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凄すぎて言葉も出ない


 驚愕の新事実! クラスメイトは吸血鬼!?


 しばらく見ない間にすっかり野生へと帰ってしまったネムちゃんに、私ことソフィア・メルクリスはパクーっと美味しく頂かれちゃったのでした。


 ……という訳ではないらしく。


「あのねあのね! ホッケニゴーとよくこうやって遊ぶの! それでね、ソフィアの首からいい匂いがしたからね、美味しそうだなーって舐めてみたら楽しくなっちゃって、だからやりすぎちゃってごめんなさい!」


 相変わらず素敵な笑顔で楽しそうに謝罪するネムちゃんの言葉を読み解くに、どうやら私の首は遊びの延長でぺろぺろ地獄に落とされたらしい。なんてこったい。


 法華にGOとかいう聞き覚えがありそうでなさそうな謎の存在との不健全遊戯を私の身体で再現する必要性はともかく、ネムちゃんと会う可能性がある時はフルーツ系の香料は避けた方が良さそうだという結論だけは得られた。


 で。


「これはどこへ向かってるの?」


 現在、お昼休み。


 カイル改造計画を始動しようかと画策していたところを、にゅふふと怪しげで楽しげな笑みを浮かべたネムちゃんに連行されているという現状であります。


 今日のネムちゃんテンション高いね。


「せんせーのトコ!」


 以上、説明終わり。

 とズンドコ進む背中が語ってらっしゃる。


 なるほど、せんせーのトコ。つまり探求の賢者アドラスの研究室だな。そこで何をするのかなー?


 ……あ、そういや昨日、そのアドラスせんせーさんが私を訪ねて来てたんだった。すっかり忘れて帰っちゃったけどまさか怒られたりはしないよね? 何か言伝(ことづて)があった訳でもないしね。問題なんてあるわけないない。


 そんな気楽な考えのままネムちゃんの先導に従い、割と通い慣れてしまった感のある部屋の前まで来てしまった。


 もし怒られたら正論と屁理屈でぶちのめそう。


 そう覚悟を決めた私の前で、ネムちゃんの手によって挨拶もなしに勢いよく開け放たれる扉。


 その先に広がる光景を見て、私は思わず息を呑んだ。


「せんせー! きた!!」


「……来たか」


 ……おかしい。これは明らかにおかしい。


 扉が開いた瞬間から異常しか目に入らなくて、逆に私の頭がおかしくなったかと思った。


 落ち着け、私。相手はネムちゃんだぞ。このくらいは予想の範囲内……ではなくとも、まだかなりマシと言えるレベルの出来事だ。


 まずは冷静になって考えてみよう。


 扉を開いたら、そこには魔物がいました。


 いいよー、おっけー。研究者だもんね、そんなこともあるかもだよね。

 例えその魔物がちょっと見ないくらいの大物で、どう見ても部屋の入口通らないでしょってサイズの大猪型だろうと、寛容な私はどうやって運び込んだかなんて野暮な事は聞かないよ。そんなことは見た目のインパクトに比べたら些細なことだからね。


 はい次。魔物の絶大なるインパクトの原因そのいち。


 生きてる。


 天井から網の様なもので吊られてめっちゃ暴れてる。ロープか天井か知らないけどなんかミシミシ言ってるし。あと魔物特有の声? 音? っぽいのもひっきりなしでうるさい。ここの扉の防音凄いんだねと感心したわ。

 よく見ると網の中に囚われた上に手足も拘束口も拘束と何重にも(いまし)められていて、いっそ同情すら誘うような痛々しい姿にも見える。が、所詮魔物なのでそれ以前に強烈な恐怖感が強い。存在感の主張が激しすぎる。


 そんで次。ただでさえ圧倒的存在感を誇るデカブツから目が離せなくなる原因そのに。


 カラーリングが異常。


 網に吊られて逆さまになって暴れまくってるけど間違いなくこれは大猪を模した魔物。

 頭ではそうと理解しているのに、どうしても何度もマジマジと見直してしまう理由。それは奇抜どころじゃないド派手な体色にある。


 ってゆーか、魔物って基本黒じゃん。獣型でも輪郭歪んでるし、体毛って概念ないじゃん普通? なのに見てよ、このデカいの。頭からおしりの先まで目に悪そうなどぎつい黄色なんですけど。ペンキ塗り立てかな? と触って確かめたくなるほどに鮮やかで人工的な黄色なんですけども。

 しかも目の辺りだけ白いのはなんでだ。おしりのありそうな位置にピンクで大きなばってんが書いてあるのはなんでだ。そいつ目も尻穴もないでしょーよ魔物だよ? もはや魔物としてより謎生物として怖いわ。


 そんな謎の黄パンダ猪のド迫力を滑稽感に変換してくれる素敵アイテムが違和感そのさん。


 魔物入りの網にぶら下がってバッタンバッタン揺れてるプレートに描かれた文字「ホッケ2号」。


 ホッケニゴーってお前か。


 いや、だが待って欲しい。

 こいつが本当にホッケニゴーなのだとしたら、ネムちゃんとのサイズ差が説明できない。


 首元にかぷーっどころか頭からガブリと一呑みサイズだし、ネムちゃんが吸い付く側だとしても……首どこだよ。


 だんだん思考するのすら辛くなってきた私の耳にネムちゃんの自慢げな声が届けられた。


「どう!! 凄いでしょ!」


「うん……すごいね……」


 いやもうホント、すごいとしか言い様がないわ……。


「ネムちゃんの師匠って、想像以上に大変そうかも……」

アドラスへの好感度が20上がった。

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