表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
675/1407

ソフィアの選択


 無知というのは、選択の結果だ。


 知れないのではなく、知らない。知ろうとしない。


 無知な自分である為に、知る事を拒んだ。


 その結果こそが、今の私――。




 さて、と。


 私は考える。ぐーるぐると考える。

 お兄様の現状を知ってしまった今、私はどうするべきかを考える。


 自身に施していた記憶の封印を解き、過去にも今回と同じようにお兄様の隠された一面を知った事があると理解した上で、これからの事を考える。


 一番簡単なのはやはり、全て気付かなかった事として、また記憶を封じる事だろう。


 それだけで今まで通りの日常がこんにちわ。平穏な日々は明日からも続くだろう。

 お兄様だってわざわざ今日の事を指摘したりはしないはずだ。


 ……でもなぁ。


 やっぱり痛々しいのを見ちゃうとねぇ。


 これまでだって、お兄様の行動に不審な点はあった。


 いくら兄妹間の親愛パワーがあるとはいえ、何も伝えてないのにこの世界の情報伝達速度ではありえないくらい私の状況を把握してたりだとか、私が普段は何してるのか〜的なことを聞くとどうにもはぐらかされる事が多かったり、あとはフェルやエッテが私の指示もないのに屋敷から外に出てたりした事もそうだし、カイルとかにもなんかこそっと私の事頼んでたり、そういやお母様もお兄様の事でなんか言ってたような……。


 こうして改めて考えてみると、お兄様って割と怪しさ満点だね。

 その分優秀で有能で私にも優しいので、今まで全く何の問題もなかったんだけども!


 でもその「私に優しい」ってのが今回のでかなりの危うさを孕んだものだって気付かされた感じで、ソフィアちゃんは割と反省してます。


 いや本当よ? 嘘じゃないのよ?


 普通隠し事ってさ、隠す理由があるわけじゃん。何かしらの理由があって隠し事してるはずじゃん。


 妹に尊敬されてる兄が妹に何を隠すのかって考えたら、普通は影で努力してるのを知られたくないとかそんなとこじゃん?

 あとは「実は僕はソフィアの事を家族愛を超えた次元で愛してしまっているんだ。この醜い男としての感情をソフィアに悟られる訳にはいかない! はああ僕の妹世界一かわいい! ソフィアちゃんちゅきちゅきぃ!」みたいな一般的な男性に当然備わってるであろう性欲を隠したかったとかさ。そんなだと思うじゃん。


 実際お兄様ってそういう性を感じさせること全然ないし。その割に私はほら、性欲がありえないくらい旺盛ですし?


 お兄様が一人でいる時間、実は結構な頻度でその、ひとり遊びをしてらっしゃるんじゃないのかなーなんてのは、その、ねぇ。私の経験と同級生の話などから鑑みまして、まあ普通にありえるのではないかなーなどと愚考していたのですけれどね?


 いやマジで愚考でしたわ。


 神聖で清らなるお兄様を私の勝手な想像で穢してほんとごめんなさい。お兄様はやっぱり私の天使でしたわ。


 いやね、今にして思えばあの痛々しい映像が実はセルフマゾプレイが盛り上がりすぎちゃった結果だとかいう「実はお兄様、超上級者説」なんて可能性もほんの僅かにちょぴっとだけならあるかなー? なんて事も考えちゃったりもしてたんだけど、背中や首なんかにもあったあざの位置とかを考えると、やっぱりあれは自分でやったものでは無いかなと。真っ当に他人とのどつきあいでできたものなんだろうなと、うん。

 まあそれはそれで問題なんですけど。


 で、ここで最初の話に戻ってくるわけなのよね。


 お兄様の言っていた通り、あれが訓練によってできたものだとするなら、それは何のせいだと言えるのだろうかと。


 お兄様を痛めつけた相手にもまあ、思うところがないわけでもないけど。

 そもそもお兄様が何故剣の鍛錬をしているのかと言えば、それはこの世界で唯一の外敵である魔物と対峙する力を得ようとしているのは確定なわけで。


 つまり魔物が存在するのが悪いんですよね。


 つまり魔物をこの世に産んだ女神様(ヨル)が悪いんですよね。


 ……あとは、まあ。

 あまり認めたくは無いのだけど、私が原因で魔物が増えていると知りながら、私には関係の無いことだと無視し続けてきた私にも一因くらいはあるのかもしれないのよね。


 むしろそこらへんの責任を感じたくないから無視し続けてきたのに。


 ピンポイントで、わたしの大切なお兄様が怪我する遠因になってるとか、本当にタチの悪い冗談ですよ。


 でもお陰でやる気はそこそこ固まってきた。

 まだ指先でつつくとふるんと揺れるゼリーくらいだけど、多少はやる気の核みたいなものが出来てきた。


 魔物、そろそろ邪魔よね。いらないよね。


 お父様と騎士さん達のお仕事増やして、お兄様の怪我の原因作って、さ。


 絶滅させるとまでは言わないけど、私が居るせいで増えた分くらいは削減しとくべきだって気にはなってきた。


 災厄の魔物相手の時には、まだ魔法の実験って感覚が強かったけど……。


 魔物を滅ぼす魔法。


 そろそろ真面目に、考えてみるか。


魔物のとばっちり感がすごい。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ