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騎士団のお仕事


 私はお父様のお仕事見学という名目でこの街に来ている。


 けど、ずっと事務作業を見てるだけってのも……ねえ?


 飽きる飽きないとかじゃなくて、私がいるとお父様も普段通りの仕事が出来ないんじゃないかって懸念が、とかね?


 お父様は街でも見てきたらどうだと勧めてはくれるんだけど、エンデッタさんと二人きりで街の探索をすると、私は間違いなくエンデッタさんを撒きたくなる気がするんだ。

 そうなると彼女に迷惑が掛かるが、それは私の望むところではない。


 という訳で、昨日から私達がお世話になっている建物の更に奥。騎士さん達の生活の場の一部でもある訓練場で、特別に訓練を見学させてもらう事になったのだった。


 街を見て回るのはまた後日、お父様と一緒の時に堪能しよう。


 お父様と一緒に見て回りたくて我慢してたとか言えば、きっとお土産用の軍資金もたんまりと……。むふふ。


「今日は可愛らしい見学者がいるが、よそ見して怪我なんかするんじゃないぞ! 分かってるな!?」


「「「「はいっ!!」」」」


 っと、そろそろ始まるみたいだ。私も気を引き締めないとね。


 お父様の要請を受け私の見学を快く引き受けてくれたのは、白の四十七番隊の隊長さん。ドミニクという名のナイスミドルなおじ様だった。


 なんでもこの人こそが、あの激うまポトフの店を紹介してくれた人物でもあるのだとか。


 その事実だけで私の好感度は初めからマックスだった。


「それでは、鍛錬はじめ!」


「「「「いちっ! にぃっ!」」」」


 今日は隊の中でもまだ若い人達を集めて訓練を施すらしい。


 ドミニクさんの号令で一斉に腕立て伏せを始める四人の騎士さんたちは、みんな真剣な顔で一心不乱に筋肉をいじめ抜いている。不満そうな顔をする人は一人もいない。


 今日は基礎的な訓練しかしないと聞いた時に「食後の運動にいいかも」なんて軽い気持ちで混ぜてもらおうとしなくて本当によかった。ここに私が混ざってたら魔法で補わないとついていけない。それくらい腕立てが早い。


 男の人ってなんだかんだ、やっぱり筋力あるよね。


「さて、見ているだけというのも退屈でしょう。なにか質問があれば答えますよ」


 腕立て伏せしてるロン毛さんの髪はなぜ三つ編みになっているのだろうか。あれは自分でやったのか、はたまた恋人とのイチャラブの結果なのか、なんてとてつもなくどーでもいいことを考えていたら、ドミニクさんが気を遣って話し掛けてくれた。


 最近人付き合いが狭い範囲で完結してたから、知り合う人全員がめちゃくちゃ善人なこの感じ、なんだかとっても懐かしい気分。


 あのお母様ですら初めの頃はただの美人ママさんだったからね。


 今じゃもう善人の面影もないけど。


「ありがとうございます。それでは……」


 まあお母様の事はさておき。質問、質問かあ。何聞こうかな。


「白の騎士団というのは主に街の警備をする方々なんですよね? ドミニクさんは普段どういったお仕事をされているのですか?」


 とりあえず当たり障りのなさそうなことを聞いてみた。


 騎士団の仕事については、学院で習ったので一応の事は知っている。


 が、知識として学ぶのと現場を知る人の話として聞くのではまた別の知見が得られることもあるだろう。実際、騎士と魔物の戦いがアレだったわけだし。


「そうですね。普段はやはり、森へ行って魔物を狩るのが主な職務となるでしょうか。午前、午後、夜の三つの班で順に森へ入って魔物を減らし、魔力が減ってきたら街へと帰還。後の時間は街の警備という流れですね」


 ほら、さっそく私の知識との違いが出てきた。


 私の知る限り、白の騎士団とは国の主戦力であり守りの要。

 本来であれば街周辺の警戒なんて青の騎士団の仕事のはずで、白の騎士が出ずっぱりなんて事はなかったはずだ。


 魔法の使える人達だけで構成された、強くて安心、白の騎士団。

 貴族の隊長に多数の平民で構成された、小さな危険を逃さず排除、青の騎士団。


 なんだか聞いてた話とはだいぶ違いがありそうだとドミニクさんと話を交わしていくうちに、私の知識に誤りがある理由にも見当がついてきた。


 その理由を一言で言えば…………知識が古い。これに尽きる。


「魔物の脅威は……実は、年々増えているんです。しかもその増え方が尋常じゃない。けれど国王様や団長達の迅速な対応により、魔物による被害はそんなに増えてはいないんです。これは本当に凄いことなんですよ? 大胆な騎士団の配置換え、役割変更に初めは私も戸惑いました。ですが! ……その指示のおかげで、この国は今も生き長らえているのだと実感しています。このまま団長達について行けば、必ずや国民と共にこの国難を乗り越えられるのだと、今ではそう信じられるのです」


 貴女もそのお一人でしょう、聖女ソフィア様? とドミニクさんが崇敬の眼差しを向けてくるのに曖昧な相槌を返しながら考える。この国は本当に大丈夫なのかと。


 国。魔物。騎士団。女神。


 ……私って何を知ってる? 何を知らない?


 お母様達が私に何を知らせたいのか、させたいのか。段々分からなくなってきたよ。


待望の大人扱いのコレジャナイ感。

ソフィアちゃん的には救国の英雄扱いはお気に召さないらしい。

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