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カレンちゃんのお父さん


 わっ、わっ、わったし〜は聖女〜。聖女ソフィア〜。

 みんながだいすき人気者〜。


 でもでも〜。尊敬、崇拝、困っちゃうの〜。普通に接して欲しいのよ〜。


 だからお願い〜。カレン〜ちゃんの、おっ父さん〜。


 どうか〜普通で〜……あってくれぇい!!



 自作の歌で不安を紛らわしながらやってきたカレンちゃんのお家は、門番さんの声が野太いというのが第一印象でした。


 ヴァレリー家って確か有名な武門のお家なんだよね。

 なんでも当主さんが力自慢で、片手で馬を持ち上げるってジョークが定番だとか。


 ……まさかとは思うけど、使用人が全員筋肉で武装してたりはしないよね? そんな光景見たら泣くよ私は。


 もしもここがそんな悪夢の屋敷だったらカレンちゃん以外は視界から外そう。どうせ視界に入れるのなら同じ肉々しいのでも黒光りするテカテカ筋肉よりかは肌色ぷるるんなおっぱいがいい。

 これは全人類が同意するこの世の真理だと思う。


 ……まあ筋肉も艶っぽいというか、良い筋肉もあるってことに異論はないけどね。


 過ぎたるは及ばざるが如し。


 想像してご覧よ、控えるメイドさんやら執事さんやらが全員服の上からでも分かるマッチョバディだったらどう思うか。


 マッチョに囲まれて優雅に団欒♪ ってならないでしょ。絶対そわそわしてゆっくりお話とかできないでしょ。なんなら肉密度が高すぎて部屋の中とか狭く感じそう。柔らかくて小さい私なんか圧迫感だけで潰れるんじゃないか?


 やっぱりメイドさんってのは家を飾る花々だからね。圧迫感なんてもってのほかよ。


 優雅な動きをつい目で追ってしまう。そこに居るだけで甘い香りが漂う気がする。そんな見目麗しく癒しオーラ完備な人が従者には向いていると思うんだよね。


 それにほら、やっぱり筋肉に囲まれてると思うよりかはおっぱいに囲まれてる方が男性の方にはいいでしょう?


 どちらを向いても厚く逞しい筋肉。

 隆々としたよく鍛えられた身体から溢れ出るフェロモンに包まれながら、固くて立派な筋肉が四方八方から迫ってきて……とかも、まあ、ちょっとはドキドキするかもだけど。

 それよりかは柔らかぽよぽよのおっぱいおしくらまんじゅうとかの方が一般的に見て需要あるよね。


 ……いや、それはそれで鬱陶しいか?

 複数の知らない美女からこれ見よがしに柔軟性胸部装甲を押し付けられたら私への挑戦と思うかもしれない。少なくとも筋肉押し付けられるよりかはイラッとしそうだ。


 まあそんな心配も杞憂だったようで何よりだね。


「ソフィア・メルクリスです。本日はお招きありがとうございます」


「ガルフレッド・ヴァレリーだ。急な招待になって悪かったな。今日はゆっくりして行ってくれ」


 門番さんは野太い声。

 玄関を開けてくれた使用人さんは肩の形がムキョッてしてた。


 けどカレンちゃんは傍目には普通の女の子だし、カレンちゃんと一緒にやってきた可憐な少女メイドさんはいかにもか弱そうでこの家にいたら何かの拍子でポッキリ折られちゃうんじゃないかと心配になるほど華奢だ。


 え、カレンちゃんのお父さん?

 想像した通りの筋肉お化けでしたけどなにか?


 和やかに挨拶を交わし終わると、不意に沈黙が訪れた。何やらカレンちゃんのお父さんに値踏みされている気がする。


 ……いや、これ……んん? ねえちょっと待って?


 胸や腰、お尻や足にまで視線を感じるのに一切のエロさを感じない。

 これってまさか筋肉見てる? 私いま、筋肉の値踏みされてる感じですか?


 身体中を検分した視線が私の顔に戻ってくる。

 この流れってまさか、いつぞやのように決闘、とか……? 私の筋トレは健康目的だから見逃してくれないかなぁ……。


 やけに長く感じる時間が過ぎ、筋肉の人は口を開いた。


「……筋肉、触るか?」


 グッ、と身体に力が入る。想定外すぎて反応ができない。


 えっとこれは、どういうことだ? 俺様のような頑強な筋肉を直接感じてその貧弱な筋肉を鍛え直せとか、そういう意味か? それとも純粋に筋肉自慢したいから触って褒めろとかそういうあれ? あるいは単純に触りたそうに見えた、のかなぁ?


 訳が分からん。もしかしてこれは、筋肉貴族達の間で定番の筋肉ジョークだったりするんだろうか。


 お互いの筋肉を確かめ合い「今日も良い筋肉で」「いえいえそちらこそ。今日はまた一段と良い筋肉で」みたいな。


 やべぇ、腹筋の限界が近い。カレンちゃんの御家族の前でバカみたいに吹き出すのは避けたい。な、なんとかせねば!


「お父様っ、恥ずかしいからやめてください……!」


 おお、救世主様!


 俯いて笑いを堪える私がどう見えたのか、カレンちゃんがとんでもない体格差も恐れずガルフレッドさんに抗議する。というかカレンちゃん、学院で見るよりなんだかとっても自然な感じ。きっとこっちがカレンちゃんの素なんだろうな。


「何を恥ずかしがる事があるんだ。女の子は皆、筋肉が大好きだろう?」


 そしてこの人も素なんだろうな。


 私、こーゆー人なんて呼ぶか知ってる。「脳まで筋肉」って言うんだよね。


ガルフレッドは筋肉アイを発動した!

ソフィアの筋肉量が詳らかになった!


……この年齢、この体格でこの筋肉量か。……悪くない!


ソフィアはガルフレッドに筋肉側の人間として認定された!!

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