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Another視点:その後の街(騎士団宿舎食堂)


「まだか?」


「まだみたいだな」


「今日は遅いな」


「そうだな。いつも時間は正確なのに……」


「外で食べてる可能性もあるよな」


「もしかして、それでか? 今日譲って貰えたのって」


「その可能性はある」


「くそっ、嵌められた!」


「待て待て、まだそうと決まった訳じゃないだろ」


「そりゃそうだけどさ……」


「ようお前ら。残念だが、今日はいくら待ってもあの子は来ないぜ」


「やっぱりかよ!!」


「はは……で、理由は?」


「帰ったんだとさ」


「帰った……? まさか、王都にか!?」


「あー、それでかよ。今日はやけに人が少ないと思ってたんだ……」


「残念だったな。わざわざゆっくり食べてたのに無駄になって」


「やめろ、言うな。……いつから見てた?」


「最初から。お前らが何も知らずに食堂に飛んでったって聞いてな」


「あのやろおぉぉおぉ!!」


「はぁーあ、そうかよ。……で、お前はそれをわざわざ伝えに?」


「ああ。俺って優しいだろ?」


「ねーわ」


「嘘つけ」


「信用ねーな」


「あるわけねーだろ!」


「どうせそのクッキー見せびらかしに来たんだろ? これ見よがしに食いやがって。誰に貰った? 酒場の誰かか?」


「んー? ちっがうんだなぁこれが」


「うっぜ。超うっぜ!」


「ちょうど食い足りないと思ってたんだ。悪いな」


「いやいや待て待て! お前らの分もあるから! ほら、本当はこれを届けに来たんだよ」


「え、うそマジで? なんで!?」


「……そういえばこの袋、今日はよく見るな。まさか全員分あるのか?」


「おっ、流石だな。そうだ、全員分あるぞ」


「ひゃっほーやったぜ! しかもこれ、絶対女の子からの贈り物だろ! 俺にはわかるぞ、この袋に込められた女の子の気持ちが手に取るようにッ!!」


「相変わらずキモイな」


「いつもの事だ。で、誰が作ったんだこれ? 流石に全員分となると……料理の練習とかか?」


「あの子からだと。『世話になった礼に』って事らしいぜ」


「は? あの子って、あの子? あの貴族の?」


「本気で言ってる?」


「おう、本気だぞ。つっても俺も聞いただけだけどな。昨日の午後に奥で作ってるの見たって奴も何人かいるし。信じられんが本当っぽい」


「手作りだと!!?」


「うわー、それ美味しくなくても許せちゃうやつ……、って何だコレ!? 異常に美味いんだけど!?」


「えっ、マジで? どれ、俺もひとつ……」


「ざけんな! 自分の食えよ!!」


「おっ、おう……。ちょっとした冗談じゃんか、そんな怒んなよ……」


「ははは。な? やたらうめぇよなコレ。で、なんでこんなに美味いのか分かる奴はいねぇかって事で、俺が聞いて回ってるわけ」


「あぁ、そういう……。食堂のおばちゃん、相変わらず向上意欲すげぇな。本人には聞かなかったのか?」


「『隠し味は愛情です♪』って可愛く言われたらしい。めっっちゃ可愛く言われたらしい」


「なにそれ俺も言われたい」


「うわマジでうめぇじゃん!! え、これクッキーだよな!? なにこれうまっ! 愛情入りクッキー激うまっ!」


「作る人の容姿によって味が変わってる説を推したい」


「気持ちは分かるが、俺にそれを伝える勇気はない。報告代わってくれるか?」


「嫌に決まってんだろ」


「なあなあ、これもしかしてミルク使ってんじゃねーの? ヤギのと匂いがちげーもん」


「違うのは分かってるけど……ミルクって、あのミルク? 菓子なんかに使うか? 値段跳ね上がるだろ」


「ミルクなあ……。それならこの味も納得……か? いやでも、いくら貴族って言ってもそこまでするか? 俺たちなんかのために?」


「するから聖女なんだろ」


「するから天使なんだよなあ」


「お前らあの子のこと好きすぎじゃね? 流石休みの日に尾行までするやつらは言うことが違うな」


「尾行じゃねえ! 外歩いてたらたまたま見掛けて、暇だったから何処行くのかと思ってちょっと後つけてみただけだ!」


「世間ではそれを尾行って言うんだよ」


「全くだ。ちなみに俺はそんな同僚が暴走しないように見張っていた訳だが」


「嘘つけ! てめぇだってノリノリだったじゃねぇか! 遠見筒まで持ち出して『近づきすぎるとバレるからこれで見守ろう』とか言い出した時には、こいつ隊長に突き出すべきなんじゃないかと俺本気で悩んだんだからな!?」


「肉串で買収された時点でお前も同罪だっての! てかお前も見てたじゃん! 遠見筒覗いて気持ち悪い顔してただろーが! あれ完全に変質者だったからな!?」


「ききき気持ち悪くねーわ! 変質者じゃねーわ! それ言うならお前だって――」


「いやお前らその辺にしとけ。お前ら二人とも、十分に気持ち悪いのは分かったから」


「「気持ち悪くねーわ!」」


「うん、そーか。まあ俺はクッキーにミルクが入ってんじゃないかって報告してくるからこれで失礼するわ。責任のなすりつけ合いも程々にな?」


「いやいや、あれは最初に後を追おうとしたこいつが完全に悪いだろ」


「いやいやいや、俺が帰ろうって言っても聞く耳持たなかったお前が――」


「――その話、詳しく聞かせてもらおうか?」


「「げっ、隊長……」」

暇潰しでお菓子作りをしていたソフィアさん。

ビスケットが主流の街にクッキーを布教するついでに、お世話になった騎士達の好感度稼ぎもしていたみたいです。親の金で。

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