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試験前日の過ごし方


 休みっていいよね。


 ……と、普段であれば誰もが同意するだろうこの言葉も、試験の前日ともなればまた違った意味合いを持つ。


 一年間の評価が明日で決まる。

 そんな大切な日を明日に控えたこの休日を、まさか一日遊んで過ごすような学院生は、特別クラスにはいないだろうと思う。


 ……と、言う事は、だよ。


「やっほーソフィア。遊びに来たよ」


「来たよー!」


 特別クラスでない人にとっては、今日という日もただの休日に相違ないという事だ。


 今日の客人、幼馴染みであるマーレもその一人。


 ましてやその妹ちゃんなんか、私がそれなりに大事な試験を控えている事すら認識しているかすら怪しいものだ。


 ま、その気兼ねのなさが気分転換にはちょうどいいんだけどね。


 マーレの妹ちゃんに明るさが無かったら、それこそ心配で明日の試験に影響が出そうだし。


「ノアちゃん、大きくなったねえ」


 少し見ない間に背の伸びたノアちゃんと目線を合わせてにこりと微笑むと、私なんかの上っ面の笑顔とは違った輝かしい満面の笑みが返ってきた。


 はあ〜癒される。小さい子って天使だよねえ。


「ソフィアちゃんは小さいままだね!」


 ぅごふっ。


 ……ふ、ふふ。大丈夫、ダメージは軽微だ。

 ノアちゃんも内面は成長していないようで、お姉さん安心したなあ!


 それにね、お姉さんが小さく見えるのは、それだけノアちゃんが大きくなったってことだと思うの。

 成長期真っ盛りのノアちゃんのと比べたら大した変化がないように見えるだけで、私だってきっと、きちんと計測したら、少しは成長してるはずだから……。


 胸のサイズを抜かされるその時まで涙は取っておこうと密かに心に決め、私は対ノアちゃん用の秘密兵器を取り出した。


「はいこれ、いつもの。私がお姉ちゃんとお話してる間、これで遊んでてね」


「やった!」


 もはやお決まりとなったノアちゃんへのオモチャ提供。


 今日のアイテムはみんな大好き、ジグソーパズルにございます。


 完成するとノアちゃんが好きだというお花が出来上がるとエサをぶら下げて遊び方を説明し、角から揃えるというコツも伝授した後、私とマーレはゆったりとお茶を飲みながらお互いの近況を話し合った。


「じゃあ普通クラスって試験しないの?」


「するけど、そっちほど全力じゃないよ〜。女の子なんか特に、成績が良くったって良いことないしね」


 学院は教養を高める場でもあるが、どちらかと言えば巨大お見合い会場みたいな側面の方が大きい。なので学院に通う女の子は、狙った男性よりも少し劣る程度であることが最良とされる傾向にある。


 男尊女卑とまでは言わないけど、女性が男性よりも優秀であると示す利点がほぼないというのが実情だ。


 ……とはいえ決まったお相手がいないのならば、自身が優秀であればあるだけ相手の格も上がるのだから、基本的にはみんなわざと試験で手を抜いたりなんかはしない。己の全力で取り組みはする。


 ただ、好みの異性を成績で判断することなんかほとんどないから、勉学に励む暇があればその時間を使って狙った相手にアピールするだとか、愛されるよう努力するだとか、そういった方面に力を費やす。だから自然と勉強は疎かになる。


 努力もしてない勉強は、全力でも大したことなくなると、これはそれだけの話だ。


「ソフィアは勉強好きだよね」


「うん。大好き」


 まあつまりはそんな訳で。


 特別クラスは同じ学院生にとっても、少し特殊な立場なんだよね。


 頭の良い生徒が集まるというか、頭が良くなくちゃいけない生徒が集まるというか。


 親に期待されてる人達は大変ですねって感じ。


 私? 私はほら、今をときめく聖女様だから。国家公認で結婚免除されてますから!!


 将来の旦那様に相応しい教養とか必要ないし、奥様として学ぶこととか閨の技術とか知識もなーんも必要ない。


 ぼっち最高ォ!!


「ねぇねぇ」


「ん? どうしたの?」


 前世の保険体育は大分マイルドだったよなーと思いつつ、学ぶのに抵抗がある知識も完全に他人事として割り切れる幸せを噛み締めていると、ジグソーパズルと格闘していたはずのノアちゃんが私の服を引っ張ってきた。


 ……ジグソーパズルの進み具合は、一辺が完成間際といったところか。


 なかなか苦戦しているようだ。


「ソフィアちゃん。あれつまんない」


「え!?」


 嘘でしょ!? みんな大好きジグソーパズルがまさかの不評!?

 あれ凸凹が被らないようにするのめちゃくちゃ大変で、切る線何回も書き直してたら結局完成までに丸一日くらいかかったのに!!


「また穴出して」


 しかもご要望の品が制作時間一秒の黒い穴(アイテムボックスの出入口をくっつけただけの板)とかマジかー。

 お姉さん泣いちゃう……。


「ちょっと待っててね……」


 というかあれ、今はお兄様の部屋にあるから……新しいの、作るか……。


 引き出しの中から取り出したように偽装してご注文の品を手渡すと、元気にお礼を述べたノアちゃんは早速楽しそうに黒い穴で遊び始めた。


 ……あれの何が楽しいんだろ。


 ノアちゃんって変わってるよね。


「私もあれ、結構好きだな〜。不思議な感触が楽しいよね」

「え!?」


意外と好評、黒い穴。

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