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フェルと遊ぼう


 楽しい時間が過ぎるのは早いものだ。



 アネットとお兄様の話で盛り上がっているとあっという間に時は過ぎ、気付けば帰らなければならない時間が近付いていた。


「またご入用の物があればお気軽に申し付けて下さい」


「はい。それじゃあ、また」


 別れの挨拶を交わして家に帰るとちょうど良い時間だったので、すぐに食事と入浴を済ませ、楽しい楽しい夜の自由時間が始まった。


 今日はアネットの所に行ったから色々あるんだよね〜ふんふふん〜♪


 ……とご機嫌な状態のうちに軽い復習と予習を済ませ、順番を間違ったせいで起きる「あれ!? もうこんな時間!?」という悲劇を回避しておく。


 私はご褒美は後に取っておくタイプだった。


「さて、リンゼちゃん。遊ぼうか」


「今日は何をするの?」


 机の上から勉強道具を片しながら、リンゼちゃんも興味ありげな反応を示す。


 リンゼちゃんは私とアネットの関係を知っている上に私の前世の世界を知っているので、前世にあった道具をお披露目する相手として最適なのだ。


「今日の一番手を飾るおもちゃは……これだぁ!!」


 ばばん! とアイテムボックスから取り出したのは、今日仕入れたばかりの新商品、(たこ)だ。それも室内用のミニ凧だった。


 見慣れたようで見慣れない物を前にして、リンゼちゃんが持ち上げたり、ひっくり返したりしながら検分している。その度に凧から伸びる細い紙が揺れて、その動きに釣られるようにフェルの頭がピクっ、ピクっと反応するのが面白い。

 今にも飛びつきたいのを我慢しているのがバレバレだった。


「……これ、凧かしら? 随分と小さいけれど」


 怪訝そうにするリンゼちゃんに我が意を得たりと大きく頷く。


 リンゼちゃんの言うように、この凧はとても小さい。私の手のひらと同じくらいのサイズしかない。

 ミニ凧にしてもかなり小さいそれは子供用ではないし、もちろん私用でもない。


「これはこうして使うんだよ。おいで、フェル」


「キュ?」


 机に置かれた凧をツンツンしたりクンクンしてたフェルが名前を呼ばれたのに反応して寄ってくる。


 アイテムボックスからタコ糸を出してリンゼちゃんに凧と結ぶようお願いし、その間に私はフェルに服を着せてあげた。


「で、この糸を、ここに……」


 革の胴当てのような簡易な外見をした服の背中側に空けられている穴に、キュッとタコ糸を結びつける。これでフェルと凧はタコ糸で繋がれ一体となった。


「あっちの端まで走ってみて」


「キュウ!」


 机の上にスペースを作って走りやすい場所を確保してやると、トトトッとフェルが勢いよく走り抜けた。その勢いで背に結えられた凧が上がる。


「……キュウ?」


 指定された場所まで到達したのに少し遅れて、コン、と軽い音を立てて凧が落ちる。それを不思議そうに見つめるフェルには、何が起きたのかがよく分かっていないようだった。


 よろしい。ならば次の作戦だ。


「じゃ、今度はあっちの端まで走ったら、机から勢いよく飛び降りてみてね」


「キュッ」


 話を聞いてすぐに行動に移してくれるフェルが優秀すぎて、今すぐ誰かに自慢したくなってくるね。


 先程と同じように走り出したフェルは背中で凧を上げると、バッと大きく両手を広げ、勢いよく机から飛び出した。


「キュッ?」


 思い描いた動きと違ったのだろう、ピンと張ったタコ糸がフェルの身体の勢いを殺し、やや緩やかな動きで空中に留まらせる。

 落ちると言うには遅い速度で床に降りると、フェルは何かを考えるようにジッと固まって動かなくなった。


 ……もしかして、怖かったのかな?


 高い所から降りるのも平気だし問題ないと思ってたけど、自分の想定していない動きを無理やりさせられるというのは考えてみれば怖いことかもしれない。それも自由のきかない空中でだ。


 謝るべきかなーと考えていたら、唐突に再起動したフェルが私の足を登ってきて肩から机にジャンプ。そこから更に机の端に移動し、先程と同じように大きく身体を広げながら緩やかに落ちていった。


 どうやら気に入ったらしい。


「楽しい?」


「キュウ!」


 繰り返す度に一連の動きが早くなるフェルの姿に癒されながら、私はリンゼちゃんにお茶のお代わりとお菓子を要求し、ゆったりとした時間を過ごす。


 アイテムボックスに納められている他の玩具を使った時の反応を想像して、私は笑みを深めたのだった。


よく食べよく寝てよく運動しましょう!

お菓子食べてばっかりじゃいけませんよ!

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