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探偵の目は誤魔化せない!!

   

 女の子はお喋りが好きだ。


「この人は?」


「この人はねー。本人は押せばイケそうなんだけど、御両親がくっつけたい相手がいるらしくて鉄壁らしいのよ」


「この人は?」


「これは有名な遊び人。それでもいいなら、って感じかなぁ。私たちが狙うような相手じゃないわね」


「あれ、この人って……」


「ええ、この土壇場で婚約破棄された……。一応載せてはいるけど、またすぐにくっつくんじゃないかってみんな言ってるわね。その人とお相手の人、しょっちゅう喧嘩する仲らしいから」


 今日はなんでも、もうすぐ卒業する現三年生の中で婚約者が未定の人リストが遂に完成したのだとか。

 で、みんなで集まって情報を精査し、良い人が売れ残っていないかを吟味していると、そういうわけで。


 みんな凄いよね。違う学年のことなのに完全に人間関係把握してるんだもん。


 私なんかクラスメイトの何人が今フリーなのかすら把握していないというのに。この差は一体なんなのだろうか。


「でもさー、ここ! この二人! まさかこの二人が付き合ってたとは思わなかったよねー!」


「分かる!! だってお互い別の人と噂立ってたもんね!? ほんっと意外!!」


「あら、そのお二人は最近お付き合いを始めたばかりのはずですわよ? なんでもミゼッツ様の恋の相談相手が……」


 ……やっぱり興味の差だろうな。


 この一年学院で過ごしてきて、数回は顔を見かけた事があるかも? 程度の人。そんな人の恋愛事情にまでご執心とは流石にならない。


 そりゃ恋の話に興味が無いわけじゃないけど……せめてどこかに知り合いが絡んでないとなぁ。

 ちょっと話に入る勇気が湧かないというか、聞いてるだけでいっぱいいっぱいになりそうというか。


 こっちの世界の恋バナ、元の世界の高校より数段生々しくて迂闊にノれないんだよね。


 私ほら、穢れを知らない乙女なもんで。


「――そして二人は抱き合いながら、同じ部屋へと消えていったのだった……!」


「いやそんな詳しい話どこから仕入れたのよ。また大げさに言ってたりしないでしょうね」


「ありえない」


「ふっふっふーこれは本当! だって妹さんが話してるのをこの耳で直接聞いたもんねー♪」


 ていうかさっきからプライベートなハズの情報の筒抜け具合がヤバい。


 そりゃ貴族の家は使用人やら出入りの商人やら噂の出処になりそうな人には事欠かない環境ではあるけど、それにしたって知り過ぎだと思う。


 彼女は今すぐにでも探偵としてやっていけるんじゃないかと思うね。


「それに三年と言えば、外せないのはやっぱりー……?」


 と、ぼんやり眺めていたのが悪かったのだろうか。

 楽しそうに話していた彼女の顔が不意にこちらを向き、私とバッチリ目が合ってしまった。


 もうね、心の中で絶叫ですよ。


 やめて、私の秘密をバラさないでぇ! 私に出来ることならなんでも……はしないけど、それなりの事なら手伝うからー!! と叫び出したい気分。


 意味深にニヤリと笑われるのって心臓に悪いよね。


「ロランド様のことは気になるよねぇ〜!」


「「ねぇ〜!!」」


 そして予定調和のような合いの手と共に話題に上がる、お兄様の名前。


 覚悟を決めるのに、さして時間はかからなかった。


 ごめんなさいお兄様。ソフィアは今日、悪に屈します。

 己の身かわいさに、お兄様の情報をある程度渡してしまうことを、どうかお許し下さいませ。


 本当は、本当は私だけが知ってるお兄様の秘密なんて、何があっても話したくなんてないんだけど! ……でも!!


 私の秘密がお兄様の耳に入る可能性を考えたら、私にはもう、この道しか……っ! くっころ!


 お兄様に夜のひとり遊びとかリンゼちゃんと微レズって遊んでるのとか死体弄りとかその他もろもろあれやこれやがバレてしまったらっ、私っ! お兄様と顔を合わせられなくなってしまいますので!!!


 恐るべき未来を想像してしまい、自然と身体が震えてくる。


 だが、私は戦わねばならない。

 お兄様の妹として、せめて果敢に戦わねばならない!!


 私は弱気な心を隠し、キッと(まなじり)を吊り上げ、強気の表情を作った!!


「……おっ、お兄様の秘密は! 安くはありませんからねっ!?」


「えっ、やっぱり何か秘密があるの!!?」


 しまったああああああああぁぁぁ!!! まんまと餌を投げ入れてしまったああああああああぁぁぁ!!!


 あああ、目が爛々としてるぅ! 手もわきわきさせてるぅ!! もう完全に捕食者の目だぁ!! こわいよう!! お兄様助けて!!!


 脳内が大パニック状態になりつつも、私はお母様直伝の鉄面皮を被り、でもやっぱりちょっとだけ怖かったので、そっと少しだけ顔を(そむ)けた。


「オニイサマ、秘密ナイヨ」


「あるのよね?」


 顔を背けた先に回り込むように、にゅっと顔が生えてきた。


 私は視線から逃れるように、更に顔を背け……あれ、人数増えてない?


「ソフィア」


「逃げられると」


「思ったのかな〜!?」


 気付いた時には、前後左右全ての逃げ場が失われていて。


 私の敗北は決定づけられていたのだった……。


「……ソフィア、また捕まってるわね」

「あれ助けなくていいのか?」

「別にいんじゃね?あれで本人楽しんでるトコあるしな」

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