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旅行の準備


 なんだかんだ言ってはいても、今生でも数少ない泊まり有りでの外出ともなれば気分はアガる。


 実質的にはお父様のお仕事に便乗する形で私が同行するだけというのはちょっと残念ポイントではあるが、目的地の街に着いた後は観光の時間もとってくれると言うし、何より口うるさいお母様が同行しないというのが実に素晴らしい。


 お母様がいないということはつまり、飲食店に入ってデザートを何個でも頼めるし、魔道具店で自分の好きなように商品を眺め回せるし、お父様を誘導すれば自分の好きな場所に行く事が出来るということなのだ!!!


 あ〜、なんだかとっても楽しみになってきた。早く旅行の日が来ないかな〜。


 ルンルン気分で当日の行動予定を立てていると、頼み事をしていたリンゼちゃんが戻ってきた。後ろには買って来てもらった材料を満載したカートもある。


「頼まれたものはこれで全部だと思うけれど、一応確認してもらえるかしら」


 ごちゃっとした物品をひとつひとつ丁寧に机の上に移し替えていくのを座ったままに眺める。


 んーと、花、灰、植物の種に、……え、リンゴこんなに……? ま、まあ、多い分にはいいか。あとはー……えー……。


「んー……うん、ありがと!」


 ちゃんと頼んだ分はあると確認を終え、今使わない分はアイテムボックスに収納。そしてアネット製、お部屋で簡単錬金キットを取り出した。


 ただのアルコールランプと台座である。


「あとはー、これとこれ、でー、ぐちゃっと」


 お湯を沸かし、種を潰しと魔法を有効活用してドンドンと作業を進めていく。


 旅行に必要な道具、石鹸(せっけん)作りだ。


 私のアイテムボックス内に在庫がなかったのは確かだけど、本当ならわざわざこんな手間を掛けて作る必要は無い。今となってはアネットに「お願いね♪」と頼むまでもなく、リンゼちゃんに買いに行ってもらえば済む話ではある。


 まあ、なんだい。私も多少、浮かれているというか……ね?


 旅行に必要な物は何かな〜と用意している時に石鹸が足りないと気付いて、久しぶりに自作してみようかと思い立っただけの話だ。


 暇人と笑いたければ笑うが良い。


 私は、紛うことなき暇人である!!


「ソフィア、ロランド様が来てるわよ」


「はーい♪」


 リンゼちゃんの言葉を聞くと同時、さささっと机の上を片付けて立ち込める匂いを魔法により一瞬で換気した。最後に私の服から臭気を取り除けば完璧である。


 暇人? そんな者は存在しない。

 今ここにいるのは、最愛のお兄様をいつでも最高の状態でお出迎えする理想の妹であるっ!!


「やあ、ソフィア。今少しいいかな?」


「もちろんです」


 淑やかな笑みを浮かべればお兄様も笑み返してくれる。この何気ないやり取りが本当に好き。うおおー!! ってなる。もちろん内心だけで。


 部屋に招き入れたお兄様の用件も、旅行に関する事だった。


「行く先で何かあったらすぐに念話で連絡するんだよ。ソフィアが辛い時は僕の用事なんて考えず、いつでも連絡してくれていいんだからね」


 はわあ〜お兄様ぁ〜。お兄様に心配されるなんて、ソフィアとっても幸せですぅ〜、ってなるけど……。……なんか、辛い事があるの前提なような……気の所為だよね?


 不穏な気配を感じつつも、折角だからとお兄様のご尊顔を眺め回していたら、不意にお兄様の顔に陰りが見えた。


「本当は、僕も行けたら良かったんだけど。せめてもう少し後だったら、念話でこちらから連絡する事も……」


「大丈夫です! お兄様のそのお気持ちだけでも嬉しいですし、私からも連絡します。毎日します! だから、そんなに心配しなくても平気ですよ?」


 な、なんかお兄様、最近暗くなることが増えてないかい? お兄様こそ大丈夫なの!? と心配になりながら、必死に安心させる言葉を探す。


 実はお兄様にこそ癒しが必要なんじゃないのかなこれ。お兄様ってば学院を卒業してからはいつも忙しそうにしてるし、何か人には言えない悩みとかあるんじゃないだろーか。そう考えるだけでいてもたってもいられなくなる。


 ……原因。

 そう、お兄様が不安定になる、なにか原因があるはずだ。


 ここ最近のお兄様の身の回りで何か変わった事といえば……と思考を進めかけたが、即座に停止。それ以降の考え付いた事を忘却の海にポイッと捨てた。


 お母様から私の係りを引き継いだ事は、お兄様の不調と何も関係があるはずないね!!!


 原因究明なんてナンセンス。

 過去を振り返るより未来へ生きるべきだと考えを改め、お兄様が元気になるような話題を探す方向へとシフトした。


「そうだ! お兄様、念話は繋がってさえいれば声が届きます。私の方から常に繋げたままにしておけば、旅行の間中いつでも会話ができますよ!」


「でもそれだと、ソフィアの負担になるんじゃないのかい? 僕はソフィアに無理をさせたい訳じゃないんだ」


「いえいえ、無理だなんてそんな! むしろ――」



 お兄様と旅行の相談。


 いつかこんなやり取りが、お兄様との旅行でもできるといいなと、そんなことを考えていた。


日用品からオーダーメイド〜。驚き、感動、全てが揃う〜。

凄いぞ凄いぞアネット商会〜♪

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