表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
554/1407

ネムちゃんのいる日常


 学院に着いてみたら、ずっとお休みしてたネムちゃんがいた。


「ソフィアーっ!!」


「ネムちゃーんっ!!」


 だきっ! と熱い抱擁。


 ネムちゃんは相変わらず暖かくって抱き心地の良いピッタリサイズで、私の首元ですりすりと動き続ける頭がとても動物的で――。


「うひぃっ!!?」


 くすぐったいなぁもお〜とか思っていたところで、ぞくりとした異質な感触が走った。


 神経を直接撫で上げられた様な、刺激的すぎる感触。


 い、今……舐めた? 舐めたよね!!? なんで舐めうひゃっおぉぅっ!!? なな、舐めるのやめてぇ!!?


「ちょっ、ね、ネムちゃんん?? な、なんで舐めるのォ?」


「んんー? ……んむっ!」


「んひっ!」


 あああああああっ!! カプって、今カプってぇ!!


 ネムちゃんのお口によって完全に咥えこまれた私の首筋は、もはや一切の抵抗も許されない弱点(ウィークポイント)にほかならない。


 そんな敏感な部位を、ネムちゃんの舌が容赦無く這い回る。縦横無尽に暴れ回る。


 ぺろぺろぺろぺろぐりぐりちゅうちゅうぺろりんちょかぷーっ。


「〜〜〜ッッ!!!」


 ちょまっ、まっておねがい加減してぇえええええ!! ネムちゃんのテクやんばいっからぁぁああ!! んあああ!!!


 表情を取り繕っている余裕が無い。


 口からおかしな声が出ないようにするのが精一杯で、頭も働かなければ身体に力も……ッ、てかあのっ、ほんと、……っ、上手すぎません……ッ!?


 なんとか離れてもらおうにも、力の抜けた手はネムちゃんを引き剥がすには至らない。口を開いても言葉にならない。


 あれ? これもう詰んでない?


 ――詰んでるよ!!


 頭の片隅で冷静な自分が無情な結論を弾き出す。

 その僅かな間にも、ネムちゃんの舌技は休むことなく続けられている――!!


「んもんもんもんも」


「〜ッ! んっ、くんんっ!!」


 食べないでー! もむもむしないでぇー!

 ひゃわあぁぁってなっちゃうから舌で舐め回すのやめてええぇぇぇ!!!


 もはや自力での脱出は絶望的。


 こ、こうなったら、周りに助けを求めるしか生き残る術はないっ!!


 もう涙すら滲んできた目を必死に見開き、助けを乞うべく口を開いた。


「カ、、カァぁあああああっ、ッんんん!!! た、たへぇて……ッ!」


 はっっっずかしい!! なんちゅー声出してんだ私ィっ!!


 周囲の反応を確かめる余裕はないけど、自分がとんでもない声を出したのは分かる。


 ちょうど昨夜、部屋の外に漏れてたとしたらどんな声だったかとよーっく思い出してたばっかりだからね!! って嬉しくないわああああ!!


 もうお嫁に行けない……と心の涙を流していると、背後から聞き馴染みのある声が聞こえた。


「もうその辺にしときなさいよ……。ソフィアに嫌われるわよ」


「んむ!?」


 パッとネムちゃんが離れると同時、支えを失った私の身体は、自然と床にへたり込んだ。


 ああ、お兄様。申し訳ありません。ソフィアは汚されてしまいました……よよよ。


 座り込んだ私の顔を、ネムちゃんがおずおずと覗き込む。


「あの……ソフィア? 怒った?」


 怒ってはいないけど、かなりの辱めでした。


 と事実を述べるとネムちゃんが泣き出しちゃいそうな気配を感じたので、私は笑顔で「大丈夫だよ」と返しておいた。ってゆーか、腰が抜けて立てない……。とんだテクニシャンだよネムちゃん……!


「ミュラーも、ありがとうね」


「いえ……まあ……」


 救いの女神ミュラーにも助けてくれたお礼をと声を掛けたら、何だか歯切れ悪く顔を背けられてしまった。その横顔はほんのりと赤く染まっている。


 私はさっきまでの自分の状態を思い出して一気に血の気が失せた。


 ……私、さっきどんな顔してた?


 そろりと視線を巡らせるも、誰もがさっと顔を背けて目を合わせてもくれない。


 みーんな「何も見てないよ!」と言わんばかりにあからさまに視線を逸らして、でもちらちらと見てくる。その顔は一様に赤みが強いように思える。


 なるほど。つまり私は見るだけで恥ずかしくなるような、そんな顔をしていたという訳だな。ふむふむそっかー。


 泣いていいかな?


「……はは」


 あははー、もう全員の記憶でも消し飛ばすしかないかなー、まとめて記憶喪失にしちゃうぞー☆ と恥ずかしさのあまり正常な思考が出来なくなったまま身体中の魔力を練り上げていると、慌てたネムちゃんがあわあわとしながら高らかに叫んだ。


「ソフィアの首のお肉おいしかったよ!!」


 びっくりして首筋に手を当てるも、異常はない。どこも(えぐ)れてはいない。


 ……肉、ついてるね? 食べられてないね? え、何が美味しかったって? 汗かな?



 ――相変わらず予想外に過ぎるネムちゃんの言動に振り回されながら。


 私はようやく、ネムちゃんがいる日常に戻ってきたという実感に包まれていた。


「ソフィアっておいしーね!」

「その目やめて?」


その後しばらく、ソフィアはネフィリムに見つめられる度に首を抑えていたそうな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ