恥ずかし空間から脱出しよう
我に返った、恥ずかしい姿を晒しまくった大人たち。
あのどうしようもない空気をどうしたかって?
私しーらない。
フェレットと遊んでたもん。ねー?
いやいや、本当にこの子達を連れてきて良かった。ペットにゴリ推した私、英断だった。
困った時は、ペットと遊ぶ!
私、遊んでましたから! 何も見ていませんから!
これに尽きるね!
……そーゆーことにして欲しいね!
「あの…………ソフィア」
無理なのは知ってるけど!
「はい、なんでしょうかお母様」
普段は話の流れに身を任せてふらふらするのを楽しむ私でも、こればっかりはゴメンだよ!
こっちまで、恥ずかしいどうしましょ、な空気を醸してたらなんか巻き添えくらいそうだし。
一人だけ被害に遭ってないことに気付かれてはイケナイ。
こんな時は、さっさと空気を変えるべし。
雰囲気を変えるには、雰囲気の流れに逆らって、ドドーン! と新たな雰囲気で場の中心に居座るのがいいのだ。
つまりマイペースが一番。
いつも通りとも言う。
私が纏う空気は、私が決めるっ! キラーン。
「ここでの用事は済みましたから、帰りましょうか」
「はい」
うん、お母様も大分持ち直してきたように見える。
内面はまだ恥ずかしさですごいことになってそうだけど、外面だけは完璧だ。さすがお母様だね。
「えっと……帰っちゃうの?」
ヘレナさんが、止めたいけど止めにくいみたいな感じで呼び止めた。
お母様が持ち直しそうなんだから、早急に恥ずかしげな仕草を止めてほしい。
「また、来ますから」
二人してチラチラ私見るのやめてよう。
なんか雰囲気と相まって、二人の情事を覗いちゃった(はぁと)みたいな変な気分になるからっ!
呼ばれたから来ただけだしっ! あとは自爆みたいなもんじゃん!? 私は悪くないでしょ!
なにこの居た堪れなさ。理不尽すぎる。
「ヘレナさん、研究、応援していますね」
「……! そうね! 任せて!」
軽い気持ちで放った一言がクリティカルヒット。
一瞬で甘ったるい雰囲気消し飛んだ。
研究って単語、こんなに効くのか。早くこうしとけば良かった。
見た目に騙されたけどカイルと同じ扱いでいいとか残念な美人さんだ。
剣術バカと研究バ……一筋さん。
案外相性いいんじゃないか? 将来引き合わせてみたら、結婚なんて可能性も……や、ヘレナさんお母様と同世代だもんね。やっぱなしで。
女教師と男子生徒。犯罪臭しかしない。
別れることを優先したら実験の結果を詳しく聞く時間が無かったけど、後でお母様から聞けばいいよね。
割と危機的状況だったけど、無事に私に矛先が向かうことなく脱出できた。
しかも収穫はお母様とヘレナさんの恥ずかしがるかわいい映像とお母様の面白そうな過去に繋がるキーワード。
いやあ、来て良かった!
◇
「あの……ソフィア」
「はい、なんでしょうお母様」
帰り道。
馬車の中で二人きりになったらまたお母様がもじもじしだした。
さっきのことを口止めするか迷ってるのか、はたまた問い質されないでいるのが居心地悪いのかな?
「その……いえ、なんでもありません」
照れるお母様かわゆす。
ヘレナさんのメガネは残念メガネ。
「カッコイイから」と装備したのに内面はいつまで経ってもカッコよく成れず。
ただ、女子生徒からの評判は良い。