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同級生プレイ


 今日はとってもいい日だなって、ソフィアちゃんは思うのです。



 年の離れた想い人がいれば、誰もが一度は想像する事だろう。

 もしも愛しのあの人と同級生だったなら……と!


 授業中に肩を寄せあって、先生から隠れてコソコソとお喋りをして……それでそれで、内緒話が先生にバレて叱られちゃった後に「怒られちゃったね」「怒られちゃったな」って二人でくすくす笑い合ったり……なんかしちゃったりして!!


 そんな夢の世界に、いま私は存在しています。


 授業中。先生の話し声。隣りには愛しのお兄様。


 座る私の真横に無警戒に置かれた艶かしい手指からは、誘う色香が目に見えるようで。

 意を決し、偶然を装いながらも手の甲で少しだけ触れ合わせてみれば、お兄様の手はまるで繁殖相手を見つけたカブトガニのように私の手に覆い被さってきて、ガッチリと掴んだ指は私の事を決して逃がさないと表明しているかのように、ってああああああ!!!! 指ィ!! 指が中にっ!!? 中はえっちすぎますお兄様ぁぁああああ!!!!


 ……ふう、危ない。あやうく手のひらを撫でられる感触だけでゴートゥーヘヴンしてしまうところだった。流石お兄様の撫でテクは極上品……んんっ♪


 っとと、いけないいけない。

 授業中にお兄様のクラスメイトに囲まれてとか、そんな特殊な状況が癖になったら困るからね。ちゃんと自重しないと……うむ。


 ……けれど、この夢の様な機会も、もうすぐ無くなっちゃうんだよね。


 お兄様は三年生。

 春を迎える頃には、学院で会うことはもう、できない……。


 ――だから今のうちに、いっぱい甘えとかないとね!!


「それでですね? クラスのお友達にお兄様の事を聞かれたので私、お兄様の良いところをたっくさん話しておきましたから!」


「はは、ありがとう。でもねソフィア、少しだけ声を落として……」


「え、なんですか? よく聞き取れなかったのでもう一度お願いします。もっと口をこう、耳元に寄せて……ね♪」


「ソフィアさーん。雑談は後にして下さいねー」


 お兄様とこれでもかとイチャイチャしていた私にヘレナさんの注意が飛ぶ。


 素直に授業を中断させてしまったことを詫びた後、私はお兄様と顔を見合わせて、ひっそりと笑みを浮かべた。


「ほら、ソフィア……」


「えへへ、ごめんなさーい♪」


 これこれぇ!! これがやりたかったんだよひゃっほーい!


 ヘレナさん、私がお願いした時は「そりゃ授業中に喋ってたら注意はするけど……」って心底理解できないみたいな顔してたのになんだい、やればできるじゃないですか! むしろ完璧じゃあないですか!!


 ナイスアシストに感謝しつつ、口に人差し指を当てて「しーっ、ですね?」とお兄様に向けて小声で問えば、お兄様も私の真似をしながら「しー、だよ」と優しい笑みで応えてくれちゃうし。


 もうね、鼻血噴くわ。


「かわいい……」


「あの笑顔は無理でしょ」


「何されても許しちゃうよねぇ」


 そんなお兄様の極上お茶目な一面は、お兄様のクラスメイトでさえも虜にしていた。男女問わず、メロメロに魅了しまくっていた。


 わーかーるぅー! ちょーわかるぅー!

 お兄様がかわいすぎて笑顔が素敵すぎて全てお兄様の思うがままなすがままにしてあげたくなっちゃうの超わーかーるぅー!!


 さすがお兄様のクラスメイトの方々はお兄様の魅力をよく分かっていらっしゃるっ!


 そう! お兄様は凛々しくて格好良くて頼り甲斐があっていつでも余裕があってと褒めるべき点が多すぎてついつい男らしい面にばかり目がいってしまいがちだけど、だからこそたまーに見せてくれる子供っぽい一面がそりゃもう絶大なる破壊力をもって心臓にずぶしゅとぶっとい矢を突き立ててくれるんですよねぇ〜〜!!!


 はあ〜お兄様好き……大好き……。愛しすぎて溶けちゃう。


 真面目に授業を受けるお兄様の横顔を眺めているだけで、私の心拍数は勝手に上昇してゆく。


 ああ、お兄様……横顔もステキ……。


「ずっと見てても飽きないよねぇ」


「ホントに好きなのが伝わってくるよねー」


「他にはなにも目に映ってなさそう」


 ねー、本当に見てて飽きない……。


 お兄様はとっても真面目で授業もかなり集中して聞いているから他の事が目に入ってなさそうというのには同意するけど、でも勉強が好きというのは……うーん、嫌いとも聞いてはないけど、どうなんだろう?


 まあなんでもいいか。

 どちらにしろ、お兄様が自慢のお兄様であるという事実は変わらないしね!


 横顔を見つめ続ける私の視線に気付いたお兄様が、柔らかく笑って小首を傾げる。


「ん、顔になにか付いていたかな?」


 その仕草を目にしただけで、またドクンと心臓が跳ねた。


「いいえ。少しその……見蕩れてしまっていました」


 そう返事して視線を逸らす。


 あー……、顔があっつい。

 お兄様、前世は女性を誘惑するインキュバスだったりするんじゃなかろうか……?


自身に向けられた言葉さえも兄に向けられたものと錯覚するほどに兄を神格化している幼き少女。

その盲目的なまでに恋する姿は、彼女のファン達に大いなる潤いを齎したとか。

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