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ソフィアは肉盾を手に入れた!!


「ねえ、ソフィア」


「はいっ!」

 ななななんでございましょうかカレン様!!? とビクビクしながら返事をすれば、カレンちゃんは不思議そうに首を傾げたあと、


「ソフィアは、どう思う? カイルくんとソフィアでミュラーに立ち向かうの! 結構いい勝負になると思うんだけど……」


 などと、とても楽しそうな顔で仰られたのでした。



 カレンちゃん、言葉の暴力を振り回した自覚ゼロ。


 怪力を誇る【豪腕】のお嬢様は、肉体以外の面でもとんでもなかった。


「そうだね。いいんじゃないかな」


 カレンちゃんの恐怖から開放されるならもうなんでも。


 カイルが驚愕の表情で首をぶんぶん振ってるけど知ったこっちゃない。意見があるならご自分でカレンちゃんに物申すといいと思う。私はもう諦めました!


「やっぱりそう思う!?」


 私の手を取ってきゃいきゃい喜ぶカレンちゃん。


 ほら、カイル。見るといい。


 君が犠牲になるだけで、カレンちゃんはいつも通りの優しくてかわいい女の子に戻るんだ。


 もうこれ以上の犠牲を出してはいけない。


 カイル、君がみんなを守る勇者になるんだ!!


 私の視線から意図を汲み取ったカイルはすっくと立ち上がり、


「ミュラーはそれでいいのか? 俺なんかいても邪魔なだけだろ!?」


 この場で唯一カレンちゃんに物申せるミュラーに泣きついていた。


 意図とか全然、全く、これっぽっちも伝わってなかった。


 カイルに勇者の素質はなさそうである。


「俺なんかがいたら思う存分ソフィアをボコボコにできないだろ!?」


 されないから。ボコボコになんてされないから。その前提やめてくれる?


 むしろ私がお前をボコボコにしてやろうか。


「うーん……」


 カイルに詰め寄られたミュラーは、何故か即答を避けて、私の方を窺っている。そして。


「そうね。いてもいいわよ」


 カイルの参戦を許可して、意味ありげな視線を私へと向けた。


 ……なんか企んでそー。


 とはいえミュラーに相対する恐怖を分かち合える仲間が出来たのは喜ばしい事だ。

 カイルの肩を叩いて「ウェルカム同士よ」と慈愛の笑みを浮かべれば、ものすっごいしかめっ面を返された。


 そうトゲトゲしなさんな。

 今日から君も、晴れてミュラーにボコボコにされる側ですよぉ? ふへへ、ざまみろ。


「それじゃあソフィア! 今日もいい勝負、期待してるね!」


 他人の不幸に暗い笑みを浮かべていたら、カレンちゃんに現実へと叩き落とされた。


 他人がいくら不幸になった所で私の不幸には何の影響も無

いという事実はもう少し忘れていたかったなー。


「じゃあ、はい。これカイル用の木剣ね。ソフィアのはこっち」


 着々と準備が進められていく。


 私らが道場に着いた時点で既にバルお爺ちゃんを含めた今まで鍛錬をしていたと思しき人達が完全なる観戦体制を整えて待ち構えているのは、正直どうかと思うのだけど。そのようなことに疑問を持つ常識的な人物はこの家にはいないらしい。


 常識的かつ紳士的で汗の滴る姿が究極の目の保養にもなる完全無欠のお兄様が今日ここにはいないという事実が、私にはとても悲しい。


 ああ、お兄様。麗しのお兄様。


 お兄様は今、家でどのように過ごされているのでしょうか……。


「ソフィア、現実から目をそらしても何も変わらないぞ」


 ……カイルってば、ホントに空気読めないよね。


 少なくとも私の気分が変わる。

 それだけで、私にはとても意義のある事なのに。


「それじゃあ準備はこれで……ああ、そちらは二人だものね。作戦会議でもする? でないと二人であることの利点がまるでなくなってしまうものね」


 余裕綽々のミュラーは「いくらでもお好きにどうぞ?」とばかりに手なんかふりふり振ってるし。


 煽ってるなぁ……とは思うものの、カイルの実力ではミュラーとの間に隔絶した差があるのもまた事実。


 どうしたものかな。


 そう考えていると、カイルが寄ってきて私の耳元で囁いた。


「俺、二人の邪魔しないように最初にミュラーに突っ込んでやられとくから。あとよろしく」


 まるでやる気がないね。


 まぁカイルは私以上にミュラーの強さを知ってるんだろうから、その判断は分からないでもないけど。


 でもそれだとカレンちゃんの望みが……と考えたところで、ソフィアちゃん、ビビビッと閃いちゃいました。


 私とカイルが力を合わせて、ミュラーといい勝負をすればいいんだよね? そしてカイルは先制攻撃をしたあとの事を、()()()()()()()と。


 そうだね、どんな状態になったら戦闘不能と判断するかなんて取り決めは無かったもんね。それなら……くふふ。


 思い付いた作戦の有用性を計算しつつ、私はカイルの発言を全面的に肯定した。


「うん、分かった。()()()()()()()()()()の事は任せてよ」


「ああ」


 空返事のカイルは、ミュラーが手に持つ木剣を眺めている。


 きっと「痛くないといいなあ」とか考えてるんだろうな。この後自分がどんな目に遭うのかも知らずに、呑気なものだ。



 ……痛いくらいで済むといいねえ。


カイルくん、警戒する相手を間違えた模様。


一方カイルの背後で怪しい笑みを浮かべるソフィアを目撃してしまったウォルフくん。

怖いので何も見なかったことにしたようです。賢明ですね。

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