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我らがパーティーに心強い助っ人がやって来た。
何故か我が家にいたミランダさんである。
「ロランドくんとはお久し振りね?」
「これはミランダ様。またお逢い出来て光栄です。おや、素敵なバレッタですね。流麗緻密な装飾も見事ながら、深い蒼がミランダ様の美しさを実によく引き立て御髪が輝きを放っているように感じます。よくお似合いです」
「あら、どうもありがとう」
誰ですか貴方。
嘘、私のお兄様って外面こんななの? てか何歳だよお兄様、よくそんな言葉がスラスラと出てくるね!?
うあー、これはショックですよ。
私の理想だと思ってたお兄様が、こんな、こんな……いや、きっと演技だよね。内心いやいや言ってる可能性だってあるはず……くそう、それでもなんかヤダー!
一人で葛藤してたらミランダ様との挨拶を終わらせたお兄様が耳元に囁いていった。
「一番可愛いのはソフィアだと思ってるから、安心してね」
ちっがーう! 別に嫉妬してたんじゃないし!
てかマジ、マジでチャラい!
そんなプリティフェイスで甘い言葉なんて囁くんじゃありません!
だーもう……イケメンってほんと罪だな。そして私はチョロいな。顔あっつい。
気付いたらお姉様たちにニヤニヤされてるし。
ミランダ様こっち側でしょ!
そのいじられ回避スキルが羨ましい。
あの程度の褒め言葉は慣れてますってことですかー? この美人さんめ! 実際言われ慣れてるんだろうなー。美人だもんなー。
まあお姉様が元気になったみたいだから不問としよう。
やっぱり友人ってのは強いね。
「ではお姉様。改めて情報の開示をお願いします!」
協力者も揃ったところで、作戦会議である。
何をするにもまずは情報だ。
私の知らない間にお姉様の婚約者の座に居座った幸運な男の情報をはよう! ぷりーず!
「えー……話さなきゃダメ?」
「ダメです!」
可愛く言ってもダメだよ!
今回はお姉様の貞操の危機がかかってるんだからね!
「姉上、往生際が悪いよ。あとソフィアも何か勘違いをしてないかい? 姉上の婚約者は悪い人じゃないし、むしろ被害者というか……」
フンスと気合を入れていたのに、お兄様の優しい声を聞いてると勝手に心が穏やかになっちゃう。 悔しい!
でもお兄様にだったらいくらでも宥められたい私がいる。
お兄様のチョロインになりたい。
ていうか、あれ?
今聞き捨てならないこと言われた気がする。
「……お兄様も、お姉様のお相手の方をご存知なのですか?」
「勿論。会ったこともあるけど、いい人だったよ」
なんでじゃー!
なんだいこれは。もしかして兄弟の愛なんて初めからなくて、私が勝手に愛されてると思ってただけ? 弄ばれてただけなんですかあ!? ハブとかあんまりだ! 闇堕ちするぞ!
「お姉様っ!?」
「あー……ごめんねソフィア。ソフィアにバレたら、からかわれそうで……」
「ごっふ」
それは……っ、するけど!
お姉様の婚約者とか紹介されたら、お姉様に相応しいか確かめたり、お姉様の事をどれだけ愛しているか語らせたりして、その時ちょっとお姉様の恥ずかしがる顔が見れたりしたらなーとか、絶対思っちゃうけど!
そこは家族の愛というか、通過儀礼というか……ってならないですよね! 私の普段の行いのせいだもんね!?
自業自得ってつらいぃ!!
「うふふ……ごっふ、だって、あは、あははは……」
嘆く私の耳にミランダ様の楽しげな声が届いた。小声だけど、バッチリ聞こえてる。
いいよ、笑ってくださいよ。見事な自爆っぷりだったでしょう?
うふふ……あはは……。
〜今日の単語説明〜
「チョロイン」……チョロいヒロインの略。要は簡単に落とせる女の子。好感度を稼ぐ必要も餌を与える必要も無いお手軽さが売り。
「ハブ」……仲間外れの意。自分以外の家族が知らない間に家族旅行に行ってたとかそーゆーやつ。自ら一人を選ぶのとハブられるのでは精神に受けるダメージが半端なく違う。いじめいくない。