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美味しい料理は何にも優る


 ヘレナさんが闇水晶抱えて引き篭った。



 どうせ内祝いなんだから優先したい事ができたならそれ優先していーよー、ってのが私の素直な心情なんだけど、どーもシャルマさんにはそれが気遣ってる風に見えてるっぽい。ものすっごい申し訳なさそうにしててふつーに居た堪れない。もっと気楽にしてくれていいのに。もむもむ。


 だって考えてもみてほしい。

 招待を受けて今日ここに来た私が、一体何を楽しみにしてやって来たのかという事を。


 お菓子プロ級なシャルマさんの手料理を堪能する為でしょ?

 お母様に虐められてささくれだった心にシャルマさんの癒し成分を補給する為でしょ?

 闇水晶の活用法を聞く為でしょ?

 ヘレナさんのお屋敷に興味があったからでしょ?

 あとはまあ、暇潰しでしょ?


 ほら、ヘレナさんが引き篭ってても全然困らない。なんなら引き篭る為に闇水晶の資料を持って出迎えに来てくれたのかと思う程だ。


 そりゃ研究関連は直接聞いた方がいいし、ヘレナさんともお話したいとは思ってたけど、シャルマさんと二人きりというのもそれはそれで魅力的というか……。


 実際シャルマさんと二人きりになるのってヘレナさんと二人きりになるよりよっぽど難易度高そうだし、価値ある時間が転がり込んできたお得感すらあったからあんまり申し訳なさそうにされるとなんか騙してるみたいで割と罪悪感あるんだよね。こっちはめちゃくちゃ得してるのに損させたと誤解されてるのって、知らない人相手ならいいけど、知り合い相手だと、ねえ。お互い気兼ねなく良い雰囲気でいたいじゃないの。


 もむもむもむもむごっくん。


 いやしかし、考え事をしながらでも美味しくてフォークが止まらないなしかし。


 このお肉とか口に入れた瞬間溶けるし。さっきのテリーヌとかもやたらオシャレだし。その前のスープもなんか、深い味わいが次のひとくちを運ばせるというか……隠し味がいい味出してる感じだった。隠し味が何かは知らないけど。


 あと忘れちゃいけないのがあれ、なんか洋風お好み焼きっぽいやつ。あれがすっごい好みだった。


 そりゃ本家のお好み焼きとは形と食感くらいしか似てないんだけどさ、自分で作る以外で日本食っぽいものに出会うことってほとんどないから本当にびっくりしたよね。珍しい形のグラタンだなーとか思って食べたら「これお好み焼きじゃね?」って。これだからシャルマさん好きなの。ラブだよラブちょー愛してる。


 しかも、しかもだよ?

 私がお菓子好きという事を十分に理解しているシャルマさんは、食事の後には普通多くても二品くらいしか出されないデザートを、あろう事か五品も用意してくれていたんだよー!!

 どうよこの気配り上手!? 素晴らしいとは思わないかね!!


 味、見た目、香り、食感。

 それに加えてフォークを入れた時の感触や音とか、もう五感全てを満足させようというのが如実に伝わってくる素晴らしいお料理やデザートの数々でしたね。


 これほど完璧なもてなしを受けたのは生まれて初めてで……、ってゆーかぶっちゃけ王家主催のパーティなんかより数段ランクが高いと思う。個人を招待するのとパーティ用料理とでは違いもあるだろうけど、それにしたってねぇ。


 ヘレナさんがいるとかいないとか関係ない。


 私にとって今日のもてなし(料理)は、大満足という言葉に相応しいものだったと断言できよう。


 なので恍惚のままに全ての食事を終えた私は、未だ幸福の余韻に浸りながら、とりあえずシャルマさんを褒めちぎる事にした。


 感謝や感動を言葉にするのって大切だよね。


「……素晴らしい。実に素晴らしいお料理でした。私が今まで食した中でも間違いなく上位に入る美味の数々。味だけでなく色彩も豊かで、シャルマさんの人柄そのものの様に包み込む優しさが感じられました」


「恐れ入ります」


 おっといけない、感じたままに褒めてたら独特と評判の個性的表現が混ざった気がする。でもまだ誤魔化せる範囲かな? 自分では判断がつかないから難しいな。


 ともあれ私が大変満足したというのはちゃんと伝わったみたいだ。


 招待主のヘレナさんが己の欲望を優先した件をずーっと気にしてたシャルマさんがやっといつもの笑顔を見せてくれた。そうそう、美人はやっぱり笑顔でなきゃね。


「この後は何か予定とかありましたか? もし良ければ、シャルマさんとゆっくりお話がしたいんですけど」


 どうかなー、ダメかなー。シャルマさんと楽しくお喋りしたいなーと若干卑怯な言い回しでお願いしてみれば、困り顔のシャルマさんは予想通り簡単に了承してくれた。


「予定ではこのあと研究室の方へ移動するつもりだったのですが……、……本当に申し訳ありません。私でよければいくらでもお相手致しますので……」


 ほう、いくらでもとな? それはとても魅力的なお言葉ですね。



 こうして私は、シャルマさんとの貴重な時間を過ごす権利を棚ぼたゲットしたのだった。


 やったね!


親しい人の憂い顔を晴らしたい!その為なら何だってする!

でも大変そうなら妥協もするよ。何でもとは言っても限度もあるし……え、優先順位?そりゃ自分の希望に都合がいいなら多少は……ねぇ?


これがソフィアという少女です。

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