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暗躍する女神


 私はお母様を怖い存在でなくしたい。


 アイラさんは私にお母様を怖がって欲しくない。


 両者の利害が一致した結果、アイラさんはお母様側の情報を一部リークしてくれる事になりました。


 やはりこーゆー時には普段の行いがものを言うのだよね、うんうん。

 日頃から良い子なソフィアちゃんの所には幸運が舞い込んで来るのが当然と言う訳だよ。うふふん。


 と、そんな得意気な気分だった事もありました。


 え? 今? 今はもう逆よ。真逆。

 おもーい溜め息でも吐いて幸運さんを一時避難させたい気分ですよ。


 あのね、私の珠玉の美尻を赤く染めたあの惨劇がね、実はヨルのせいだったっぽいんだよね。最近見ないと思ってたヨルが実はね、それなりの頻度で来てはお母様の相談に乗ってたんだって。


 なにしてくれてんだあの駄女神。


 いやもう、ホント……なにしてんの? なにしてくれちゃってるの? お母様が体罰とかおかしいと思ったんだ。というかリンゼちゃんが私を裏切るのもおかしいと思ってたんだ!!


 諸悪の根源はヨルだった。


 あのおっぱいおばけがお母様に体罰の存在を授け、私へのお説教が生温いんじゃないかと余計な入れ知恵をしていた。


 本当に勘弁して? 私に一体なんの恨みがあるというの?


 そして今更元凶が判明したところで、一度進んだ時計の針はもう元には戻らないというのが何より残酷な現実だった。


 具体的には私が暴力を振るわれたという事実がだね。

「お母様にも叩かれた事ないのにっ!」というネタが出来なくなったのはまあいいとしても、お母様を見るとおしりがちょっと疼いちゃうのがね。もう刷り込みが終わっちゃった感じというか、身体に刻み込まれた罪業の証みたいでなんかちょっとね。


 ……おしりの事考えてたらなんだかそわそわしてきた。


 アイラさんに気付かれないようさり気なく手を伸ばし、スっとおしりを撫でてみる。


 一時は触れただけで泣きたくなる痛みに苛まれたおしりも今やすっかり元通り。

 傷一つない、大変触り心地の良いおしりでした。


「ソフィアちゃんってアイリスの仕事は知ってるのよね?」


「一応聞いてはいますけど。機密も含むとかで、あまり詳しいことは……」


 ふおぅ、隠れておしり触ってる時に急に話しかけられたからびっくりした。どうやらアイラさんによるお母様擁護タイムは次のフェイズに移行したようだ。


 なんでもアイラさんから見たお母様はそりゃもう苦労をしているように見えるみたいでね。娘である私にはその苦労を少しでもわかってあげて欲しい……ってことで色々とお母様の話をしてくれてはいたんだけど、アイラさんってばお母様の隠したがってる内心に関わることだからって肝心の部分をめちゃくちゃぼかして話すんだよね。お陰で話が全然頭に入らなくって。


 話してる内に本人もこれでは伝わらないと気付いたんだろう、アイラさんは攻め方を変えることにしたみたいだった。


「私も詳しく知っている訳ではないのだけど、アイリスの仕事って今は半分くらいがソフィアちゃんに関する事らしいのよ。その事についてはどう思う?」


「どうと言われましても……。……迷惑を掛けて申し訳ないなあ、とか……?」


 その感情があるのは事実だ。まるきり嘘という訳でもない。

 でも私は、お母様が私の面倒を見ることで利益も得ていることを知っている。


 私の魔法を当てにしたお仕事の手伝いとか、私の発想とか着想とか、あとマリーとエリーの事務手伝いとか? フェルとエッテを可愛がれるのだって私のお陰と言えるだろうね。


 私の特異な魔法のせいで面倒を掛けているのは事実だけれど、決してお母様だけに負担を押し付けている訳では無い。……と、思う。多分。


 何より最近でもっともお母様の負担になってそうなのって女神関連だし。


 しかもほら、アイラさんによればヨルが近頃よくお母様に会いに来てたんでしょ?

 お母様は女神って存在に異常に弱いんだから、そんなホイホイ会ってたら精神がへばっても不思議じゃない。緊張ってのは心身ともに疲弊するんだから、ちゃんと相手のことを考えてだね……。


 なんて考えてたら気が付いた。

 私がお母様から酷いことされるの、大体ヨルのせいなんじゃないかって。


 ヨルがお母様に会う→お母様が精神的に疲れちゃう→ちょっとのことでキレやすくなり私が被害に。


 ありそうじゃない? どう? でもお母様ってそんなにヤワじゃないかな?


「私はね、アイリスは本当にソフィアちゃんのことが大切なんだなって思ったわ」


 アイラさんがなんか「私、超いいこと言ってる!」みたいな顔してるけど今はそれどころじゃない。私の被害を減らす方法が分かったかもしれないんだ。


 これはあとでリンゼちゃんと話し合いが必要だな。



 ――私はそれから、リンゼちゃんと話す時にはどのような順番で話せば望む回答が得られるのかをずっと頭の中で考え続けた。


 その間アイラさんはずっと独り言状態。


 アイラさんはねー、私と話す前にお母様と相談するべきだったと思うんだ。


 アイラさんの感想聞いてるだけじゃお母様の苦労は分からないよね。


失礼オブ失礼。失礼オブざソフィアちゃん。

とはいえ「アイリスも大変だったと思うのよ」「きっとアイリスも苦労して……」を繰り返されても「でもそれあなたの勝手な想像ですよね」ってなるのは前世的には普通の感性とも言える。


故に彼女は聞き流す。今日も自分の世界に引きこもるのだ。

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