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お兄様上級


「――という事があったの。これって愛でしょ? めちゃくちゃ愛されてる証拠でしょ? お兄様ったら私がそんなに大事なんだーって胸がいっぱいになったよね! 私、お兄様の愛に溺れちゃいそう!」


「正直羨ましい! でもそんなロランド様が好き! ソフィアちゃんのことを考えてる時のロランド様って本当に優しい顔をしてるんだもの! そんなロランド様と結婚できるなんて今でも信じらんない! 先生すごい! ソフィアちゃん優しい! 二人ともありがと!」


「私こそアネットみたいな理解ある人がお兄様のお相手で嬉しいです! これからもお兄様の魅力について共に語り合いましょう!」


「ええ! ソフィアちゃんほどロランド様のことを知ってる人はいないから楽しみだわ!」



 ――場所は、アネットの私室。


 私の部屋よりは少しだけ狭いものの、貴族の部屋と較べてもほぼ遜色のない立派な部屋の中で。

 私たちはお兄様について熱く語り合っていた。


 発端は、家を出る直前お兄様に言われた言葉。


 それは――。


『もしソフィアが望むのなら、僕は今回の婚約を無かった事にしてもいいと考えてる』


 ――お兄様の中の一番は、変わらず私のままであるという宣言で。


 その言葉ひとつで私のつまらない嫉妬心は吹き飛んだ。


 なので憂いなく二人の結婚を祝福したよね!

 心さえ私のモノだと確約されたなら何処で誰とイチャイチャしてようと問題ないので!


 お兄様は私に嘘ついたことなんてないんだもんね〜!


 という訳で、すっかり晴れやかになった心のままにアネットの家へと突撃し、お兄様から頂いた今世紀最大の告白を自慢するついでに詫びシュークリームをずすいと進呈しておいたのがついさっきまでの話の流れである。


 なおシュークリーム様はとっくに我らの腹の中へと消え失せた。

 楽しいおしゃべりの最中ってなんで無限にお菓子に手が伸びるんだろうね。不思議でならない。


「それでそれで? ロランド様、今日はどんな感じだったの?」


 クッキーにたっぷりのジャムを乗せたアネットが目を輝かせながらお兄様の話をせがんでくる。


 私は快く情報を提供した。


「今日って天気が良いでしょ? だから廊下で見たお兄様がね……いつもの五割増で光り輝いてた」


「五割増!? そんなの眩しすぎて直視できなくなっちゃうじゃない!」


 きゃーっ! と両手で目を覆って楽しげな声を上げるアネット。


 この人は本当に……。もう……っ!


 実にお兄様の事を良く分かってるね!! 流石はこの私が名誉会長を務めるお兄様ファンクラブで【お兄様上級】と認めただけの実績を持つ魂の同士だよー!!


 うんうん、わかるわかるー。

 普段から身の内から光を発してる様にすら感じられるお兄様が廊下という絶妙に光の制限された場所で陽光なんか浴びちゃったら思わず拝んじゃいたくなるくらいの神秘性に包まれて見ているこっちの瞳が焼け付くんじゃないかと心配になるのは至極当然の感想だよね!

 尊くて素晴らしいのにあまりに尊すぎて対策無しには直視もできないとかお兄様はもう人を超え神をも超えたアイドル神とでも名乗ればいいんじゃないかと思うね。伝説を超えた神話級のアイドルとして未来永劫語り継がれる存在になるとかでもそうしたら国中の人がお兄様に貢ぎ始めて収拾がつかなくなりそうだからやっぱり今のままの方がいいのかもしれない。だってお兄様はアイドルの前に私のお兄様だから! きっと私の為ならアイドルだって辞めてくれるハズ!


 ああっ、この溢れるお兄様への愛はどう表現したらいいのだろうかっ!!


 とりあえず口から垂れ流してみた。


「直視する必要なんてないんだよ。ただ、全身でお兄様を感じていればいいだけ。目で見てないくらいでお兄様の姿が見えないなんてあり得ると思う? いつもの五割増素敵なお兄様が目の前にいたとして、本当に目を瞑っただけでお兄様の姿が分からなくなると思うの?」


 試すようにアネットを見れば、即座に頷きが返ってくる。


「ないわね。私にもハッキリと見えたわ。陽の光を浴びて美男子度に磨きのかかったロランド様がソフィアちゃんにいつもの微笑みを向ける姿が!! ああっ! 素敵すぎるッ!!!」


 喝采を上げながら身をくねらせるアネット。


 流石は【お兄様上級】。無事にお兄様の姿がまぶたの裏に見えたようだ。


 ちなみに今アネットがやって見せた現実のお兄様が取るであろう行動を脳内で完全にシミュレートする技術、アネットの他にはお兄様のクラスメイトに一人できる人がいるだけの実に希少な技術なのだ。


 お兄様ファンクラブ内ではこの技術を習得してやっと【お兄様上級】。お兄様ファンクラブのみんなが憧れるこの能力を得るのは本当に難しいことで、正直なところ、お兄様と同棲もしてないのにできる人が二人もいる事が既におかしい事態と言える。


 でもほら、有名な言葉にもあるじゃない。


 愛は不可能を可能にするっ! ってね!



 愛が起こした奇跡。

 その純粋な愛情は、誰にも止めることなんてできないんだよ!!


ちなみにソフィアは【お兄様超級】。

……まあネーミング見ても分かる通り、称号与えてるのもソフィアなんですけど。

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