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マッドマッサージスト、ソフィアちゃん


 カイルを落ち着かせるのは意外と簡単だった。


 嘘です。結構手間取りました。


 こーゆー時、中途半端に視えるってのは面倒よね。



 カイルが突然暴れだしたのは、急に魔力視ができるようになった混乱からで間違いなかった。


 ならばその混乱をどう収めるか?


 私が発しているドデカい魔力と同じものが自分の身体からも湧き出ているということを自覚させ、今()えているモノが害のない「魔力」であるということを分からせれば良い。


 ……と、そんなふうに思ってました。


 はてさて、ここで問題です。

 カイルには魔力がどれだけ視えているのでしょーか?


 答えは「あんまり視えていない」でしたー。わーぱちぱちー。


 うん、カイル自身の身体から出てる魔力は視えてないみたいなんだ。困っちゃうよね。


 私が戯れに出してた魔力がちょぴーっと大きめだったせいかカイル産のちょろちょろ魔力と同じものとは認識してもらえず、何度も「え? これ魔力じゃないだろ? え?」みたいなやり取りが続いた。


 そのしょぼいのがお前の魔力だっつってんだろと何度怒鳴りたくなったことか。根気良く教えを説いた私を褒めてやりたい。


 なお「根気良い教え」の具体的な方法はこうだ。


1.とりあえず魔力をカイルにぶつけまくって無害なものだとわからせる。


2.目の前で魔力を魔法に変換して見せる。


3.真似してね?


 魔力は怖いものではないと教え、使い方を見せて教え、最後に自分でやらせて納得させるという基本に忠実な教育であったと自負している。


 いやあ、見慣れない魔力を過剰に怖がるカイルの姿は割と新鮮で、やがてこれがカイルの黒歴史になるのかと思ったらついつい熱が入っちゃったよね。


 魔力怖がってるのがうるさすぎて思わず口ふさいじゃった時とか、カイル涙目になってたし。どんだけビビってるんだーってね。


 ともかく、そうして落ち着かせたカイルを再度ベッドに寝かせ、中断されていた魔力調整マッサージを完遂した結果!


 なんと! カイルは!!


 魔力視の能力を得た!!!


 テレレレッテレー!


 ……いや、完全に副産物なんだけどね。

 頭部周辺の魔力の通りを良くしただけで魔力視ができるようになるなんて知らなかったし。そもそも魔力視なんかできたところで強さに影響なんてないだろーし。


 むしろ私の魔力と自分の魔力との差を目の当たりにしてやる気なくしちゃうまである。


 だけど、そこはほら。カイルだって騎士の息子だからね。そう簡単に折れたりなんかしないと信じてる。


 折れず、曲がらず。

 自分の強さを信じて突き進むんだろう。


 例えその強さが、真っ当な努力で身に付けたものではなくても、己の道を迷わずに進むんだろう。


 ……例え、その強さが! 可憐で純情な幼馴染みの少女に「うわ、カイルの防御力、低すぎ……」と同情されて与えられた力でも!! なーんにも気にせずに大喜びで振るうんだろう!!


 精神面の教育はカイルパパに任せよっと。


「で、調子はどう?」


 とりあえず私は現状の確認をしないとね。


 施術の終わったベッドから降り、んーっ、と伸びをしながら身体の調子を聞いてみた。


 我ながら、かなりの手応えありますよ〜。

 なにせ今回は遠慮せずにやったからね! 気の向くままに、やれるとこは全部と言っていいほど手を入れたからね!


 その結果、カイルの魔力効率は五割近くアップ。

 魔力の生成速度も微増して、当然魔力保有量もぐーんとアップ。身体中にじっくりと馴染ませたから魔力を動かすのもとってもスムーズだし、何もしてなくても《微・肉体強化》くらいの効果は出るようになってる……ハズだ!! 多分!


 これからはカイルが「筋肉ムキィッ!」って思った箇所で自動的に肉体強化という名の加護が発動……するかもしれない程度には強化できたと思います!!


「ん……、なんか変な感じだ。でも、身体が軽い……気がする。ありがとな、ソフィア」


 え、自覚ないの? それはちょっと怖い……かもなぁ。


 正直今回はやりすぎた感あるんだよね。

 調整や修復ってよりは、人体改造の方が近いっていうか……。


「あの、カイル……無茶しないでね?」


 一応釘は刺しておこうかな。夜な夜なバッタのお面被ってヒーロー活動とかされ始めても困るし。


 そう思っての注意だったんだけど、私の言葉を聞いたカイルはキョトンとしてた。そして。


「……ははっ。それはこっちのセリフだっての」


 何故か呆れた様子で苦笑し始めた。


 ……? どーいうこと??

 私が無茶って……今日なんかしたっけ?


 私の頭の上に疑問符でも見えたのか、カイルは改めて言い直した。


「お前こそムリすんなよ、って事だ」


 ドキッとした。


 ……そういう、こと?


 カイル、それってまさか……。


 まさかカイルの身体の改造もっとやりたい放題やって良かったってこと? ムリして我慢しなくていいと? ホントに?? マジで!!?

 だとしたら私、ちょっとやり残した事がないこともなかったりなんかしちゃうんだけども!!!


「……え、おい?」


 ああ、ああ! 我が身を省みぬその献身!


 カイルが幼馴染みで、ほんっと良かった!!


噛み合ってそうで噛み合ってない二人。


なおカイル君は今回得た新たな力を使い、無事に魔のマッサージ師の手から逃れられたみたいですよ。

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