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筋肉貴族

    

 カレンちゃんのお父様であるガルフレッド様は、それはそれはご立派な脳筋様でありましたとさ。



 まあ見たまんまよね。筋肉貴族って言葉がこれほどしっくりくる人物は今後現れないんじゃないかってくらいとっても筋肉。


 ボディビルダーみたいにムチィッ!! ムキムキィッ!! って上半身裸になってる訳じゃないけど、まあ体格はそれと完全に同じだよね。うちのお父様の正装と似たようなピラピラの服着てるはずなのに、何故か鎧着てるように錯覚するんだもの。防御力とかめっちゃ高そう。


 私ってほら、か弱い女の子だからさ。

 基本的にこんな感じの、見るからに「(オトコ)ォオオ!!」な人って苦手だったりするんだけど。でもカレンちゃんのお父さんは割かし平気な感じがする。まだ人の理性が感じ取れるというか……いやこの表現は失礼か。


 えー、例えるならカレンちゃんのお父さんは……、そう! 理知的な人がついうっかり筋肉鍛えすぎちゃったらこうなりましたー! みたいな感じじゃないかと!


 言わば理性ある獣ではなく、獣の姿をした人。


 そーいう視点で見るとガルフレッドさんて力を得過ぎちゃった人の見本みたいだね。「力が欲しいか……」の質問に答えたら本当に力を貰っちゃった人というか。

 比喩的な表現ではなく、物理的な破壊力とか腕力とかそういった純粋な力の象徴。それがこの雄々しい筋肉なんだろう。正に筋肉いず(パワー)ですよ!


 ちなみにだけど、同種の筋肉人間で人の姿をした獣パターンの人はどこぞの学院で剣術の教師をやってたりするんじゃないかな。私見た覚えあるもの、似たような筋肉。


 言葉なんかいらない! 戦えば相手の全てが分かる! だからいっぱい戦おうな!! みたいなとこがもう完全に悪い脳筋。


 人は平和的に対話ができる生物なんだから話す努力を怠るのはよくないと思うの。あっ、でも話す時にツバ飛ばすのはやめて欲しいな。


 ……って、ちっが〜う。別にあの人がどうとかどうでもよくて。


 閑話休題。


 ガルフレッドさんの筋肉発言からちょっと思考が飛んでたけど、それは現実逃避の面もあるんだ。


 あのね、この親子面白いよ。筋肉への愛がすごい。


 カレンちゃんが「誰もが筋肉を好きなわけではありません」って抗議するじゃん。するとお父さんが「でもお前も小さい頃は俺の筋肉を見てキャーキャーと……」ってカレンちゃんの過去を暴露するじゃん。カレンちゃんが「今はそれほど興奮したりはしませんから……」ってお父さんのムッキムキな腕の筋肉見つめながら言うじゃん。お父さんが「でもカレンは今も俺の筋肉が大好きだろう」なんて断言するじゃん。カレンちゃんが恥ずかしげに「……はい」とか言うじゃん。


 なにこれ? なんなのこれ?

 なんで私はカレンちゃんが「筋肉が好き」って無理やり言わされる場面を見せられてんの? そんなに筋肉を褒める事を常識にしたいの? 頭がどうにかなっちゃいそうだよ!


 意外とお父さん大好きっ子らしいカレンちゃんは大変微笑ましいのだけど、このままでは私の中でのカレンちゃんが筋肉好きにカテゴライズされてしまう。そんなのは嫌だ。


 たとえ本人がもう限りなく戦闘狂(ミュラー)に近い存在になってたって、私は在りし日のか弱いカレンちゃんという幻想を諦めたりはしない。


 カレンちゃんはね? おどおどふらふらして庇護欲を最高に煽るだけじゃなく、守ってあげた時にふわりと浮かべる笑顔がさいっきょうにかわいいんだぞぅ!


 そんな子が実は父親の筋肉好きだとか断固として信じたくない。


「あの、ガルフレッド様。本日私を呼び出した用件を伺ってもよろしいでしょうか」


 仲の良い親子を通り越して、鈍感な戦士と慕う少女みたいに見えてきた二人の空気に割って入る。

 最悪カレンちゃんに睨まれることも覚悟したけど、まだそこまで重症ではなかったみたいだ。本当に良かった。


「呼び出し……いや、そう受け取られるのも当然か。重ねて詫びよう。この通りだ。だが勘違いだけは訂正させて欲しい」


 目を背けていたカレンちゃんの真実を暴かれそうになって攻撃的になった私の言葉を責めるでもなく、ガルフレッドさんは年下の私に向かってなんの躊躇いもなく頭を下げた。それも深く、腰よりも深くだ。


 ……驚いた。本当に驚いた。


 この人、本当に良い筋肉……ごほん。良い人なんだ、というのはカレンちゃんが懐いてる時点でわかってたけど、それよりなによりこれだけ頭下げられてるのにそれでも頭の位置が私の頭の高さと変わらないという現実に、深く、それはもう深ーく絶望した。


 私って実は一寸法師の末裔だったりしないかな?

 いくら相手が大きいとはいえ、この事実はちょっと……くっ、悔しくなんてないんだからねっ!


 悲しすぎる現実をおふざけで中和している間もガルフレッドさんの話は続く。


「カレンに頼んでキミを呼んでもらったのは災厄の魔物の件に関してだ。騎士団を代表して感謝を捧げたい」


 ほらみろ、また聖女関連だ! こうなる予感がしてたんだ!



 嫌な予感は外れてくれたっていいのに!!


カレンは「筋肉好きを見分ける瞳」を発動した!

ソフィアの筋肉を見た回数が詳らかになった!


……今日だけで五十回越え。時間にして三十分以上……悪くない!


ソフィアはカレンに筋肉好きの同志して認定された!!やったね!

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