がこんな陰湿なの。多彩な責め方研究するのとかホントやめて欲しい。私の心が持たないよ。


「ソフィア、ごめんなさい。でもソフィアが成長しないことで、私達も苦労や心配をしているんですよ。ソフィアを傷つけたことは謝りますが、私達がソフィアの成長を願っているということだけは、どうか知っておいてください」


 あくまで真摯に告げるお母様に、私は真の敗北を悟った。


 追い討ちやめてぇ、心が死ぬ……。


 私ってそんなしみじみ言われるほど成長してないですか? ……してないんだろうなぁ。


リンゼ「また私の胸を見て安心してる……。ソフィアは私が年下だってこと、分かってるのよね……?」

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