コツとか言ってないで勉強しよね
今回の報告は短めだった。
実際の時間としても、気持ち的な時間としても。
私が王様に慣れてきたってのもあるだろうけど、ヘレナさんがあわあわしてるのを見てたらいつの間にか終わってた感ある。
ヘレナさんは癒し系だね!
「それじゃあヘレナ。ソフィアのことをくれぐれもよろしくね」
「はいはーい。そんなに心配しなくたってソフィアちゃんならしっかりしてるから大丈夫よ。ねー?」
「はい! 心配ご無用です!」
ねー? と言われて「ねーっ!」と返すのはさすがに不興を買うかと思い、心配いらないぞ! とアピールをしてみたけど、何故かお母様に疑いの目で見られた。そんな気はしてた。
最近お母様の考えてる事が全然理解できない件。いい加減誰かに相談した方がいいかもしれない。
こないだのマジ説教みたいなのをもう一度でもされたら私、それだけで引きこもりになっちゃうかもしれない。それくらいお母様に怒りを向けられるのが怖い。
……このジト目も、怒ってるんじゃないですよね? 私をからかって遊んでるか、さもなければいつも通り、私の無邪気さに呆れてるとかそーゆーのですよね?
呆れられるのだって本来なら良い事ではないのかもしれないないけど、そこはほら、そーゆー目を向けられるのは昔からしょっちゅうで、もう完全に慣れてるっていうか。ねえ?
逆にドヤれるまである。
……ま、それもお母様が本当に呆れてる、って分かる時だけなんだけどね。
ともかく、また何かやらかさないかと疑いの眼差しを向けられながらも、私はお母様と別れ。そのすぐ後には、研究棟へと向かうヘレナさんとも別れ。
せめて残りの授業くらいは真面目に受ける為に、シンと静まり返った廊下を、教室へと歩き出すだった。
――と勉学に励むつもり満々だったのに、教室に着くと同時に休み時間へと突入しちゃいましたとさ。
間がいいような、悪いような。
とはいえ脳内時計を有する私には当然この事態は予測出来ていたので、今は予測出来なかった事態に対処するべく頭を働かせているんだよね。
それ即ち、「ソフィア今日はどうして遅れたのー?」と話しかけてくる友人たちへの対処……ではなく。
「ソフィア来たソフィア!」
「ソフィアー勉強教えてっ! じゃなかった、勉強の仕方教えて!」
「私も私も! 私も教えて欲しいっ!」
何故か学習意欲に溢れている友人たちへの対応だった。
「勉強くらい教えるけど……どうしたの?」
今日も授業をすっぽかしたサボり魔ソフィアちゃんは、何故か教室で熱烈な歓迎を受けたのでした。
モテる女は辛いね。
でも正直なところ、私の方が今日の授業の内容を聞きたいんだけどね?
「聞いたの、勉強ができるコツ!」
「ソフィア理論だっけ? これさえ守れば優秀な成績が取れる!! って話題になってるよ」
「ヒースはダメだ。アイツ頭良すぎて教えんの下手だわ」
聞くところによると、どうやら昨日ミュラーに話した勉強のコツが変な広まりを見せているらしい。
みんな昨日までは「今更慌てる必要なんてありません」みたいな顔してたのに、この必死さよ。
さては早めに来た人達が昨日の試験の話でもしてて、高得点でもまるで安心できないと悟ったな?
珍しく高得点が取れたと思ったら、実はクラスの半分以上は満点だったとか……これって中々の罠だと思う。リチャード先生恐るべし。
というか、ミュラーにだって別に普通のことしか話してないと思うんだけど、コツやら理論やら、一体どこで話がねじれたんだろうね?
これが藁にもすがる思いってやつかな。
まあどんな効率の悪いやり方だって、勉強さえちゃんとしてれば誰だって試験の点数は上がるだろうけどさ。
「何が問題に出るか分かるってホントか!?」
「十分で一時間分の勉強が出来るって聞いたぞ!」
「ね、ソフィア。……休憩した方が頭に入るって本当? それって本当に本当?」
「一度聞いたら忘れない。その方法とは」
それにしたって、デマと真実が入り乱れてカオスな事になってるな。
嘘を信じさせるには少しの真実を混ぜるのが効果的とは聞くけど、明らかに嘘って分かるのもあるよね? なんでみんなこんな話信じてるんだろ。
これはきっと、あれですな。例によってのあれですな。懲りずにいつもの、あれでしょうなぁ。
――私は断言しよう!!
噂を広めた犯人は、このクラスの中にいる! そして犯人はカイルだー!
多分!!!
頼られると嬉しくなっちゃうソフィアちゃん。
頼られると嬉しくなっちゃうソフィアちゃんを見て幸せな気分になるクラスメイトの面々。
みんな幸せでハッピーね。




