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対処方法って性格出るよね


 エンデッタさんが去り、部屋の中にお父様と二人きりになった私は、とりあえず部屋での会話が外へと漏れないよう遮音の魔法を施した。


 これでどんな話でもどんとこいだ。


「さて、お父様。改めて確認しておきたいのですが、お父様がこの旅の間で私に話しておきたかった事というのは、先日話された『私こそが王国に魔物が増えた原因ではないか』と主張する人達の存在……ということでよろしいのでしょうか?」


「ああ、そうだな。その認識で間違っていない」


 私の言葉に、お父様は頷いた。


 ふむ。そうか。

 となれば間違っていたのは、その話を私に明かそうとした()()の方か。


「では次に、お母様やお父様がその情報を私に伝えようとした理由なのですが。『災厄の芽と預言された私自身に魔物を全て滅ぼさせる事で、問題の解決を図ろうとした』と私は理解したのですが……これは誤りですか?」


 質問しつつお父様の顔をうかがい見れば、お父様は目をまんまると大きく見開いていて「そんな事はまるで考えていなかった」とばかりの表情をしていた。


 うん、間違ってたのね。たった今、よーく分かった。


「……なんでそんな考えになるんだ?」


 信じられない、とばかりに唖然としてるようだけど、そんな反応されるほど変なこと言ったかな私。


 問題解決の基本は原因の排除。


 文句を言ってる人たちを全員亡き者にする、なんて手段を選ぶ訳が無い以上、残された手段は文句が出ないようにと尽くすことのみ。

 つまりは不満の原因である魔物を排除するのが一番の解決策だと思うのだけど。


「私が原因であるとも、私が原因でないとも、証明なんてどうやっても出来ないでしょう。けれどお母様が気にするということはそんな妄言でも放置するのは得策ではないと思われたので、それを踏まえた解決策を考えたまでの事です。私以外の人が魔物を根絶した場合には『あの娘が起こした面倒事の処理をさせられて……』等と預言の事が人々の口にあがる機会もあるかもしれませんが、私が解決したならばそのような陰口も出ないでしょうから」


「ソフィアの考えが半分も理解できん……」


 何故かお父様が絶望した。


 なんでなのん。

 と思ったのだが、よくよく話を聞いてやっと分かった。


 これはあれだ。私に文句を付けてるという人たちのイメージにとてつもない誤解があったんだ。


 私のイメージしてたのってこう、権力と自己保身に凝り固まった老害たちが口角唾を飛ばしながら「あの小娘は前から怪しいと思っていたのだ!」「然り然り! 預言者殿の言う通り早めに処分しておくべきだったのだ!」的な聞く耳持たない暴言を繰り返すザ・悪役の見本みたいなお爺ちゃんズなイメージだったんだけど、お父様が言うにはそんな荒々しい雰囲気では全くなく、「ただ一人が元凶などと(にわか)には信じられんが、あの方の預言は外れた事がないからな……」「その娘にはしばらく人の少ない地で過ごしてもらうのはどうか? 幼い子供に負担を強いるのは心が痛むが、魔物の発生する場所を操れるのであれば騎士の負担も相当に減ると……」などと皆が心を痛めながらも解決策を模索する、とても健全な話し合いが為されているのだそうだ。


 つまり私は災厄の芽であると認識されながらも、同時に悲劇の被害者であるとも認識されているらしい。

 だから「そいつが原因だから殺せー!」なんて事は誰も考えてなんかいないんだってさ。


 ……より正確には、私の家族たちが初めてその解決策の可能性に思い至り、そんな手段が論じられる前になんとか魔物激増問題を解決しようと奔走してる最中らしい。


 うーん。どー考えてもその可能性に気付いちゃったの、私の悪意の影響っぽいんだけど……。なんか余計な心配かけてごめんって感じ。


 守られてる側の私がこんなこと思うのも変かもだけど、こんな性格悪い小娘一人の命なんかよりも、普通は大勢の国民の命を優先するもんなんじゃないですかねー。


 いやもちろん殺されたい訳じゃ無いし? 今更私が死んだ所でもう何の意味もないってのは重々承知してるんだけどね? 一般論として、普通は救える命が多い方を選ぶよねって。あくまで常識的に考えてね。



 …………だから、まあ。


 お父様やお母様が必死になって私を守ろうとしてくれるのは、その…………嬉しい。


 うん。


 嬉しいな。


「心配してくれて、ありがとうございます」


 我ながら珍しく素直に頭を下げた。


「自分の子を心配するのは当然だ」


 お父様は力強く断言し、部屋には一時、穏やかな時間が流れる。


 ……思えば、お父様とこういう話をする機会はなかったかもしれない。


 先日話した時はまだ私の体調が思わしくはなくて――とまで考えたところで、私は忘れかけていたとある一件を思い出した。


 先程まで温かかった心が一瞬で冷えた。


「そういえば、お父様。この間屋敷の食堂で行われた、私を反省させる為の罠の件なのですが……」


 ビックゥ! とお父様の肩が跳ねるのを見て、私は。


「詳しいお話、聞かせて下さいますよね?」


 飛びっきりの笑顔で、お父様に微笑みかけた。


仮想敵すら少なすぎて、遂にソフィアの攻撃性が架空の敵を作り始めた。

もっと平穏なストレス発散方法を探しましょうね。

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