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義務からの解放


 はぁ……疲れた。


 暇人(ヨル)が家に来る度にわざわざ報告とか、一体何の意味があるのだろうか。


 私の部屋に居座るヨルの事を話すとなると必然、私の私生活についても話すことになる。それが物凄く嫌なのだけど。


 女神様は私が髪の手入れをされている所を興味深げに眺めておいででした、とか。


 女神様は人が纏うような衣類を着用なさらないようで、私の着る寝間着について色々と質問をされました、とか。


 ……好きな男子は居ないのかと聞かれました、とか。


 これら全部を、私の口から直接、いい歳いってそうな中年のおっさんに報告させられているんですよ。権力を使って無理やり。嫌がる私を、無理矢理!!


 せめて報告する相手は女の人にしておくれよぅ。


 おっさん(国王)って実は女子供を苛める趣味でもあるんじゃなかろうか。幼女のプライベートを聞き出してどんな変態妄想を繰り広げてるんじゃオラー! と文句を言いたくもなるが、お母様が隣で目を光らせている状況では心の中で雄叫びをあげるくらいしか為す術がない。


 私はソフィア。

 哀しき運命に捕らわれた薄幸の美少女。


 魔法の才能を遺憾無く活用して普段は自由を謳歌していても、権力者相手にはこんなに無力。


 悔しいっ! けど、権力には勝てなかったよ……ッ!

 と若干涙目になりながら報告を進めていると、なんと王様から、次回以降はお母様経由での報告も許可するとのお達しが!!


 王様ってとってもいい人だったんだね!!! と思ったところで気がついた。


 ……あれ? でもこの辛い状況を生み出したのも、王様なよーな……?


 ああ、権力者の思い付きに翻弄される可哀想な私。帰ったらまたお兄様に慰めてもらおーっと。


 あんな不真面目な女神を信仰する人がマトモなわけがないと現実を正しく認識したところで、子供は子供らしく、学びの場へと戻るようにと指示された。


 用が済んだらポイ感がすごい。


 ともかく。

 私も王城になんて長居したくもないので、言われた通りさっさと学院へと向かいまして。


 そして行き着いた、もはや遅刻常習となりかけていた教室で――事件は起こっていたのである!!!



 ってゆーか、みんないっつも元気よね。


 元気なのはいいことだねー。と、のへへんとしつつ、みんなの話を聞いていた。

 あ、ミュラー。髪の毛無事に修復できたよー。もう怒ってないよー。


「ソフィア、今度は何したの?」


「ソフィアさんって顔が広いのね。【探究】の賢者様とお知り合いだなんて知らなかったわ」


「これって授業とどっち優先したらいいんだろうな?」


「そりゃ賢者様だろ? なんたって賢者様だからな! 俺初めて見た!!」


 なんかね、【探究】の賢者がすごい勢いで私を探してたんだって。くわっ! って必死の形相しながら教室に現れたんだってさ。不審者だね。


 と、冗談はともかく。


 あの人が私に用事とか思い当たる節が全くない。


 真っ先に思い浮かぶ共通項といえばネムちゃんだけど、例えネムちゃんの緊急事態にしたってメリーを使っていじめ倒した私にわざわざ報告してくる理由が思いつかない。


 貸しを返しに……ってタイミングでもなければ雰囲気でもなかったようだし。


 あとはなんだ。……お母様関連か?


「それで賢者様は私に何の用事だったの?」


 情報の足りないまま考えてても埒が明かないので、【探究】の賢者と直接会話をしたらしい子に話を聞いた。が。


「さあ? ソフィアならまだ来てないですよって伝えたら、なんだか驚いた様子で『いつからだ!?』っていうから、朝からですって伝えたら、『朝にはいたのか!』って。そうじゃなくて、朝からずっと見てませんって伝えたんだけど、そうしたら『……なんでこんなに平和なんだ!』って叫びながらどこかに行っちゃって……」


「あ、おれ王城に行くって言ってんの聞いたぞ」


 お、有力な情報助かるねー。


 とはいえ話を聞いても賢者様(アドラス)の目的がさっぱり分からないので、私としては入れ違いになったのも運命ってことで放置する案を採用したいと思う。


 ぶっちゃけた話、そろそろ大人の都合で学院生活を乱されるのにも辟易としてきたというか……ねえ?


 王様の引き際が完璧すぎたから、ここで強く出やすい相手に会ったらうっかり八つ当たりしちゃいそうってのもある。

 冤罪はよくないもんね。


「あれ? ソフィア、賢者様探しに行かないの?」


 完全に腰を落ちつけた私に疑問が投げ掛けられるが、私の方こそ疑問に思う。


「どこにいるかも分からないのに無理でしょ」


「まあ……たしかに?」


 というか、私の方には用事ないしね。


 魔力を探ってみたら既に学院の敷地外に出ちゃってるみたいだし、追い掛けるだけ無駄なんだよね。


 だからその件はもう放っといて。


「それより! 私は! 勉強がしたい!!」


 最近学院にいられる時間がめっきり減ったの、これ結構寂しいんですけど!! という思いの丈をちょっぴり声に出してみたところ、なんだか変な人を見るような目で見られた。


「ソフィアは変わり者だねぇ」


「信じらんねぇ」


 なんで! もうすぐ試験だもん、普通でしょ!?


「……? ……ソフィアの後ろ姿、昨日とは何かが違うような気がするのだけど……気のせいかしら」

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