表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
632/1407

答えにくい質問責め


 ガルフレッドさんはその見事な筋肉に似合わず話し上手だ。


 私とカレンちゃんが女の子同士でキャイキャイやってても違和感なくさらりと混ざる。どころか、小粋な話題提供で場を盛り上げてくれたりもして。


 これがイケメンマッチョか……!! と畏怖の念を抱かずにはいられないね。カレンちゃんが懐くのも納得のスマートさだ。


 話が(はず)めば当然、好意的な感情が芽ばえる。

 初めは威圧的にしか感じなかった巨体もなんだか頼りがいのある男らしい身体に見えてきたし。もしも今の状態でまた「筋肉……触るか?」されたら誘惑に抗えるか自信が無い。筋肉の洗脳効果ヤバいわ。


 しかもこのイケマッチョ、笑顔がずるいんだよね。


「カレンに力の制御の仕方を教えてくれたのはキミだろう? あれには本当に驚かされた。是非私にもご教示願いたいのだが頼めるだろうか」


 言葉だけ。目を閉じて言葉だけを聞いていたなら、私はいつも通りに柳に風の如く受け流しただろう。


 だけど、紳士なんだよ。この筋肉は礼儀正しいんだよ。ってゆーかカレンちゃんに似てるんだよ。


 断ると「そうか……」ってカレンちゃんそっくりな八の字眉になるのももう見ちゃってるから、なんとも要望を断りづらい。だからどうしても論点をずらした返答になってしまう。


「確かに私も協力しましたけれど、あれはミュラー……共通の友人であるミュラー・セリティスの協力があってこそという面も大きいのです。もしも彼女がいなければ、私はカレンの力を暴走させるだけの結果になっていたかもしれないのですから」


 そしてガルフレッドさんはカレンちゃんのお父さん。とっても空気の読める筋肉なので。


 私の意図を汲んで、話を違う方向に持って行ってくれるだろうという確信があった。


「セリティスの剣姫か。勿論彼女にも、共にカレンの相談に乗ってくれたという友人たちにも感謝している。しかし、私はキミにこそ話を聞きたい。カレンがな、言うんだよ。『あの場にいたのがソフィア一人でも、私をどうにか出来たんじゃないか』ってな」


 カレンちゃんをどうにかだって!? なんて魅惑的なワードなんだ!! と脊椎反射しちゃう自分の思考回路が恨めしい。いま反応すべきはそこじゃないでしょ。


 ていうか意図とか全然汲んでくれてない。それどころか、なんだかより悪い方向へと加速した気さえする。カレンちゃんも家族に何吹き込んでるの。恩を仇で返しちゃダメでしょう?


 半分本気で驚いた表情を作ってカレンちゃんを見れば、私たちの視線を集めたカレンちゃんは恥ずかしそうに頬を赤らめていた。


 ……いや、違うね。これ照れてるの私に対してだけだ。ガルフレッドさんには違う視線を向けている。


 これは「なんでソフィアに言っちゃうの!? お父様のバカバカ!」って感じかな。つまりカレンちゃん的には今のは私を褒めたのであって、決して異常性の告発という意図はなかったと。


 流石はカレンちゃん。眺めているだけで癒されちゃうね♪


 ……いや、うん。私も照れて一緒にイチャイチャしたいけど、まずはガルフレッドさんへの言い訳が先か。いや言い訳するのは悪手かな。えーと。


「当然、請け負った以上は無責任に放り出すつもりはありませんでした」


 そうだろうとも、と大きく頷くガルフレッドさんの反応を見ながら言葉を繋ぐ。


「もしあの場にミュラーがいなかったら……またカレンの身体に魔力を流して、正しい魔力の流れというものを教えていたと思います」


 それで解決! となっていたかは微妙な所だけど、あの時のカレンちゃんの様子を見るに、きっと問題なく……というか、放ったらかしにしてたって放課後までには自力で解決してたんじゃないかって気がする。私が言うのもなんだがカレンちゃんもそれなりに異常だと思う。


 カレンちゃん、明らかに色々とおかしいんだけどね。でもかわいいから仕方ないね。かわいい子はそれだけで得するのが現実だからね。仕方ないね。


 かわいい私にもお得をください。


「それだよ。その魔力を流すというのが気になっていた。その技術は、……やはりキミの母親から学んだのかな?」


 軽く願った途端に逆がくるとか勘弁して……。

 はいと答えてもいいえと答えても問題ありそうな質問は嫌なんだよう。


 何故か急に探る目になったガルフレッドさんへの回答は避け、私は念の為、彼の人の良さを利用することにした。


「それを知ってどうするおつもりですか? 未成年とはいえ、私は私の責任においてカレンを助ける為に行動したつもりです。もし責めるのでしたら私自身にお願いします」


 きっとガルフレッドさんは、愛する娘に得体の知れない行為をされたと知って怒っているのだろう。という事にしておく。真実とかどーでもいーし。


 私はただ、お母様から後で叱られる可能性を僅かでも残しておきたくないのだ。


「責めるだなんてとんでもない!」


 想定通りの反応。対応。やっとペースが掴めた感じ。


 若干心苦しいが、この好機を有効活用させてもらおう。


警戒心をするりと解かれる感覚に警戒を強めるソフィアさん。

どこまで抵抗できるのか。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ