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褒め褒め過剰摂取


 私の魔法、すごいでしょ!



 お母様からの委任を受けて私の面倒を見ることになったお兄様に求められ、私は現在使える魔法の中でまだお兄様が見たことのなさそうなものを色々と披露してみた。


 そしたらね……もうね、すごいの。


 お兄様ったらものすんごく褒めてくれるの。褒めるのじょーずなの。聞いてて顔が蕩けちゃうくらいのベタ褒めなの。うへ、うぇへへへ……。


 はっ! いけない。危うく乙女にあるまじき顔を晒してしまう所だった。


 そんなに褒められたら私、調子に乗っちゃう!!


 なので適度に褒めてください。

 ……と言うことはいつでもできるので、今日くらいはいいかなーと思って、お兄様の褒め殺しを堪能してみることにした。


「ソフィアは才能だけじゃなく努力も素晴らしいからね」


「その発想は僕にはとてもできないな。ソフィアは本当にすごいよ」


「みんなの為を思うソフィアだからこそ、こんな魔法を思いつくんだろうね」


 おお……おおぉ……おおぉぉおおお!!!


 私っ!! お兄様に褒め殺されちゃうぅ!!!


 にっこりにこにこ。褒められて喜ぶ愛らしい少女の顔が今にもぐへへうぇへへとだらしなく緩みそうになるのを必死に堪える。


 すごいこれ。胸が幸せでいっぱいになる。口元のもにょもにょがとまんないよぉ〜。やぁん♪


 注がれ続ける幸福を甘受し天にも登る心地になっていると、今までの甘い砂糖菓子で出来たような優しい声音とは違い、少し悲しげに響くお兄様の呟きがぽつりと聞こえた。


「……僕にもソフィアみたいな魔法が使えたらいいんだけど」


 えっ、それは……それは、すごい困る。


 何が困るかって、まず私が使えるような監視系の魔法をお兄様が使えるようになっちゃったら主に私の羞恥心が困る。


 四六時中、それこそトイレでもお風呂でもお兄様に見られている可能性を捨てきれない状態になんてなったら、それってもう、なんか、こう……、……もぞっとした時に発散する場所もなくなっちゃうでしょ! そしたらとっても困るでしょ!! ね!?


 それにそれに、もしもお兄様が私が使ってるような空飛んだり時を止めたり海の中に潜ったりするような夢溢れる魔法を使えるようになんてなっちゃったら、二人きりの観光デートがとても容易になりすぎて禁断の愛が急成長して私の心臓が破裂する。だってほら、想像だけでもう心拍数上がってきたもん。心臓がドキドキ言ってる。


 理由はまだある。むしろこれが一番大切かもしれない。


 それは、たとえ私が手取り足取り(ねっとりたっぷり)教えたとしても、お兄様が教えた魔法を使えるようになるとは限らないということだ。


 実際魔法大好きなお母様も当然色々と試してたけど、新たに使えるようになった魔法はゼロだ。お得意の無言の魔法にバリエーションが増えたくらいの成果しかない。


 どうやら私の「信じれば魔法は使えるんです!!」方式はお母様には合わなかったらしい。とはいえ他に説明のしようもなく、最初の頃なんて私、お母様に「真面目に教える気がないのならそう言いなさい」的な勘違いまでされていた。お母様にはとことん向いてない方法なんだ思う。


 でも、お兄様にならどうだろうか?

 お母様と同じ結果になれば期待させるだけで悲しませる結果になってしまうけれど、挑戦しなければ可能性もない。


 正直できない可能性の方が高そうに思うけど……でもお兄様のお願い事だもん! 叶えてあげたい!!


「……絶対にできるようになるとは確約できませんが。……試してみますか?」


 ほんと、期待しないでね? もしできたらラッキー! って程度の期待値でお願いね? と念押しするような視線を向けた私の目に飛び込んできたのは、まるで眩しいものを見るような、とても愛しさに溢れたお兄様の眼差しで。


 その表情に見蕩れている間に、お兄様は「ありがとう。よろしく頼むよ」なんて言いながら私の手を取って、手の甲をすりっと一撫で。完璧なイケメンムーブ、決められちゃいました。


 もうね、背筋ぞくっぞくしますよ。心臓をバズーカでどっかんですよ。


 私はもう「この手どうしたらいいんだろう?」なんて思いながら固まっていることしかできなかった。



 世界の皆さん、聞いてくれます?


 お兄様が愛おしすぎてつらい。


ソフィアのロランドの手のひらの上で転がされてる感がすごい。

でも本人幸せそうだから何も問題ないね。イチャラブできてよかったね。


次回、ロランドくん待望の魔法習得へ向けて前進です。

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