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念話の練習


 この世界には電話がない。


 だからね、お兄様が念話できるようになるって事はね、お兄様が遂に携帯を手に入れたよ! ってのと同然の出来事なんだよね。


 しかもこの電話、通話料が無料。

 そのうえ声を出す必要が無いから深夜に長電話してたって誰に怒られる心配もない。


 正に彼氏彼女の様な特別親しい間柄の人達にうってつけの、すんばらしい魔法なのですよ!!



 ――だからソフィアちゃん、ちょっと頑張っちゃいました。てへり。


 新しい魔法を使うことに対するお兄様のハードルを改めて催眠で下げて、念話をする感覚を身につけてもらうために私の方からの念話と読心でお互いに念話を使っている状態を疑似的に作ってみたりとか色々試した結果。


 お兄様は! 見事!!


 念話の魔法を使えるようになりましたー! わーぱちぱち〜!!


 とはいえお兄様の念話はまだ相手を探すのが苦手っぽくて、私から受け取りに行かない限りは触れ合えるくらいの距離でないと上手に思考の受信はできないんだけど、それでも成功は成功だ。

 これから何度も使っていれば自然と有効な距離も実用的な範囲まで伸びていくことだろう。


 その為にも、私とたーっくさん練習しないといけないねっ! お兄様からの念話、うぇるかむです!!


「やりましたねっ、お兄様!」


「ああ、ありがとうソフィア」


 でねでね、聞いて聞いて。


 出力よわよわとはいえ念話が使えるようになったお兄様、さっきから嬉しそ〜に口元がにまっとしててちょーかわいいの!! 隠そうとしてるのに隠しきれてないのがバレバレなの! 萌える〜!!


 お兄様がこんなに喜んでくれるんだったら、私は他の魔法を教えるのだって全力を尽くす所存だよ!


 そう思って「次はどの魔法を練習しますか?」って聞いたんだけど、お兄様は「今はこの魔法を使いこなせるように頑張ってみるよ」ってなんだかとってもやる気に満ちた顔をしててですね! その一途なところがまたキューンときちゃうわけですよ。乙女ハートにずっきゅんとクリティカルヒットしちゃうわけですよ。


 拝啓、お母様。


 お兄様がかわいすぎてつらいです。敬具。


 お兄様の喜ぶ姿とかいうめちゃくちゃレアな姿を見られるこんな機会を提供してくれたお母様にはもう感謝しかない。今までのお説教なんて笑って許すよ。

 でもおしりペンペンはまだちょっと根に持ってるけど。やっぱり家庭内暴力はよくないよね。


「ソフィア、念話が届く距離を伸ばすのに何かコツとかは無いかな」


「コツですか」


 ああ、真面目なお兄様もステキ。


 そんな感情をおくびにも出さず、私はお兄様の真摯な願いに応えるため思考を巡らす。


 コツ。コツか。

 思い込みが大切なのは当然なんだけど、お兄様の段階だと要は相手の思考に自分の思考を割り込ませるって過程が上手くイメージ出来てないんだろうな。


 となれば、私がすべきはイメージの補強。


 イメージするのにはやっぱり目で見て理解するのが一番だよね。


「それではこういうのはどうでしょうか」


 私はお兄様から少し距離を取って、魔力視で見ていてくれるようにとお願いする。


 お兄様の準備が出来たのを確認したら、体内の魔力をこう、ぶわっと……。


「念話に必要な魔力は多くはありません。本来ならここまで濃い魔力を使う必要はありませんが、魔力の流れが見えれば、お兄様にも『相手に言葉を届ける』ということが視覚的に理解できるのではないかと……魔力は、視えていますよね?」


 お兄様の視線が安定していないのに気付き、念の為に確認してみる。


「……ごめん、ソフィア。ソフィアの周りがなんだかぼやけて見えて……」


「ぁ……、っ、これならどうですか?」


 私の魔力が視認性悪いの忘れてた。


 すぐさま回収して粗の多い一般的な魔力に変換してくけど……こ、濃いよぉ。多いよぉ。大量の魔力変換めっちゃつらい。必要な事とはいえ増やしすぎた。


 しかし苦労した甲斐はあったようで、魔力の変換作業を初めてすぐにお兄様から「見えるようになった」との言葉が聞こえた。


 よ、良かった……扱いづらい魔力をこれ以上の濃度にするのは辛かったから助かる。よし、後はこれを……。


「念話を、意思を、この魔力にのせて、相手に届けるんです。こうやって、伸ばして――」


「わっ!?」


 伸ばした魔力がお兄様に触れた瞬間、強い反発が起こる。めっちゃ拒絶されてしまった。


 ……いや、いや。これは魔力の濃度のせいだ。

 決してお兄様が「うえっソフィアの魔力だ! バリアバリア!」って防いだ訳では無い。……分かってても胸にくるけど。


「とりあえずこんな感じですが、どうでしょう?」


 気を取り直してお兄様に笑顔を向ける。


 反発の起きた腕を擦ってるのが私の魔力に触れられて気持ち悪かった反応のようにも見えちゃうけど、大丈夫。ソフィアは強い子だから……。


「うん。大分わかった気がするよ。ありがとう、ソフィア」


 その言葉だけで救われる。


 お兄様の感謝を受け、私はやっぱりお兄様のお役に立つ事が何にも優る幸福なのだと再確認するのだった。


魔力の反発は静電気のようなもの。

でもソフィアは魔力の濃度を過剰に上げていたので、その反発もより大きくなった訳なんですね。

ロランドでなければ痛い痛いと騒いでいるレベルの痛みでしょう。お兄様やるのも大変だあ。

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