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念話のポテンシャルを見よ!


 旅先での最後の夜。


 それが意味するところはつまり、お兄様と合法的に念話でイチャつけるのは、今日が最後になるということだ。


 今夜中にお兄様から「家に帰ってからも、ソフィアとこうして話したいんだ。……いいかな?」的な文言をゲットする為に、ソフィアちゃんは本気を出すよ!


 ……と、ついさっきまでは、そんな風に思ってたんだけどね。


「(あまり父上を困らせてはダメだよ?)」


「(はーい。分かってますよ〜)」


 なんで私はお兄様に怒られてるのん?


 さてはお父様がチクったな。なんと大人気ない!! と脊椎反射で思っちゃったけれど、冷静に考えればお父様にそんな高速通信手段があるわけなかった。まさか緊急連絡の(たぐい)で告げ口するわけもあるまい。


 まあ普通に考えたら定型句だよね。


 子供と親が一緒に出かけているとなれば、家に残ってる側が「気を付けてね」くらいの言葉は送ることもあるだろう。その類型みたいなもんだ。


 偶々(たまたま)お父様のお金で豪遊したタイミングだったから敏感に反応しちゃったけど、ここで下手な反応を返して本当にお父様を困らせたと思われるのは、ただの愚か者のすることである。


 ……でもあの、ちょっとね?

 私は愚か者じゃないつもりではあったんだけど、似たようなものである可能性は捨てきれないというか。たった今、否定しきれなくなったといいますか。


「お兄様の言葉で、敏感に反応……お兄様の言葉で敏感に反応!? あぁん、それいい! なんだかゾクゾクしちゃう!!」なんて発想がぱっと浮かぶのは、愚かではなくとも、それ以上にヤバい感じがするよね。主に頭が。あなた頭大丈夫ですか的な。


 たぶん大丈夫じゃないです。


 それも、お兄様への恋心を自覚した頃からずっと、大丈夫じゃないです。


 でもいいんだ。別に困ってないから。

 幸いお兄様とは相思相愛だし、おバカが天元突破したようなどピンク色のエロエロ思考は妄想の世界であれこれ想像することで満足しているから、現実(リアル)にはなーんにも影響もないし。


 ただあえて一つだけ問題点を挙げるとすれば……妄想でこれ以上ない程に美化したはずの夢製エロティカルお兄様が、何故か現実のお兄様を越えられない……って事だけかな。


 私がどれほど理想のお兄様を追求して耽美だったり艶っぽかったりするお兄様を想像しても、現実のお兄様はそれを容易(たやす)く凌駕する至極の幸福を与えてくるのです。


 そう、容易く。さらっと簡単に最高値を更新してくるの!!


 微笑みひとつ、仕草ひとつとかで直前まで「お兄様がこんな事してくれたらいいなあ」なんて確かに思ってたはずの理想を見事に打ち砕き、悶えを通り越してハートにクリティカルなどっきゅんこをぶちかましてくるのだ!! お兄様と話しているだけで、私は毎日が幸福の絶頂なんだよ!!!


 いつでも毎日エブリデイさいこう!!


 いつも違っていつもいい! それが至高のお兄様スマイル!! ひゃっほう!!


 相も変わらず、お兄様の事を考えるだけでドーパミンがダダ漏れな頭を放置しつつ、耳に心地良いお兄様の声で更なるお花畑の拡張に勤しむ私。


 大事なのは会話の内容じゃない。お兄様と会話しているという事実なんだ。


 だから私は〜、この夢のような世界でずっとおしゃべりだけを続けて……ってあ、そうだ!


「(あの、お兄様。いま私が目の前にいることを想像して、笑ってみてくださいませんか?)」


「(うん? どういうこと?)」


 思いついてしまった。

 とんでもないことを、思いついてしまった!!


 携帯電話を持つ恋人同士に許されたバカップル奥義。電話越しでのキスを、念話でも真似してなにか出来ないかと考えていた私に天啓が舞い降りた。


 念話って実体のある物を使わないから触覚に頼るのは向かないけど、その分音声がクリアなんだよね。


 相手の声に集中するから、目を閉じれば、相手をより近くに感じられるっていうか。


 なんならお兄様が今にも私に触れようとして手を伸ばしてる姿を想像するのも余裕というか楽勝というか。いっそこれ、目を開けたら本当にお兄様いるんじゃない? って思っちゃうくらいお兄様の存在を身近に錯覚できるというか。


 つまり、お互いに相手が目の前にいることを想像しながら会話をしたら、それはもう会って話しているのと同じことではなかろーかと。


 私はそう思う訳でして。


「(ふふ、お兄様とお話できて嬉しいです。私、今笑っていますよ。想像出来ていますか?)」


「(ああ。僕もソフィアの笑顔を見て、笑っているよ。……なるほど。これは距離が近く感じられていいね)」


 ですよねですよね! きゃーっ、優しく笑うお兄様ステキですぅー!!



 目を閉じた世界。お兄様の声だけがする世界。


 そこに、お兄様の声に合わせて動く、お兄様の姿が鮮明に映る。


 あーー、もーーっ、ゾクゾクするう! お兄様の微笑み最高かよ!!


 はっ! もしやこのゾクゾク、ダイエットにも効果あったりしないかな!?


 お兄様とお話してるだけで美容にも良いなんて素敵すぎるっ! こんなのやめどきが分からないよっ!


 やーん、お兄様さいっこうー!!


念話は音声伝達ではなく、意思伝達の魔法。

なので興奮が最高潮に達したソフィアの幸福感とか「んっふふふふふふふ!」なんてだらしない感情も、たまーに漏れ聞こえていたりして……。

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