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褒められました


 ある日、屋敷の廊下でばったり会ったお仕事中のお父様に、こっそりと呼び出された。


 お忙しいハズのお父様が、何故お仕事中に?

 何故コソコソする必要があるのだろうか?


 その答えは実に単純明快だ。


「ソフィアは本当に優秀だなあ!」


「ありがとうございます、お父様」


 二人きりの部屋で鬱陶しいくらいに褒められながらでも、簡単に推理することが出来る。


 そもそもお父様が家の中で怖がるのって、お母様くらいしかいないよね。



 先日、学院の試験で王子殿下を抑えてトップをゲットしちゃった私ですが。世間一般から見たら、大分ありえない事らしいんですよね、あれ。


 別に女が手を抜けーだとか、一位なんて取ってんじゃねーよ的な話ではなく。


 今まで。学院の歴史を紐解いてみても。


 王族がいる年は、この学年末の試験で最優秀の成績を修めるは常に王族だったと、そーゆー話で。


 その連綿と続く「王族って超優秀じゃーん!」な流れをぶっつりと断絶したのがこの私な訳で。


 今まで別に強制してたわけじゃないけど、常に歴代の王族は期待に応えてきたのに、今年の王族は……、ヒースクリフ様は……、ってなっちゃってる訳で。


 そりゃお付きの子に「お前ふざけんなよ」な目で睨まれても当然ですよね。

 王子様マジごめん。


 この「王子様首位陥落事件」を受けて学院の偉い人が集まって話し合いをしてる〜なんて噂まで出るくらいに、事態は深刻だったらしいのですよ。


 でね。


 私がこーゆー失敗すると、烈火の如く怒る人がいるじゃん。


 クールぶって、さも「私は怒っていないのですけど」みたいな顔しておきながら、ネチネチネチネチとやたら長いお説教をかましてくる悪魔みたいな人が。

 反論の一切を許してくれない上に人の心を読むとかいう裏技まで駆使して私を完璧にやり込めてチクチクチクチクと言葉責めしてくる悪の大王みたいな人がっ!!


 あの「私こそが淑女」みたいな人ね。


 私が王子様を抑えて首席になったよ、って教えたらね。


 夕食の途中だったのに、顔真っ青にして退席しちゃったの。それも私に一言も怒りもせずに!!


 ……自体の深刻さを把握したよね!!!


 だから私、折角一番取ったのに親に褒めてもらってないんだよね。

 あ、もちろんお兄様にはいの一番にご褒美のなでなでしてもらったけどね?


 だからお父様に褒められるのはけっこー嬉しかったりする。


 例え髪の毛をぐしゃぐしゃにされよーとも。


 例え調子に乗ったお父様に、膝の上に座らされていよーとも。


 嬉しいは嬉しい。それは本当。


 ……………………。


 でも、世の女の子が「おとーさんうざい」って言う気持ちはとてもよく分かった。


 ……それに確かに、ちょっとだけ独特な刺激臭するね。

 男の人の臭いといえばそれまでだけど、まあ、汗の臭い、かなぁ、これは……うん。


 まあクサイね。


「お父様、お仕事はいいのですか?」


 そろそろ満足するまで撫でたかなというあたりでお父様に声を掛ける。


 私も長年撫でられ続けてきた経験があるので、なでなでの感触の変化からその人が今どんな気持ちで撫でているか、大体は推察できるという特殊技能を身につけているのだ。


 ちなみに今のお父様は「ああ飽きない! ずっとこうしていたいけど、でも仕事が……」みたいな迷いのあるなでなでだった。

 愛はしっかり篭ってたので七十点をあげよう。


「ん、むぅ……。いや、そうだな。お仕事頑張らないとな!」


 最後にぐいっと一撫ですると、お父様は私を膝の上から下ろした。


 なでなでってすごいよね。撫でる方にも撫でられる方にも活力与えちゃうんだもん。夢の永久機関だよ。


 撫でられてちょっぴり機嫌良くなってなかったら、今の両脇に手を差し入れてまるで子供のように下ろされる動作には確実に苦言を呈していたよね。

 みんな私のこと子供扱いし過ぎだと思う。


「じゃあソフィア。また後でな」


「はい。お父様も、お仕事頑張ってくださいね!」


 ……まあ、子供扱いされるのをいいことに、私も子供らしく見えるように振舞ってるところもないとは言わないけど、さ。


 お父様なんか特に、子供らしくきゃるん♪ って甘えるだけでなんでも言う事聞いてくれる感じになるんだもん。到底やめられないよね。


 そういう意味でいえば、私を一番大人扱いしてくれるのは実はお母様なのかもしれない。


 ……どうにもお母様には着せ替え人形にされてたイメージが強いんだけど、今では多分、そんなこともないハズだ。うん、きっとそう。


 私は思わず自分の身体を見下ろした。


 まあ小さいよね。可愛いよね。

 どこがとは言わないけど。当然全体的な話だけども。


 こんな子がいたら、私だって間違いなく可愛がって、子供扱いして、できることなら着せ替えさせて楽しみたいと思いますよ。


 つまり背か。背が伸びればいいんだな。


 結論を得た私は、今日は甘いホットミルクを飲もうと心に決めたのだった。


この前日、同屋敷に住む撫でプロの元を一人の男性が訪ねていたとか、いないとか。

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