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幸福の裏側には


 幸福は、麻薬だ。


 一度その蜜の味を知ってしまったら、もう逃れる事はできない。


 何度でもその感覚を得ようと繰り返し―――


「(――というわけで結局買ったもの自体はそれほど多くはないんですけど、でもその分少数精鋭と言いますか、決して物は悪くないんです! お兄様もきっと気に入ってくださると思うんです!)」


「(僕もそう思うよ。聞いてるだけで楽しみになってる。ソフィアがそれだけ褒めるのなら、きっと素敵なものなんだろうね)」


 ――繰り返し我が愛しのお兄様とのラブラブテレパシートークがしたくなっちゃってもーどーしよーもないのですわよ〜!! 今日もお耳が幸せすぎて蕩けちゃう〜〜!!

 声拾ってるの耳じゃないけどね! えへ!


 あのねあのね、私気付いたんだ。


 この夜のおしゃべり、実はお兄様もめっちゃ楽しみにしてくれてるんじゃないかって。


 だっていくら念話が脳内に直接届くからって、毎日の初返信(レス)に掛かる時間が一秒未満って早すぎじゃない? これはもはや私からの連絡が来るのを今や遅しと待ち構えてるんレベルじゃないかと思うんだよね。


 いや〜も〜好き。そんなお兄様も超絶好き。


「今日もソフィアからの連絡が来るかな……」って優しい笑顔で待ってるお兄様を想像しただけでご飯三杯はいけます。嘘です。胸いっぱいになっちゃってご飯なんか食べられませぇん!


 お互いの姿は見えなくとも、脳裏にはしっかりばっちりとお兄様の姿が思い浮かぶ。


 私たち兄妹はそれくらいの深い絆で繋がっているんだよー!! だからお兄様の気持ちだって手に取るように分かる!


 お兄様は今――私と話せて嬉しいと感じている!!


「(こうしてお兄様といつでもお話できるの、嬉しいです)」


「(僕もだよ)」


 ほらほらやっぱり〜〜! やっぱりね〜!


 はー、今日もゾクゾクが止まらんっ!

 もうこの興奮と身悶える動きだけでそれなりのダイエットになりそう。男女のわっしょいも激しい運動量からいい運動になるとか聞いた事あるし、恋をすると綺麗になるという俗説は案外理にかなったものなのかもしれない。


 つまり私は、今こーしてお兄様とおしゃべりしてるだけで綺麗になってる。


 お兄様によって、お兄様に相応しい、お兄様だけの為の身体へと、この愛らしいソフィアちゃんボディーは着々と作り替えられている真っ最中なのかもしれない。


 …………アカン。想像しただけで悶死しそう。


 お兄様自らの手によって、お兄様専用に調教(チューニング)されてるなんて、そんな、そんなの……っ、もう心臓が破裂しちゃいそうなんですけど!!?


 おおお落ち着けソフィア。私はソフィア。お兄様の自慢できる優秀な妹。


 お兄様の妹たる私は、決してお兄様との会話中に、ましてや同室に人がいるような状況で、この身を焼く淫靡な熱に浅ましく屈するような……そんなド変態では決して無いのだ!!! ちゃんと我慢のできる理性ある獣なのだ!! ……違う、獣じゃないのだ!!


 たとえ頭の中で愛しのお兄様の声が反響していようと、お兄様の息遣いが間近で聞こえる幻聴に苛まれていようと、ソフィアは、ソフィアは……ッ! あぁぁあああ!!! でもお兄様のお声が色っぽいよォォオオオ!!


 これ絶対誘ってるって! だってなんかもう色っぽい通り越して艶っぽいし! なんだったら粘ついた吐息が聞こえる程の……ってあれ、これもしかして幻聴じゃ……なくないですか??


 ちょびっとだけ理性を取り戻した私は、そっと意識を集中する。


 ……ふむ。違和感はある、かな?


 よく分からなかったので密かに念話のラインを太めにしてみた。


 そうすれば、聞こえてきたのはお兄様の熱い呼気だ。


「(……んっ、はぁ。はぁ。…………ふ、ぅ)」


 えっろ。お兄様の吐息えっろ。


 ――じゃなくてっ!


「(お兄様? もしかしてお体の調子が良くないのでは?)」


 なんだか無理しているような声だった。


 実際には声では無いので、つまりは無理を抑えてる、何かを我慢しているお兄様の内心が伝わってるわけで……。


「(ん? いや、そんなことはないよ。ただ今日も剣の訓練があったから、多少は疲れているのかもしれないね)」


 次いで聞こえてきた声は平常通り。でも、これは……。


 心の中で謝りながら、遠見の魔法でお兄様の現在の姿を覗き見て、絶句した。


 見慣れたお兄様の部屋で、上半身はだかになってるお兄様。


 そんな普段なら「ひゃっほう極上のタイミングぅ!」と飛び上がる状況でありながら、私の目を引いたのは、逞しい腹筋でも可愛らしいピンク色の乳首でもなく、身体のあちこちに浮かんだ赤黒いアザと痛々しい包帯の数々。傷だらけになっているお兄様の姿。


 浮かれぽんちになっていた頭は一瞬で冷えた。


「(……剣のお稽古、大変なんですか?)」


「(そうだね。でも、必要な事だから)」


 ――必要だから?

 それだけの理由で、こんな……。



 ――その後なにを話したかはよく覚えていない。


 ただ私が気付いたと悟られないよう会話した事と、理由を付けてエッテを送り出した事だけは覚えている。


 ……私は本当に、無知だね。


どんな状況でも目に入っちゃうものってありますよね。

おへそとか胸とか腹筋とか胸筋とか脇毛とか(以下略

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