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お兄様に魔法を見せたよ


 私、お兄様に管理されちゃうことになりました……!


 いやんっ、そんなっ、そこまで管理されちゃうの!? な展開もすこーしだけ期待してたんだけど、真面目で優しいお兄様がそんな鬼畜外道な訳もなく。


 お母様から受けた引き継ぎ内容の確認と称して外へ出ても、薄暗い庭の隅の方に連れて行かれて「躾は初めが肝心だからね」とか言われちゃって人には言えない教育を受けさせられたり……なんてこともなーんにもなく。


 庭師さんが頑張ってくれてるお陰で小さいながらも見事な、窓からも勝手口からもとても見通しの良い庭園の前で、私の魔法を軽く見ておきたいと言われましたとさ。


 ……これはお庭デートだね!


 せめてそういうことにして、気分を盛り上げていこうと思ってたんだけど……やっぱりいざ魔法を見せる段になるとダメだね。ちょっと緊張しちゃう。


 私の魔法が規格外だってことはお兄様にももちろん知られてはいるんだけど、お母様とお兄様ではその認識が違うっていうか、深度が違うっていうか……。


 あの、ほら、紫外線を防いでる防御魔法とか、髪の毛までコーティングして痛まないよう気をつけてる防御魔法とか、肌の代謝やら潤いやらを調整してる防御魔法とか、ねえ? もしもお兄様に「え、そこまでやってるの……?」とか思われたら私、生きていけない状態になっちゃうから。


 国で最高位の魔法使いであることを示す【賢者】の称号を持つお母様にして規格外と言わしめた私の魔法はほら、お兄様には刺激が強いところもあるかなーと。


 男の人って自尊心が高めというか、女より劣るってことを許せない人とか偶にいるじゃん?


 もちろん分かってる。お兄様はとても紳士的でそんな狭量な凡百の男どもとは違うって事は重々承知してるけど、それでもお兄様に僅かでも不快感を与えたくない妹心と申しますか。


 そんな諸々の事情で、さりげなーく「やっぱり魔法見せるの中止にしません?」と申し出たのだけど、お兄様に「ソフィアのことは何でも知っておきたいんだ」なんて言われたらもうハートがどっきんこですよ。理性なんてパーン! と弾け飛びますよ。全てはお兄様の仰せのままに!! ってなるよね、なりましたよね。


 それでも往生際悪く反応見ながら小出しにして、徐々に徐々に見せる魔法のびっくり度を上げてお兄様の反応を伺いながら慎重に色んな魔法を使ってったんだけど、なんか、思ったよりも全然平気っぽくて。お兄様ってば器が大きいのなんのって。


 結局全部見せても引かれることはなさそーだと安心できたので、最終的にはお母様にも見せてない時止め魔法とかまで見せちゃった。


 我ながらちょっと調子に乗りすぎた感はあるけど、それでもお兄様は私の期待通り、私を傷つけるような反応は一切しなかった。


 それでもやっぱり驚きはしたようで、目をまあるく見開いてぱちくりとかしてたけどね。


 お兄様めっちゃらぶりー。実に眼福でした。


 しかもその後ちゃんと「ソフィアは凄いんだね」とフォローまで入れてくれるお兄様の器の大きさよ。

 自分の驚愕や常識を脇に置いて、何より最初に褒め言葉を贈ってくれるお兄様の優しさよ。


 私は声を大にして伝えたい。


 世界よ、これが私のお兄様だ。どやあ。


 これがお母様だったら「またとんでもないものを……」とか言って溜め息をプレゼントされてるところだよ。どうせなら貰って嬉しくなるものをプレゼントして欲しい。あ、でも今のこの状況が既にお兄様をプレゼントされたに等しい状況なのかもしれない。そう思ったら今までお母様に叱られてきた日々も今日お兄様と楽しくお庭デートする為の伏線だった気がしてきた。


 上げてから落としたり、下げてから上げたりするのはお母様の常套手段だからね。こんな回りくどい贈り物もあるかもしれない。

 今までお母様のお説教には苦労させられてきた分、幸せもひとしおというものである。


 ……まあ本当に(さじ)なげられた可能性の方が高そうだけど……。


 んんっ、やめやめ! ネガティブな事は考えないっ!

 これ考え出したら食堂でのえげつないドッキリの仕掛け人が誰だったのかとかまた考え始めちゃうからね! 平和に終わった話は掘り返さないのが心の平穏の為だからねっ!


 例え私以外の全員がグルだったとしても、お兄様は私に優しいし、お母様は怖いけど私を守ってくれてる。本当に怖いけど、それも私のことを想ってのこと……な、ハズ。多分。きっと。


 そしてお父様は……お父様は……、えっと。


 ………………とりあえず無条件で私のことが好きだから、問題は無い、かな?


 私って未だにお父様が何考えてるのかよく分かんないんだよね。家族のことが大好きなのは知ってるんだけど、それくらいしか知らないというか。


 もうちょっとお父様にも構ってあげた方がいいんだろうかと悩み始めた頃、私の魔法について何やら考察してたっぽいお兄様が考えをまとめ終わったようだ。


「……うん。やっぱりソフィアはすごいね。僕の自慢の妹だよ」


 その言葉を聞いて、私の鼻はにょっきりと伸びた。


「全部見せなよ」

「全部見られちゃう……ッ!」

引かれる恐怖を感じながらも、熱の篭った視線にドキドキそわそわの方が余裕で上回ってたソフィアちゃん。

二階から注がれてた父の寂しそうな視線なんて気付いてませんよ。

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