街を巡るのたーのしーい!
石屋さん、めっっちゃ楽しかった!
なんか初めは歓迎されてないのかなーって雰囲気だったんだけど、石の強度とか密度とか手触りがどうの重さがどうのって話し込んでるうちになんかめちゃくちゃ盛り上がったの。んで石もらった。売り物にならない端材だっていう赤くて軽いのとしっとり重くて黒いやつ。
お礼に魔法で作った石あげたら、なんか飛び上がるくらい喜んでくれて、お礼のお礼にって手遊びで作ったっていうお店に入った時から気になってた動物を象った彫刻もプレゼントして貰っちゃった。それも三つも! 栗鼠が二種類とお馬さん!
なんでも栗鼠は餌を溜め込む習性があるから商売人には喜ばれるモチーフなんだってさ。
私は商売人じゃないけどかわいいものは大好きなのでとても嬉しい。
あんまりかわいいかわいい言ってたらエッテが嫉妬して「私の方がかわいいもん!」と言わんばかりに甘えてきたので、帰ったらフェルの前でも彫刻をひたすら愛でてみようと思う。
フェルにも思いっきり嫉妬させて、エッテと一緒にいーっぱい可愛がってあげるんだー。うふふん。
「ソフィア。もういいのか?」
「はい、お父様。お待たせしました」
まあひとつ残念な事といえば、石屋さんの中が余りに埃っぽくてお父様が耐えきれなかった事かな。
本当はもう少し石談義を続けて私専用の警備用戦乙女に使える材料の相談とかしたかったんだけど、お父様を放置する訳にもいかないからね。
それにまだ一件目。
お店はまだまだ沢山ある。どのお店もみんな、私の来訪を待ち侘びているのだ。
「次行きましょう!」
「ああ、そうしよう」
さあっ、私たちの冒険はまだ始まったばかりだ!
どーんどん行くよぉー!!
◇◇◇◇◇
――人はどうして、罪を繰り返すのだろうか。
反省をしたはずなのに。
後悔を覚えているのに。
何故私の手には、またこの罪の証が遺されているのだろうか。
もしかしたら、私は。この罪業から。
一生、逃れる事ができずに――
「どうしたソフィア。もう一本食べたいのか?」
「あまり食べると夕食が入らなくなってしまうのではありませんか? あ、食べ終わった串はこちらへ。私が捨てておきますので」
「エンデッタさん、ありがとうございます。あと、私は別におかわりが欲しいわけじゃありませんから」
差し伸べられたエンデッタさんの手にすっかり軽くなった串を渡し、お父様へと反論する。
私ね、この街に来てから思ったんだ。
屋台でお肉を焼くのって、一種のテロ行為なんじゃないかなって。
「店で食うのも美味いが、こういうのも悪くないな」
「お店によって味付けが違っていて、それがまたいいんですよね……。しかもちょうど食べ終わる頃に別のお店があって」
「まあ、いい香りがするというのは分かるが……あちこちの肉串を食べ歩くというのは普通しないんじゃないか?」
「そんな事はありません! 私たちの後ろを着いてきてた男性二人組の方も私と同じように食べてました!」
「よく見てるな……」
見てますとも! 人の食べてる物はどこかで売ってるものだからね! リサーチは欠かさないよっ!
いやー、それにしても、ねぇ。
間食ってなんでこんなに美味しいんだろうねぇ。
ご飯時以外の食事は罪の重みが現実の体重へと過不足なく変わっちゃうって知ってるのに、やめられない止められないなんだよねぇ。どうせ脂肪に変わるなら胸が膨らめばいいのに。
でもまあ、今日は結構歩いたし、摂取カロリー分くらいは消費できたはず。
お店も結構回ったからね! 運動量はそれなりだよね!
にしても、まさか私的ベスト良いお店でしたで賞が一番初めの石屋さんになるとは思わなんだ。
服屋で小物とか雑貨屋で置物とか色々見て回ったけど、一番出来が良くて好みにも合ってたのが石屋さんが趣味で作った彫刻ってのは正直どうかと思うの。
もっと街の観光名所増やそ? それでお土産用の売り物にも力入れよ? って感じ。そもそもお土産に適した商品が少なすぎた。
王都にも近いし、しょうがないと言えばしょうがないんだけどさー。
需要を考えれば住んでる人向けの商品ばかりになるのも当然なんだけどさー。
服とか魔道具とかお菓子とか、ぶっちゃけ目新しいものとか全然見なかったよね。ザ・平凡みたいな何の変哲もないパン屋さんの方がまだ新しい発見があったわ。
ゴリッゴリの堅パンとか、私の身長くらいありそうなデカ堅パンのあの硬さ。
爪で押してもへこみもしないって、これは本当に人が食べる物なんだろうかと最初はお店の人が私を揶揄ってるんじゃないかと信じられなかったね。
まあ今も半分くらいは信じてないんだけど、パン屋だからね。
売り物以外であんなのを置いてる理由なんてパン屋専用の強盗撃退グッズくらいしか思い付かない。この世界で強盗なんか見たことないけど。
「さて、そろそろ戻るか」
「そうですね」
まあ、色々あったけど、総評としては……。
「今日はありがとうございました、お父様!」
――とーっても楽しい一日でした!!
「予想以上に、疲れたな……」
ソフィアのはしゃぎっぷりを甘く見ていた父親はその日、とてもよく眠れたそうです。




