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重要そうな案件はお母様に!


 今夜のびっくり仰天ニュース!


 ヘレナさんは、女神様が断じた「人間にはできない事」ができちゃう才能ある側の人間だったらしい!


 やったねヘレナさん! 女神様公認だよ!!



 ……という事実が判明したので、急遽お母様に相談しに行く事にしました。


 いやだって、ヨルってばヘレナさんがあの魔力作れるって分かった途端に「ソフィアはその人と親しいの?」「世界の均衡と一人の人間、どちらが大切だと思う?」とか聞いてくるんだもの。このままだとヘレナさんが消されちゃう。


 なんとか(なだ)めすかして、ヘレナさんからあの魔力の作り方に関する記憶を消す、という程度で妥協してもらったものの、未だに「殺しちゃった方が確実なのに」とか平然と言っちゃうヨルが怖い。


 私この世界に転生してから「殺す」って単語聞いたのこれが初めてかも知れない。それが冗談でもなさそうなのがもう堪らないよね。


 ちょっと常識の壁が思った以上に辛そうだったので、ヘレナさんとは昔からの友人であるお母様も交えて、ヘレナさんの処遇を決めよう! ……という体で、お母様を味方につけてヘレナさんの助命をより確実なものとする作戦に出たのだ。

 ヨルには情で訴えるのが効きそうだからね。


 私の部屋から見知らぬ美女が現れても大して驚きもしない訓練されたメイドの一人を捕まえて、お母様への言伝(ことづて)を頼む。これで全ての準備は万端整った。いざ、お母様と共にヨルの説得を!! ……と思っていたのに。


 お母様が味方だと思っていたのは、私だけだったようだ。



「ご挨拶が遅れ大変申し訳ありません。私はアイリス。ソフィアの母で御座います」


 ヨルに向かってつらつらと言葉を並べ連ねるお母様。


 王様相手でも見せなかった穏やかな笑みを浮かべて丁寧に応対する様は、まるで万人に愛を捧ぐ、心の綺麗な貴婦人のよう。


 そんな見た目完璧な貴婦人様は、伏せた顔を上げる一瞬だけ、私の方に凄い圧を放ってくるんですよね。すると目が合ってもいないのに、なぜか私は背筋震わす眼光に睨み据えられた気分になるんですよね。


 いやあ、不思議だなあ。理屈に合わないこれはきっと気の所為なんだろうなあ。被害妄想とか相手にも失礼だよね、うんうん。


 当然、顔を上げたお母様は般若の顔で私を睨んでいるなんてことは無く、相も変わらず見慣れなさ過ぎていっそ胡散臭いにこやかな笑顔をヨルに向け続けている。


 顔面が固まったんじゃないかと疑うその表情の中で、ただ瞳の奥だけが、ヒヤリとする感情を込めて私を見ている。そんな気がする……ような、しないような。


 何度か視線を切ろうとヨルの身体が壁になるように移動したのに、その度にお母様も移動して常に視界から外れられないのは、果たして偶然なのか、それとも。


 視線はこっちを見てないのに、常に視線は通る位置。そして時折強まるこの悪寒。


 私はお母様に友人の危機を報せ、その危機を退けるチャンスまでもを同時に提供した自慢の娘だと思うのだけど、なんでお説教の時と同じ空気を感じなくちゃいけないんですかね。


 解せぬぅ。


「それで……ヘレナが神の意志に背き、罪を犯した、と。女神様御自身が罰を下そうとしたところ、ソフィアが『記憶の破棄だけで許して欲しい』と嘆願した。そういう事ですね?」


「まあ、そうね」


 そして私がヘレナさんの助命を嘆願したことになってた。


 嘆願……いや、いいけどね。ヘレナさんが助かるならなんだって。

 治したその日に処刑決定とかホント冗談じゃないんで。


 あの魔力がどれほど危険な物かはまだ完全には理解していないけど、ここでヘレナさんが死んだって何も解決しない事くらいは分かる。


 もしヘレナさんと同じくあの魔力作れる人がまた現れたら、ヘレナさん無駄死にだからね。


 本当に世界の危機でヘレナさんが死ぬ事でしか解決できないってのならまだしも、現状どう考えてもヨルの怠慢だもん。許容できるわけが無い。


 だから。


「お母様」


 とりあえずヘレナさんには、あの魔力の作り方は忘れてもらって……と思ったまではいいのだけど。


 なんとなく、もっといい解決方法がありそうな気がするんだよねー。


 思い付かないけど、何かありそう。そんな時は!


「ヘレナさんの友人として、もっと適切な対処が思い浮かんだりはしませんか?」


 困った時のお母様!


 ……ヘレナさんがあれほど喜んでた固有魔法? に関する記憶が、私の一存だけでまるっと消し飛ばされちゃいそうなのに耐え切れなかっただけでもあるんだけどね?


 それでもお母様ならっ、きっとなんとかしてくれる!!


 そんな無責任な期待の眼差しを向けた先で、お母様は。


「……ソフィアに期待されたなら、応えないわけにはいきませんね」


 未だに胡散臭い笑顔を続けていた。


 思わず変な顔になりそうになったのを、頑張ってこらえました。


連日女神様案件を持ってこられて内心では辟易しているソフィア母。

面倒事を持ち込んでおいて何故か自慢気な娘が理解不能。

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