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おしごと完了


 楽しい時間とは過ぎるのが早いもので、子供部屋での至福のひとときはあっという間に終わってしまった。


 でもいいんだ。たっぷりと堪能したから。


 子供特有の高い声に、舌っ足らずな話し方。

 魔法なんかでケアしなくてもすべすべツルツルな天然物のタマゴ肌。いっそ甘くすら感じられる柔らかな体臭。感情をストレートにぶつけてくれる素直さと、それに反応してるだけで私まで若くなった気分にしてくれるセラピー効果。


 これからは子供部屋を「心が若返る場所」とでも称して解放したらいくらでも子供たちの面倒みたいって人が出るんじゃないかなと思えるくらいには素敵な空間でした。


 ソフィアさん大満足!


「聖女ちゃん、お疲れ様。報告は受けているわ。例年までと比べて子供部屋は見違える程の秩序を保っていたと担当の者が驚いていたわよ」


 王妃様も納得のいく成果になってたみたいで良かったー。

 私も満足、依頼主も満足。そして子供たちも満足とは完璧な結果じゃないかな!


 子供部屋にいた子供は五歳から十一歳までとはいえ、年齢が高めの子は初めは大人の方のパーティに参加して集中力が切れたらこちらに送り込まれるような形になってたからね。最後の方にはおっきい子も何人か増えて、知り合いの小さい子の面倒を見ていてくれたりもしてたけど、子供部屋の秩序という面で見るなら最後にちょろっと来たくらいじゃ役には立っていたとは言い難い。

 年齢が低い子ばかりで仲良しグループを振り分けてもいない前半戦が一番大変だったんだから、その苦労を乗り越えた私にはもっと格別の褒め言葉があっても良いと思うの。


 みんないい子でしたよ、と言うのは簡単だけど、親の目が届かない場所で大きな問題が起こらないように子供たちをコントロールするのはそれなりに苦労したんだからね。その苦労を見ていたはずの数少ない大人が「驚いた」の一言で済ませるのはどーなんだと思うんだけど、王妃様が疑問に思ってないってことは、改善されはしないんだろうなぁ……。


 こーゆー時に良い仕事しても感心すらされないんじゃ【聖女】なんて肩書きも思ったより効力なさそう。その方が嬉しいってのがまた、なんとも複雑なところではあるんだけどね。


 本来頼れるはずの担当さんがそんなだから、アーサーくんの綿菓子大作戦で和やかな空気ができてたってのはとても助かった。

 本人は上手く綿菓子を作れるように何回も練習したかったってだけみたいだけど、その思い付きのお陰で私は子供たちの目の前で珍しいお菓子を作る側に回り、「美味しいお菓子も作れる素敵なお姉さん」という地位を確立できたので! 子供たちの輝かしい尊敬の眼差しを浴びる事ができたので! ので!!


 ほんとにもー、アーサーくんには感謝しかないです、はい。今度お礼に黄金飴をあげようね。


「お役に立てたのなら何よりです。アーサー様が子供たちの関心を上手く引き付けてくれていたのでとても助かったんですよ」


 もちろん今できるお礼だって忘れません。


 アーサーくんって王妃様のこと大好きだからね。

 私のお陰で褒められて、私への好感度を爆上げするといいと思う。


 あれよ、情けは人の為ならずってやつ。


 アーサーくんに綿菓子機をプレゼントした昔の私マジ慧眼。


「そう、あの子が……。ふふっ」


 アーサーくんの活躍を聞いて、王妃様が喜ぶ。


 王妃様が喜ぶとアーサーくんが喜ぶ。アーサーくんが喜ぶと私が喜ぶ。


 とても素敵な連鎖だと思う。


「アーサー様はとてもいい子ですね」


 とりあえず追加でアーサーくんを持ち上げておいた。


 別に全てがおべっかという訳でもない。実際にアーサーくんはとてもいい子だ。


 まず王族だけあって見た目が文句なく良いし、思春期特有の反抗的な態度、特に私にお返しをされると分かってるのに頑張って反抗し続ける時の意地と怯えの入り交じった表情とかもう最高にそそる。うふふふと意味深にずっと笑いかけたくなっちゃうくらいにトキメク。本気で怖がられたら嫌だからやらないけど。


 ブスとかバカとか意地悪も言われたりするけど、私が本気で落ち込んでる時には気遣ってくれたり、優しく慰めてくれるのを知っている。口や行動はどーしても生意気だけど、私を女の子として見てくれてることも知っている。


 まあ要はツンデレってことだね。


 アーサーくんはツンデレさん。

 ツンツーンと威勢よく警戒してるフリしてる裏で、実際にはちょこっと褒めただけで内心デレデレ、尻尾をブンブン振っちゃうようなかわいい子なのだ。


 アーサーくんのちょろ可愛いさ、わたし好きだよ。


「ええ、自慢の息子です。これからも仲良くしてあげてね?」


 王妃様からも嬉しい言葉を貰っちゃった。


 王妃様公認の仲良しさんともなれば、私は合法的にアーサーくんとイチャイチャできる。これは素晴らしい免罪符だ!!


「もちろんです」


 心からの笑顔で受ける私に、王妃様は深い笑みを向け続ける。


 じっと。


 ずっと。


 にーーっこりと。



 ……あれ? これひょっとして釘刺されてる?


 まさかね。


幸せの余韻を噛み締めてるソフィアに怖いものなんてなかった。

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