お姉様の初恋を実らせよう
お姉様の婚約を取り消されないように頑張るよ!
そう思っていた時期もありました。
今ではその考えが正しかったのか、自信が持てないのであります。
二人は幼馴染み。
お姉様の方は恋愛対象っていうより気心の知れた友人としか思ってなさそう。
婚約者のロバートさんもお姉様との婚約はしたんだから好意はあるはずだけど、それが恋愛感情かは謎。
結婚ってこんなものなのかな。
貴族としての結婚観は学んだ。
見ず知らずの人と婚約する時だってあるかもしれないけれど、良き夫婦となれるよう努力するべきです、と。
お姉様たちは努力が足りない。
思うに、未だに幼馴染感覚なのではないだろうか。
お母様が指摘したお姉様の企み事というのも、長く家にいるための婚約者との口裏合わせだったみたいだし。
お母様に婚約解消を言い渡された時の落ち込みはなんだったのか。
ん? いや、そうだ。お姉様はあの時たしかに落ち込んでいた。
これはもしや、自分でも気づいていなかったけど実は……的な!? そんなパターンではないですか!?
なにそれ萌ゆる!
これが事実だとすれば、私のモチベーションは大きく変わってきますよ。
いや私だけじゃない。ミランダ様も絶対食いつく。
これは俄然面白くなってきたよ!
「ミランダ様、ちょっとお耳を」
コソコソと乙女の内緒話。
家でのお姉様のことならまだしも、学院でのことならミランダ様の方が詳しいでしょ。
答えは予想通り。
男友達も多くて告白もされてきたお姉様だけど、恋愛経験は無し! そしてやっぱり、初恋もまだ! 乙女すぎますお姉様!
ロバートさんに恋心持ってるの? どうなの? いやーん気になる!
「そういう事だったのね」
私の話を聞いてミランダ様にも思い当たることがあった様子。
なにかと思ったら例の王子様の話だった。
あーゆーアイドルちっくなのは熱量の差が激しいから、お姉様がロバートさんを慕っていたから興味が無かった……とはならないと思う。
でも本当にロバートさんを好きなんだったら、女の子からキャーキャー言われる王子様たちは全然違うタイプだろうし興味がないのも頷けるかな。
ヘタレで頼りない王子様とか、国が傾いちゃうしね。
「ねえねえ、二人で何を話しているの?」
ミランダ様と盛り上がりすぎたらしい。
我慢が出来なくなったお姉様がいそいそと寄ってきた。
ちなみにこのような、女三人で姦しい場面。
お兄様は空気になる。
それはもう、見事な空気に。
あっ入りづらいよねごめんと視線を向ければ、僕を気にせずに続けて下さいと言わんばかりのスマイル。
紳士的で自慢の兄です。えへん。
「アリシア。貴女の初恋、必ず成就させてあげますからね!」
「へ?」
ミランダ様が盛り上がってる。
私だって、もちろん同じ気持ちだ。
「お姉様、私たちにお任せ下さい!」
「う、うん」
ふふふ、今は自分の内に眠る恋心に気付かない、初心で可愛いお姉様。
その新芽、我らが見事、咲かせましょう!
オペレーション『お姉様の初恋のために』、スタートだぜぃ!
「アリシアが、ロバートを……それならあの時の行動も、いえそれどころか、あの時の行動もまさか照れ隠しで!?」
妄想は、伝染する――