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0点の研究室


 Q.お菓子を失った悲しみはどうすれば癒せるのか?


 A.お菓子を食べれば良いじゃない!


 というわけで、ネムちゃんに喰らい尽くされたお菓子の代わりを求めてヘレナさんに会いに行こう。


 そう思い立ったところで、ふと思い出した。


「そういえばアドラスさん。昨日教室の方まで私を訪ねて来られたみたいですが、何か御用がありましたか?」


 ネムちゃんと繋いだままの手を持て余しつつ、なるべくフラットな切り出し方を意識した。


 若干今更感あるけど、思い出しちゃったんだから仕方ない。


 一応気になっていたのは事実ではあるし、聞かないままにして後々不都合がある可能性まで考慮すれば、私のアドラスさんへの感情など無視して事務的に事を済ますのが正しいと言える。


 そんな私の大人な対応は、雑な対応で切って捨てられた。


「……昨日? ああ、その件ならもう済んだ。お前が気にする必要は無い」


 ……コイツに憧れてるヘレナさん辺りがこんな対応されたら丸一日は凹みそうだな。


 そう思考を()らすことで、瞬間的に湧き上がった怒りを抑えこんだ。


 まあ? 私も? 気にする必要が無いってんなら詳しくは聞きませんけど?

 でも私の癒し空間である教室の空気を乱した詫びか事情説明くらいはあってもいいんじゃないですかねーと思うんですよお。そこはほら、ご立派な大人様の責務として、ねえ?


 なんて内心でいくら思ったところで私のムカムカが増すだけなので、ここはひとつ、楽しい妄想の餌食になってもらうことにした。


 妄想の世界なら誰をどれだけ辱めても無罪だからね!!



◇◇◇◇◇



 私はアドラス。【探究】の賢者アドラス。幼女趣味だ。


 今日も私が理想とする究極の幼女、ソフィア・メルクリスに足蹴にしてもらうという理想を叶えるために様々な策を用意してきた。早く御礼として私の全財産を献上したいものだ。


 さて、本日の作戦は「押してダメなら引いてみろ」と巷の女子の間で有効とされている戦術であり、既にその仕込みは完了している。彼女が毎日勉学に励む教室へと赴き、学友らに「私が彼女を探している」という印象を植え付けてきた。


 これで、彼女が……。麗しく可憐にして純粋なる天使の生まれ変わりの様な彼女が、その愛らしい唇で「アドラス様……」と私の名を呼ぶことになるだろうッッ!!!


 ふはははは!! なんと素晴らしいことか!!


 念には念を入れて、表向きには私の弟子となっている世界で二番目に完成された少女、ネフィリムにも彼女を連れて来てくれるようにと地に伏してお願いしておいた。これで私の野望も叶うだろう。


 さあ、ソフィア・メルクリスよ! 我が元に来るが良い!!

 そしてその神秘的な紫瞳に私の姿を写すのだ!!


 ああ正に、彼女は純情可憐にして才色兼備。八面玲瓏十全十美、羞月閉花とどれだけの美辞麗句を並べ立てたとて形容できない至高の美。


 彼女を眺める為ならば。

 彼女の笑顔の為ならば。


 私はいくらでも道化を演じると、この命に誓おうッ!!



◇◇◇◇◇



 ……なんか、想像以上の変態ができた。オープンな変態ってやーね。


 むっつりは表に出さないからむっつりではあるんだけど、流石にこれが本性ってことはない……と思う。それほどの異常者ではないと信頼してるからこそ妄想の中でこれだけの変態に仕立て上げられるんだし、もし現実にこんなことしてそうな人だったら妄想の前に通報するわ。


 美少女は見てるだけでも罪になるんだからねっ!! ……ただしお兄様は除く!


 お兄様の視線を釘付けにできるんだったら、むしろ自分から際どいポーズを取ることすらやぶさかではない。


「僕の前以外ではそんなことをしちゃあいけないよ」とか言われたらそのままあれやこれやの初めてを捧げるのだってドンと来いな所存ではあるけど、いざそんな場面が来たところで照れ過ぎて大した行動も起こせない自分が容易に目に浮かんだ。


 好きな人には強引にされたいけど、それ以外の有象無象に強引に迫られたら絶対鬱陶しいだろうなーというこの乙女心。


 本人ですら「乙女って面倒くさいな」と思うことがあるんだから、世の男性諸君の目には乙女という存在がさぞ複雑怪奇なものに見えている事だろうと思う。


 だからこそ苦難の道を乗り越えた先にある真実の愛は尊いんだがね。

 いつか私とお兄様もその域に……ふへへ。


「ソフィア?」


 っと、いけないいけない。


 危うく真昼間から「真実の愛〜禁断の兄妹愛はベットの上で花開く〜」的なエロ妄想に取り憑かれる所だった。ネムちゃんに声を掛けられてなかったら本番シーンまで突っ走ってたね! ナイスインターセプトだよネムちゃん!


「ここにはもう用がないし、そろそろ行こうか?」


「うん!」


 後暗(うしろぐら)いことなど何一つない、綺麗な笑顔でネムちゃんを誘うと、朗らかな笑顔が帰ってきた。


 やはりお菓子の力は偉大だな。


 そんな当たり前のことを再確認した私は、新たな出会い(お菓子)を求めてネムちゃんと共に新天地へと旅立つのだった。



 ……お茶すら出ない嫌味なおっさんの研究室とか、何の価値も無いよね。


「やっぱあの人嫌いだわ」

アドラスへの好感度が50下がった!

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