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念話、とてもイイ


 お父様のお話は、怒声を聞き付け乱入したエンデッタさんにより強制的にお開きとなった。


 曰く、「無理をさせすぎ」「子供の体力を考えて」「夜はしっかり眠らせるべき」などとんでもなく子供扱いをされた結果によるものなのだが、体調を気遣って部屋に持ってきてくれた食事の匂いを嗅いだ途端に盛大なお腹の音を響かせてしまった私としては、子供扱いに文句も言えない。


 その後もお風呂代わりに湯で濡らした布で身体を拭かれたり、何故か始まった子守唄で大変心地よくなってしまったりしているんだから、傍から見た私は完全に子供だったろうなぁ、とも思う。


 ……子供ってよく子供扱いに反発するけど、私は本当に子供じゃないんだからね?



 という訳で、もはや完全に私の事を子供として扱ってくるエンデッタさんに大人しくベッドへと寝かしつけられてしまった私だったが、生憎と私は見た目通りの子供では無いので、今日中にやっておかなければならない用事というものがまだ残っているのである。心地好い子守唄に身を委ねて惰眠を貪るわけにはいかないのだ。


 スヤスヤとたぬき寝入りで子守唄をやり過ごしながら念話を繋いだ先は、もちろん――


「(お兄様、ソフィアです。いま大丈夫ですか?)」


「(ああ、もちろん。ソフィアの声が聞けて安心したよ)」


 ――昼に一方的な理由で念話の接続を切ってしまったお兄様だった。


 いやね、私からお願いして常時接続にはしたんだけど、ほら念話って心の中の声を届けるようなもんじゃん。届ける言葉は制御できてるとはいえ、万が一ってこともあるじゃない?


 ……私が吐き気でうおええってなってるのがお兄様に伝わる可能性を考えたら繋げたまんまとか我慢できなかったんですよう!! 念話って伝えようと思えば感情だって伝えられるし!!


「(思ったよりも元気そうで良かったよ)」


「(ご心配をお掛けしました。お兄様のお陰で気分がとても楽になりました)」


 馬車酔いでゲロゲロゲロッぴーになる前に簡単な報告だけして念話を切らせてもらったんだけど、夜になってからお兄様に預けてたエッテが私のところに来たんだよね。お陰で酔いはすっかり治った。


 エッテの有能さを再確認すると共に、その有能なエッテがお兄様の元にいないという不安も同時に抱えることにはなるんだけども、そこは流石に有能なエッテちゃん様。お兄様のお疲れももれなくスッキリさせて来た上、私がそう心配することを見越して自分が移動するのと同時に私についてたフェルをお兄様の方にしっかり移動させてたんだってさ。


 ああっ、エッテってばなんて優秀な子なんでしょう!! もうもうっ、フェルに秘密でご褒美あげちゃう!


 と最高にハイになりながらカップケーキを献上すれば、ふてぶてしくも愛らしいエッテ様に「これじゃ少し……足りんのと違うか?」と言わんばかりに明らかに期待外れの呆れ顔をされてしまったので、それもそうかと特製の方のカップケーキを供出したら、エッテも「ひゃっほう!」とばかりに飛びついていた。しかも用済みとなった方のカップケーキを下げようとしたらそれはそれで後で食べるのだそうで、下げようとした手が猛抗議に遭ってしまった。


 エッテちゃんのそーゆーとこ、私好きだよ。


「(何も問題は無いんだよね? 何かあったらすぐに父上に言うんだよ?)」


「(はい、そうします。連絡が遅れてしまったのはごめんなさい、身体を休めたあと、お父様と少しお話をしていて――)」


 エッテとの楽しいやり取りを思い返しながらお兄様と雑談を交わす。


 目を閉じて規則的な寝息を立てる私を眠ったと判断したのか、エンデッタさんが静かに部屋を出ていくのを魔力反応で確認しながら、思わずクスリと笑みを零す。


 ……人に隠れながらお兄様とこっそりお喋りするの、想像以上にイイんですけど!


 なんてゆーの、背徳感? 秘密の関係みたいな?


 念話の事を知らないエンデッタさんにはどーやったってバレる訳はないんだけどそれはそれ。


 まるでお兄様と秘密を共有しているかのようなドキドキが、倦怠感の吹き飛んだ身体に新たなる春風を感じさせるよう!


 私は、今! お兄様と秘密のお喋りをしている!!


「(……なんだか楽しそうだね? もしかして、いいことでもあったのかな)」


「(ふふ、どうでしょう。お布団の中でお兄様の声を聞くのが新鮮だからかもしれません)」


 恋はいいぞぉー? なんてしたり顔で言っていた前世の母の顔が思い出される。


 確かにイイ。とてもイイ。

 あの人生を舐め腐った自由人の意見に同意するのは大変癪だが、寝室で一人、最愛の人が私の為だけに言葉をくれるというのは大変に良い。こんな事を繰り返したら世の恋人たちがバカップルばかりになるのも頷ける。この幸せは脳細胞を破壊する。


「(そういうお兄様も、なんだか楽しそうですよ?)」


「(そうかな? ……そうかもしれないね)」


 頭の中でお兄様の声が響く。


 私たちはそのまま、飽きるまでたわいの無い話を続けていた。


お父様の魂の叫び!→ソフィアの機嫌が小アップ。

お兄様と秘密の会話→ソフィアの機嫌が大アップ!


頑張れ負けるなお父様!

旅行の間中、父のターンはまだまだ続くよ!

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