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蘇生の方法


 ――恋をしたこと、ありますか?


 恋をすると、寝ても覚めても同じ人の顔がずっと頭に浮かんで、何にも手がつかなくなるらしい。そうクラスの友人が言っていた。


 だとしたら、私は今、恋をしているのだろうか?


 実は……家に帰ってからもずっと、カイルのことが頭から離れないんだよね……。


 これって、もしかして……?




「その判断は正しかったと思うわよ」


「でしょでしょー!」


 リンゼちゃんからのお墨付きを貰って、私はちょっぴり肩の荷を下ろせた気分だった。


 もーねー、帰ってからもカイルのことが気になって気になってしょうがなかったんだよー! あ、もちろんご飯は美味しく頂きましたけどね?


 カイルの何が気になっていたか。


 それはもちろん、人体改z……ごほんごほん。

 時間の経った後から「やっぱりあれ、少しばかりやりすぎちゃったかも……?」と不安になってきた、魔力を扱いやすくする為のソフィアちゃん式マッサージについてである。


 ぶっちゃけ行き当たりばったりとぶっつけ本番のオンパレードだったから、今になって成功の実感が湧いてきたというか、確認不足に気付いてきたといいますか。

 後遺症の影響とか考えずに望む効果だけを追い求めちゃってたので、よくカイル生きてたな……みたいな点も、まあ、その……ねえ?

 ないとは言えないかもしれない。


 だからもしかすると、今頃冷たくなってたりする可能性も……、あ、ある……かな? どうかなっ? なんて若干不安になったりもしたので、カイルの安否確認ついでに私の施術に問題はなかったのかをリンゼちゃんに確認してもらっていたという訳だ。


 その結果。


 私の懸念は払拭された。


 やったねですよねさすがは私! リンゼちゃんが大丈夫って言うならきっと大丈夫!!


 心労なんかうっちゃってポーイ! な流れのままに気になってた点をあれこれ質問していたら、リンゼちゃん恒例のお勉強タイムと相成っておりましたとさ。


 リンゼちゃんの神様知識、地味に役立つから好きだよ!


 というわけで本日のお題ドン。

 今日は「蘇生に必要なもの」について話してくれたよ。


 実はカイルの蘇生を成功させたその日の内に、家でも試してたんだよね。その辺で捕まえた鳥さんの蘇生。

 まあ蘇生と言いつつ失敗しちゃったから、結局はただの無益な殺生になってしまったんだけども。


 で、それが何故失敗したのかって話なんだけどね。

 どうも一度死体となった物体にはもう魂が宿っていないから、肉体だけ治してもどうしようもないという事らしいんだよね。


 その話聞いて、死体に残留してる魔力の特徴覚えるじゃん。同じ波長の魂検索して捕まえてくるじゃん。死体に突っ込むじゃん。


 当然のように蘇生しないよね。

 っていうか折角入れてあげた魂さん、死体からぬるっと抜け出てるし。


 で、リンゼちゃんに聞くじゃん。言われた通りに魂が抜け出せないよう魔力でコーティングするじゃん。肉体の覚醒を促すために電気ショックかますじゃん。焼き鳥の出来上がりじゃん。


 命って、なんて儚いんだろ……ってなったよね。


 いや別に、本当に電気ショックで焼き鳥作ったわけじゃないのよ?

 ただその、ちょっと威力が強かったのは確かみたいでね? 肉は焼けなかったけど魂は焼けちゃった的なね? むしろ焼けたというか、消し飛んだというか……。


 魂って魔法効くんだー、って感じだよね。


 もちろん本来はこんなに脆くないし、なんだったら幽霊と呼ばれるよーな霊魂ですらもうちょっと耐久力はあるらしいんだけど、肉体から離れたばかりの魂はアストラル体だかいう魂の殻? が薄い状態で、吹けば飛ぶし触れれば崩れるくらいの弱い状態なんだってさ。


 だからもっと丁寧に死体に突っ込んでー、丁寧に魔力でコーティングしてー、丁寧に刺激を与えれば理論上は蘇生ができる。らしい。リンゼちゃん談。


 丁寧に刺激ってどうやるんだろね。


 とはいえ私も一度は成功させてるわけで、何度か練習をすればコツみたいなものも掴めてくると思う。


 ……でも、それまでに死体をどれだけ弄り回す必要があるのかと考えれば、やる前から気分が落ち込むのも仕方のないことだと思うの。


 だからね。


「リンゼちゃん」


「なに?」


 ちょいちょいと手招きして、寄ってきたリンゼちゃんをギューッ。


 腕にすっぽり収まるこの感じ。

 何度やっても飽きないね〜。


「……なに?」


 声がちょっぴり怒っているようにも聞こえるけど、これはリンゼちゃんなりの照れ隠しだから。だからまだ大丈夫なハズ。うん、きっとそう。


 リンゼちゃんは本気で嫌がるとすぐ手が出てくるからね。口撃も容赦がなくなるからね。

 こんなのはまだまだ可愛いもんだ。


 幼女メイドの健気な抵抗を存分に堪能しながら、私は今日も、ヨル(女神)がいない自室の平穏を深く、そりゃもう深ーーく噛み締めていたのだった。


 ヨルも外見変えられるなら、リンゼちゃんと同じにしたらいいのにね?


なお蘇生に失敗した生肉は合掌されたのち大自然にご返却されたようです。

諸行無常。

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