表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
523/1407

倒れ慣れてる研究者


 ヘレナさんの処遇が我が家で、本人不在のまま勝手に決まった夜が明けて……翌日。


 私はまたまた学院をサボらされていた。


「……久々の登城って緊張しない? ねぇ、ソフィアちゃんは平気?」


「ソフィアは昨日も来ていますから」


「そうなの!?」


 はい、実はそうなんです。昨日も無理やり連れてこられたんですけどね。


 というわけで、本日のメンバーはヘレナさんとお母様のお友達コンビ。それに女神様係の聖女こと、ラブリーエンジェルソフィアちゃんの三名でお送り致します。


 女神様の死刑宣告お届けしちゃうゾッ☆ キラッ☆


 という事態は無事に回避できたので、それだけならまあ良かったねで話は済んだのだけど。


 大事な試験が控えるこの時期に、こう何度も授業を抜けさせられるってのはどうなんだろうね。

 サボりってのは(たま)にするからドキワクするのであって、毎日サボってたらそれはもうただの不真面目な生徒だ。このままじゃ私の称号が《不真面目聖女》になってしまう。


 それもこれも、ヨルがヘレナさんを消そうなんて言い出すから……。しかも本人は、私らの面倒な後始末など知らんとばかりに昨日話がついた時点で帰っちゃうし。お母様の部屋から直帰だよ、信じられる?


 私の部屋に残ってたシンに「ヨルならもう帰ったよ」と告げた時の驚きと信じたくないという気持ちが()い交ぜになった表情(かお)といったら……、さすがに可哀想になったよね。


 割かし好き勝手していると自負するこの私が断言しよう。


 ヨルはもうちょっと、周囲の迷惑とか考えた方がいいと思います!


 大体ヨルは行動の全てが常軌を逸しているというか、リンゼちゃんの気配り能力を少しは参考にして……とヨルに対する不満をふつふつと滾らせていると、適当にあしらっていたヘレナさんが私の肩を揺すり始めた。


 ここまでずっと喋りっぱなしだし、何より昨日まで倒れてたはずなのに……元気だなヘレナさん。


「ねぇ、ねぇソフィアちゃん。本当に女神様が、私の事を? アイリスやソフィアちゃんじゃなくて、私の事を評価してるって本当?」


 お母様が何度もそうだって言ってるのに、そんなに不安になるもんかねー。


 まあヘレナさんが他人からの評価を殊更(ことさら)気にする性格だってのは分かりきっていたことだ。きっと今も「これはもしや夢なのかしらん!?」とか思ってるんだろう。ヘレナさん、結構すごい人なのに自己評価が低めなんだよね。


 私はヘレナさんの不安を取り除くべく、天使の微笑みを浮かべてあげることにした。


「ええ。『そんな事が出来る人間がいるとは思わなかった』と、大変驚いておられましたよ」


 ヘレナさんはキョトンとした。


「……、……? なんだか話し方が妙だけど、調子でも悪いの?」


 やめて。お母様の前で猫被ってるだけだから気にするのやめて。


 普段お母様のいないところでは礼儀を脱ぎ捨ててるだなんて、バラしてはダメなんだよ!!


「いいえ極めて快調ですよ? それよりヘレナさんこそ体調は大丈夫なのですか? まだ病み上がりなんですから、あまりご無理はなさらないで下さいね」


「そうよ、ヘレナ。貴女少しは落ち着きなさいな」


 その話題はいけないと話の矛先を逸らしたらお母様が乗ってきたので、これ幸いと心配している振りを気持ち過剰にしておいた。


 実際心配してない訳では無いんだけど、なんか本人元気だし。


 多分励まし上手なシャルマさんがまた優しい言葉と美味しいご飯ででも介抱してくれたんだろう。うーむ、羨ましすぎるなぁそれ。

 私も最近呪われてんのかってくらい面倒事が降り掛かってくるし、倒れたらシャルマさんが手厚く看護してくれたりしないかなぁ。無理かなぁ。


「大丈夫よ、どうせベッドで寝てただけなんだから。無理をしすぎて翌日寝たきりなんて、若い頃にはよくやってたの知ってるでしょ?」


 私のそんな望みは露知らず。

 シャルマさんのご主人様という恵まれた環境にいるヘレナさんは、実にお気楽に私たちの心配を一蹴していた。


 大変失礼だけど、もうそんな無理がきくほど若くはないんじゃないかなーと思わなくもな……かった気がしたけど気のせいだったね、うん。ヘレナさんは若い。ヘレナさんと同年代のお母様ももちろん若い。こんな当たり前の事に疑問を持ったりなんかしないよ? 大体女性の歳をとやかく言うのなんて失礼じゃないかと私は思うわけで――。


「……ソフィア」


「はひゃい!」


 やっべ。変な声出た。お母様がジト目で見てるぅ。


 ここここんな時はあれだあれ。ほら助けた亀が恩返し的なあれがそれで助けてヘレナさぁん!! と袖クイッして上目遣いですぐさま助けを求めた。

 昨日助けた恩をここで返してくださいな!!


「昨日はヘレナの症状を詳しく聞いていませんでしたが、実際はどのような様子だったのですか?」


 いざとなれば……と色々考えたけど、どうやら無用の心配だったらしい。


 もー、お母様ったら私を脅かして遊んでるフシがないかな!?


昨夜は女神様が帰った後、夕食後に一体何があったのかと問い詰められてたみたいですよ。

あらかた話した後には無論、ヘレナに関する報告が遅れた事をたっぷりと叱られたソフィアちゃんなのでした。なむなむ~。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ