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ヘレナさんからの手紙


 退屈だー、退屈だーと暇を持て余していた私の元に届いた二通の手紙。


 それはカレンちゃんとヘレナさんから送られたもので、あろう事か指定する日時が被っている招待状でもあったのだ!


 毎日暇してるのにどうしてこんな時だけ被るのか!? ダブルブッキングなんて、まるで私が人気者みたいじゃあないか! と選べる贅沢を満喫していたのがさっきまでの話。


 はてさて、人気者たる私が選んだ栄えある招待主の名は――!?



 退屈な長期休暇に有意義そうな予定が入ってとても嬉しい。とはいえ私の身体はひとつしかない。


 一体どちらの招待を受けるべきなのかしらん! と一通りお約束を楽しんだ後は、さらっと書いたお手紙をリンゼちゃんに頼んで出してきてもらった。


 まあ普通に考えたら両方行くよね。


 別に片方しか選べないという訳でもなし。

 近日の指定が被るのは確かに珍しくはあるけど、急な便りで一方的な「三日後に」なんて知らせは一回両方とも断ってから改めて日時を擦り合わせたって問題ないくらいだ。


 それにしても、二人してこんな急ぎの手紙を送ってくるなんて……まさか私が暇してるって知ってた、とか? ……まさかね。


 答えの出ない問題は即座に脳裏から追いやって当日に持っていくお土産やら着て行く服なんかをあれこれ楽しく悩んでいたら、リンゼちゃんからまた新たな手紙を渡された。


 今日は手紙が多い日だなと思ったけど、どうやらヘレナさんからの返信のようだ。融通が利きそうなヘレナさんの方へ日時の変更を打診する手紙を出しはしたけど、まだ手紙を出してから一時間と経っていない。いくらなんでも早すぎる。


 さてはヘレナさんも相当暇してるな? と考えたところで、ヘレナさんも私の返信の早さに同じように驚いている可能性に思い至った。なんならこの返信の異常な早さは私への気遣いかもしれない。暇すぎて仕方なかったとはいえ、手紙を受け取ってすぐ返事とか書くんじゃなかった。


 うおお……私が暇してるのがバレる……怠惰な生活してるのがバレちゃう……。


 ヘレナさんに怠け者と思われるのはまだいいけど、シャルマさんからの評価が下がるのはなんとしても避けたい。私はシャルマさんにとってのかわいい妹分のような存在でありたいんだー!


 今からでも返信の早さに言及すべきか。いや、それが薮蛇(やぶへび)になる可能性も……と様々な可能性を考慮した結果。変な言い訳はしない事に決定した。


 私が聖女になったのはみんなが知る事実だからね。

 まだ大した仕事もしてない私から見合い関係の話がなくなったのなら、来た手紙にすぐ返信できるくらいの時間的余裕があるのは至極当然。全く普通の事だよね、うんうん。


 …………とりあえず。返事のお手紙、読もうかな。


 悲しみに一句()んじゃう私だった。


「えっと、なになに……」


 と読み始めて気付いたけど、この手紙、シャルマさんの字だ。差出人はヘレナさんになってるのにどういう事だろうか。


 気にしつつもふんふんと読み進めていくと、急な招待の謝罪と、それに至る経緯の説明。そして改めて都合の良い日を教えて欲しいという言葉。……の後ろに、何故かそこだけ崩れた「都合がつけば」という一文が後から付け足したように書かれている。その下にはヘレナさんの字で、だいぶ砕けた文章が……。要約すれば「三日後で都合が悪いのなら二日後に来て欲しい」という意味の文言が続いていた。


 なんかもう、色々と察するよね。


 とりあえずお疲れのシャルマさん用に個別のお土産を用意するのが決定した。


 指定日が近日だったのも、どうやら闇水晶を渡した日から食事や睡眠を疎かにする不健康な生活を繰り返していたヘレナさんがようやく一段落して泥のような睡眠をとり、目覚めた瞬間から元気ハツラツ興奮しまくりで闇水晶の凄さを家の人達に説き回って仕事の邪魔をしていたのが原因らしい。


 要は話し相手になってヘレナさんを早急に落ち着かせてくれる人を熱望しているということだ。ヘレナさんの家族の人達が。


 ヘレナさんっていい大人なのに、割と残念なとこ多いよね。


 とはいえそれだけ喜んでくれたのなら頑張って採ってきた甲斐があったというものだ。素直に嬉しい。


 ……しかしそうなると。


「リンゼちゃん。ちょっとお手紙書くから、……いや、やっぱりいいや」


「……? そう」


 ヘレナさんへのお土産用に新たな闇水晶の遮光処理をお母様に頼もうかと思ったけど、同じ家にいるのに手紙で頼むのも何か違う気がする。かといって顔を合わせて頼むのは敗北感が……うむむむむ。


 どうせお母様は私の態度なんか気にしないだろうけど、まあ材料さえあれば数分でできる作業っぽかったし、別に明日でも……うん。別に急ぐ訳でもないし。これは逃げてる訳でも無いし!


 誰にでもなく言い訳をして、とりあえずヘレナさんへ日時の了承をする手紙を書くことにした。


 もちろん今度は、適度な時間を空けてから届けてもらおうね!


心優しいソフィアちゃん。

みんなが忙しそうに働いている中、自分一人に時間的余裕があることに罪の意識があるようです。

なら報復計画とか考えるの止めようね。

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