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寝坊しました


 ひとつだけ言い訳をさせて欲しい。


 昨日は疲れてたんだ。



「おはようございます。今日は随分とゆっくりしたお目覚めでしたね」


 目覚めた時にはあらびっくり。もう少ししたらお昼になろうかという時間帯でした。


 くすくすと笑うエンデッタさんに返す言葉もない。


 昨日はお兄様とおしゃべりして良い気分で就寝〜♪ という計画が崩れ去って「魔物を滅ぼす魔法を作ろう(キリッ)」なんて決意したまではいいんだけど、実はそこからの記憶が無いんだよね。


 いや正確にはその後の「その為に必要な条件は……」って熟考に入るために目を閉じてからの記憶が無いんだけど、結果的には似たようなものだ。


 妄想の世界でなら様々な想定をシミュレートできちゃう優秀な私の頭脳であっても、流石に睡眠中まで頭脳明晰とはいかんのだよね。

 睡魔さんには抗えないっていうか、そもそも抗う気もないしね。


 つまりはまあ、なんだい。

 深夜テンションのフィーバータイムは儚く終わった。


 まーねー。昨日はほら、街中を一周する勢いで歩き回って疲れてたし……。


 その上でお兄様とのお話が終わった時点でだいぶ夜も深まってたとくれば、肉体と精神のダブル疲労で疲れて寝ちゃうのは当然ではある。


 あるんだけどー、でもせめてもうちょっとだけ深夜特有のぶっとび思考回路のままで突っ走ってから眠って欲しかったかなぁー! って気も、ねえ? 我ながら思っちゃう訳でして、はい。


 素面(しらふ)の状態で「この世の魔物を滅ぼし尽くしてやろうふはははは!!」とかだいぶ頭がアレな人だからね。ネムちゃんが大喜びしちゃう系だよね。端的に言えば黒歴史ってやつ。


 昨日の私はお兄様が傷付けられてる現実とお兄様の意外な程に引き締まった肉体を不意打ちで見ちゃったダブルアタックでちょっとばかし混乱状態に陥っていたとはいえ、今にして思えばやっぱり思考が短絡的すぎたかなと。そんな反省をしてしまう程度には今は冷静さを取り戻しているわけでして。


 魔物の殲滅だなんてそんなそんな。


 私は本来、そんなバイオレンスなお嬢様ではないのですよ!


 それにもし私がやるとしたら、昨日ちろっと考えてたみたいな広域魔法でまとめてグチャっ☆ な方法じゃなくて、もっとスマートで己の手を汚さない……うーんと、例えばそうだなー、魔物の餌的なものに毒を混ぜこんで自動駆除機構を作るとかー……、あとは魔物が発生した瞬間に勝手に死ぬような仕組みを、こう……魔石で発生場所を誘導して、杭を仕込んだ落とし穴と魔法陣のコンボで生まれた瞬間死んでいる的な……いやこれも中々エグいか……うむむ。


 とにかく、魔物を減らすのは確定にしたって、やり方は色々考えられると思うのですよ。


 なんたって魔物はお兄様が傷付いた遠因。

 それはもちろん、対処できるなら対処はしたいですとも。


 でも私とフェルやエッテがあちこち飛び回って地道にぷちぷち潰し回るのは現実的じゃないし、何よりそんなのとてつもなく面倒くさそう……ごほん。

 聖女としての優美さに欠けるでしょう!!


 私の中の聖女のイメージってのはね、街の中心部とかにありがちなめちゃくちゃでっかくて安全そうな建物の中で跪いて「お願い神様。みんなのことを助けて……!」とかやってたら他の人がぜーんぶ解決してくれるよーなそんなイメージなの。自ら問題解決の為に魔物を狩り回るようなバーサーカーじゃないの。戦闘要員じゃないのよ。


 か弱くて守られることが当然な、笑顔でにこにこしてるだけでみんなに愛される、お手軽楽ちんな天職であるべきだってのが私の理想。


 そんな聖女に、私はなりたい。


 いや、なりたいじゃない。


 なってみせる。きっと理想の聖女になろう。それが私の聖女道!!


 魔物は死すべし!

 でも殺意マシマシの聖女様とかどー考えても引かれるから、もしやるのならこっそりとね♪



「ぷあっ」


 用意されていた水で顔を洗えば意識もだいぶスッキリとしてきた。


 渡されたタオルで水気を拭い、もそもそと着替えを開始する。


 ハローハロー。私はソフィア。らぶりーぷりちーな至高の妹。


 私は今何故か、エンデッタさんにお着替えの手伝いをされているの。ただのワンピースを着るだけなのに「はい、次は両腕を上にあげてくださいね」とか言われているの。不思議だね。


 エンデッタさんってば日を追う毎に私の子供扱いが酷くなってる気がするんだけど、これは一体なんなのだろうか。時間経過で私の実年齢を忘れていってたりとかするんだろうか。


 このままだと今晩添い寝とかされそうな勢いなんだけど、それは流石に私、断るよ?


 夜はお兄様との時間なので、邪魔されたら本気で怒っちゃうかもしれない。


 そうならない為に、あらかじめ釘を打っておくことにした。


「あの、エンデッタさん。私の年齢って覚えてます?」


「はい。御歳十三。休み明けには学院で二年生になる、大変優秀な聖女様です」


 ……覚えててこの対応?


 魔物がどうこうよりも先に、私は身長を伸ばした方がいいのかもしれない。


 改めてそう思った朝だった。


魔物を倒せーじょ。魔物を殺せーじょ。


彼女の好戦性をまだ、世界は知らない。

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