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vsカレンちゃ負けたあー!!


「人と戦うのが好きではないと聞いてはいる。だが、もしもキミが人との訓練を苦手に思っているのなら、それを改善する手伝いをしたいと思っていて、だな……。……キミさえよければ、苦手を克服する手助けを――」


「結構です」


 ツーンとした表情のまま、キッパリとお断りした。


 物は言いようというか、御為倒(おためごか)しというか……。


 落ち着きを取り戻したガルフレッドさんが何故こんなことを言っているのかといえば、それは私とカレンちゃんの戦闘結果に由来する。


 もう誤魔化す必要すらない。


 あんなもん模擬戦じゃないやい。てかあんなの戦闘ですらない!!



 断りきれずにカレンちゃんとの()()を了承した私は、まず動きやすい服装に着替えさせられた。使用人さん用の替えの服らしい。


 サイズが合わないのを理由に断ろうとした途端、わらわらと集まってきたメイド集団がものの数分でサイズ直しを完了させたのは一種のミステリーに違いない。


 そんなこんなでちゃちゃっと準備が整えられ、あれよあれよという間にカレンちゃん相手に戦う羽目になったのだけど……。


 とても簡単に負けました。

 びっくりするくらい簡単に、しかも一撃も受けることなく負けました。


 敗因を上げるとするのなら、目に見えない筋肉も警戒しろってことかな……?


 あのね、カレンちゃんが剣振り上げるじゃん。受けるの怖すぎるから避けるじゃん。身体の横を通過した剣が地面をボグッシャオァン!! なんておかしな音出して抉るじゃん。予想以上に抉るじゃん。っていうか地面が丸ごと吹き飛んだじゃん。地面が消えたら転ぶよね。当然穴のできた方に転がり落ちるよね。そこに爆発した土も上から降ってくるよね。軽く生き埋めだよね。


 泣いたわ。頑張ったけど堪えきれずに泣いたわ。


 なにが悲しくて即席落とし穴に埋められねばならんのか。なにが悲しくて土まみれにならねばならんかったのか!! いくらカレンちゃんでもこれはないよね!!!


 あまりの惨状に即刻お風呂へと案内されて、やっと落ち着いてきたのが今になります。


 しかもカレンちゃんはしっかりと降ってくる土を避けてたから汚れなかったんだって。さっすが地面を爆破し慣れてる人は違うねー、あっはっは。


 そう、あの地面はカレンちゃんの家の地面。

 地面を爆破し慣れてる人が日常的に訓練に使う地面なのである。


 いっそ地面さんに同情するわ。毎日あんなに躍動させられてるとかダンシングつっちーの称号あげちゃうわ。それで草とか一切無かったのかって後になって気付いたよね。地雷踏んだらあんな感じで爆発するんだろーか。


 ただひとつだけ言える事は、私はもうこの家での義務を果たしたという事だけだ。


「仰る通り、私は戦いというものが好きではありませんから。どれだけ頼まれてももうやりません。戦いません。当然ガルフレッド様とも戦いません」


 そもそも断れる選択肢があったのにとか、自分から被害を受けにいったとかは関係ない。


 私はカレンちゃんのお願いだから聞いたんだ。

 全身土まみれにされた状態からやっと回復したのに、またガルフレッドさんと戦って土まみれにされるのは御免こうむる。


「俺とか? 俺はやる気はなかったが……いや、なんでもない。悪かった。勿論俺とは戦わなくていい。だがなぁ……」


 危うく怪しい流れに行きかけたのをひと睨みで食い止める。

 てっきり「次、俺! 俺の番な!」ってことであんなに食い下がるんだと思ってた。やらなくて済むならそれでいいんだ。


 しかし、そうなると食い下がった理由は……。


 言葉を濁したガルフレッドさんの視線を追えば、そこにはしゅーんと落ち込んでしまったカレンちゃんが。


 どうやらガルフレッドさんはカレンちゃんの好敵手としての私を諦めきれないらしい。あんな無様を晒した私に何を期待しているんだか。


 でもカレンちゃんを落ち込ませるのは私だって本意じゃない。


「カレンとは……まあ、あんまり戦いたくはないですけど。仲の良い友人として過ごすうちに機会はあるかもしれませんね」


 だからついつい甘やかしちゃう。


 申し訳なさそうな顔

 しょぼんと落ち込んだ顔。

 そして、驚きと喜びで明るくなった顔。


 ……本当に、こうして大人しくしていれば病弱な深窓の乙女でも通る外見してるのになぁ。なんであのパワーがこんな美少女に……。


「あの……ソフィア、ごめんね? ソフィアと戦うの、すっごく楽しみだったから。はしゃぎすぎちゃって……」


 性格も良いのに、本当にもったいない……。


 いや、人の個性に対して失礼ではあるんだけど。……でもさあ〜〜!


「私も油断してたしお互い様だね。……ところで、あの地面を爆発させる技って」


 一応聞いておこうと思い、ちらりとガルフレッドさんを視線で指し示せば、カレンちゃんは嬉しそうに微笑んだ。


「うん。お父様のバスタードソードの使い方を真似てみたの」


 ある意味想定通りの答え。


 カレンちゃんの異常さの原因は、やっぱり【豪腕】その人だった。


ソフィアは汚れ防止の魔法を常時発動してる。


土に埋まった→でもお洋服はまっしろ綺麗!!


そんな不自然を無くす為、泣く泣く身を汚す覚悟を決めたのでした。

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