表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
635/1407

二日間の総評


 大変な事も多かったけど、なんだかんだで楽しかったカレンちゃん宅訪問が終わった。


 帰りの馬車に比較的穏やかに揺られながら。

 ようやく得られた落ち着ける時間に、私はこの二日間のことを思い返していた。



 ――ヘレナさんの所では好感度爆上げのお土産チョイスに成功し、……お母様に叱られるかもしれない事態になった。


 ――カレンちゃんの所では筋肉の人と仲良くなって運動に誘われ、……お母様に叱られるかもしれない事態になった。


 ……どうしてこうなったんだろうね。


 闇水晶の件はお母様にも問題があった。そこをつけば怒りは回避出来るかもしれない。


 他所の家で泥まみれの件は私が望んだことじゃない。不可抗力だと強く訴えれば聞き入れられるかもしれない。


 暇だ暇だとうだうだを楽しんでいた直後にこれとは、随分と内容の濃い時間を過ごしたものだと軽く現実から目を背けていたところ、ふと今になって、ガルフレッドさんの別れ際の一言が気になってきた。


『それでは、ロランド殿によろしくな』


 うんここだ。この台詞を聞いた時、確かに「ん、なんでお兄様?」と思ったんだ。


 でもお兄様の名前が出た瞬間に明らかに何かを思い返して笑顔になったカレンちゃんを見て衝撃を受け、私は今までその根本となる問題を忘れていた。


 ……お兄様ってヴァレリー家と交流でもあるのかな?


 我が家はお母様もお父様もゴリゴリの文官系なので、私の知る限りカレンちゃんの家と家同士のお付き合いはなかったはずだけど。


 ガルフレッドさんも結構偉い立場みたいだったし、影の宰相やってるお兄様とは何らかの関わりがあったとしてもおかしくはないのかもしれないね。


 それこそ――私より先に、カレンちゃんの家に行ったことがある、とか?




 ――今日も来ている。


 玄関の見える位置に出れば、最近やけに気になるあの人が、今日もお父様と会話をしていた。


 お父様の仕事相手。お友達のお兄さん。


 ……ロランド、様。


 まだ学院を卒業したばかりなのに、優秀な彼は、もう国の重要な役職に就いているらしい。


 とっても、すごい人。


 憧れちゃうな。


 ……お友達のソフィアが自慢げに話すのも、わかる気がする。


 騎士のほとんどに敬意を払われる立場であるお父様が、対等に話している。それだけでもすごいことだもの。


 お父様は体格がかなりがっしりとされているから、ここから見下ろせば二人の大きさの違いがよくわかる。ロランド様もしっかり鍛えられてはいるようだけど、成人している騎士の皆様ほどの体格はない。クマに襲われる少年のように見える。


 なのに、ロランド様に気負いはない。


 終始柔らかな笑顔で、お父様と難しい大人の話をされている。


 すごいな。かっこいいな。


 ……あ。


 いけない。顔を上げたロランド様と目が合ってしまった。ずっと見ていたのに気づかれただろうか。


 思わず頭を下げてしまった私に、ロランド様は丁寧な騎士の礼を取ってくださって……。


 その麗しい姿が目に焼き付いて離れない。


 ……私は、お友達のお兄さんに恋をしてしまったのでしょうか?




 ――みたいな、みたいなね!?

 そんなラブストーリーが展開していた可能性もあるわけですよ!!


 やー、お兄様とカレンちゃんがねー。そっかそっかー。


 まあないかな。


 実際お兄様だったらカレンちゃんくらい容易に虜にしちゃえそうだけど、だからこそなさそうっていうか。お兄様は天然物の魅力を四方八方に振りまいてはいるけど、決して軟派な訳では無いので。


 それにカレンちゃんだって、お兄様に恋してたらあの程度の反応で済むわけないよね。もっとこう「もうっ、お父様ったら! 余計な事を言わないで!」みたいな……うん。これも違うか。


 とにかく、妄想とは現実にはありえないから楽しめるのである。


 実際にカレンちゃんがお兄様に惚れてたら大問題だからね。

 私は友情と恩義の狭間で厳しい立場になってしまうところだった。


 恋する乙女なカレンちゃんと、激デレ&隠れデレな一粒で二度美味しいアネットによるお兄様争奪戦。


 ……もしそんなことになってたら、私は思い悩んだ末に、裏アネットへの罪滅ぼしを選んで……いやでも、その前にカレンちゃんが私の友人という理由で自ら身を引いちゃう可能性も……うんむむ。


 うん、決めた。

 もしも本当にそんな状況になったら私も含めた三人まとめて娶ってもらおう。


 そもそもお兄様が魅力的すぎるせいっていうか、お兄様を一人が独占するのって実は戦争の火種になるくらい危険な事なんじゃないかって昔から考えてはいたんだよね。


 お父様がお母様レベルのお嫁さんを捕まえられるならお兄様は私やカレンちゃんレベルの人を三十人くらいは娶るべきだし、娶ったからにはお兄様はしっかりと大切にみんなをお嫁さんとして扱ってくれそう。


 そして私は他のお嫁さんたちやお兄様と、幸福な日々を過ごすのだ。


 ……あれ? これ案外悪くなくない?


 お兄様に見合う相手。それ即ち美少女がよりどりみどり。


 ……やっぱりハーレムは最高だな!!


ソフィア様はお一人で乗るとよく忍び笑いをされる。

その声を聞くことで、今日も彼女は元気なのだと実感するのだ。(byメルクリス家の御者)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ