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世界を征服できる魔力


 昔の漫画でさ、よくあったじゃん。不良がカツアゲする時に「ほらその場でジャンプしてみろや。小銭の音が聞こえるぜぇ?」ってやつ。私いま、あの被害者の心境ね。


「これで全部?」


「全部です……」


「フェル、エッテ。アイテムボックス内にも残ってなかった?」


「キュッ」


「キュイ」


「そう。これで本当に全部みたいね」


 身ぐるみ剥がされた感がすごい。


 精神的屈服ってゆーの?

 リンゼちゃんには手の内が全部バレてるから、何も隠し事ができない。どうやっても全て暴かれるというこの無力感。ゾクゾクするね。


 なんか諦めの境地を通り越して、幼い女の子に変態的な責めを受けてる気分になってきたよ。


 リンゼちゃんマジ女王様。大人女神様にフェルとエッテまで味方に加えて最強の布陣ですね。私も配下に加えて四天王とかどうかな。一人だけ敵役とかやってらんないからマジで。


「で、その魔力がなんなの?」


 私から徴発された魔力塊はヨルの手の中で散々弄ばれていたが、もう私が持っていないと分かると、その固まりもぱっくんちょと丸呑みにされてしまった。やっぱり食べるんだ。


「これね、ちょっと危なそうだったから」


 そう言ってヨルは、唇を小指でなぞった。


 へー、そう。危なそうだと思ったら奪い取って食べるのが女神的な常識なんだ。へー。


 まんじゅうこわいかな?


 怖すぎて怖すぎて目にも入れたくない! 見たくもないから食べちゃったよーもう二度と見せないで! ってか? 私の秘蔵プリンで満足しろよ。


「それ、手に入れるの結構苦労したんだけど」


 私、まだ怒ってますよー。満足のいく説明を求めてますよーとベッドに寝転がったまま足をパタパタ、不満を露わにぶーぶー言ってたら、リンゼちゃんに「もっと淑やかになさいな」とおしりをペンと叩かれた。


 ……お、お父様にも叩かれた事ないのにッ!!


「ソフィアも気付いていたでしょうけど、この魔力は放っておいたら災厄級の被害を齎していたわよ」


 純潔聖女のおしりを叩くとか……これはもうリンゼちゃんには身体で責任を取ってもらう他ありませんな、うへへ。とか思ってたら、なんだかヨルの話がいつの間にか大事になってた。


 何にも気付いてなかったけど、とりあえず神妙に頷いておこう。うむうむ。


「全く、こんな危険な物を一体何処で手に見つけて来たのやら……。世界征服でも望んでるの? 本当にあなたは、私の予想外の事をするわね」


 どうやらあの魔力は、世界征服をするのに有用なアイテムだったらしい。私はいつから悪の秘密結社ルートに入っていたのだろうか。世界征服とか、そんなの……あ、あんまり興味ないのになー?


 こんな時はあれだあれ。


「あははー」


 秘技、笑って誤魔化す。


 ――私は屈託のない笑顔を浮かべた!!


 何を誤魔化すかって? 私の心の焦りだよ。


「で、どう危険だったの?」


 そして直後に誤魔化しを破棄。危険を正しく認識するための行動を開始。この無秩序さこそ私のジャスティス。


 いやだって、その女神ですら危険と感じちゃう魔力、一個人が興味本位でバンバン増産出来ちゃうんですよ? 危険がヤバない? 早く対処しないと世界崩壊とかしないかと心配になるのも当然って言うか、ヘレナさんを完治しないで数日程度は寝たきりにでもさせときゃ良かったかと本気で後悔しそうになっちゃうみたいなななな!!


 あ、やばい。なんだか本気で心配になってきた。


 ヘレナさん、お願いだから大人しくしてて下さい! 女神シャルマさんの監視下でずっと封印され続けてて下さい!!


「あれは大体の用途において魔力の上位互換ではあるのだけれど、そのせいで魔力の大切な特性である『生命の維持』が現行の生物には適用できないという重大な欠点があって……。なのに他の魔力と同じように魔素を魔力に変換して世界に満ちようとする能力は高いものだから、一定以上増えると恐らく、増幅する速度が加速して……」


 やめてやめてやめてこわいこわい。想像したくもない。


 想像したくもないけどそれって、普通に世界の終わりじゃないですか?


 あらゆる動植物に必須の魔力が置き換わる。

 世界の全ての魔力が、動植物の命を繋げない魔力に、全部。


 ……ヘレナさんなんてことしてんの。


「それは……とっても危険、だよね?」


「そうね」


 我ながら貧弱な語彙力だとは思うけど、だって他に言いようがない。


 魔力はとても便利な力で、それだけに扱い方を間違えてはいけない。そーゆーものだと思ってたのに。


 まさか生み出した時点で危険な魔力があるとは思わなんだ。


「なら、その魔力って、もう作らない方がいいよね?」


「え?」


 確認の言葉に、ヨルは奇妙な反応をする。


「だから、さっきの魔力を――」


「作ったの? あの魔力を? 拾い集めたのではなく?」


 ヨルの顔がグイッと近付いてきた。


 お……おう。え、なに。探せば落ちてる物なの?


 混乱する私に、ヨルは告げた。


「あれは、人に生成できる魔力ではないわ。……いったいどうやって作ったの?」


 それを今夜調べようと思ってたんですよ?


「もしも世界征服したなら……ここにお菓子の国を作ろう!(願望) そして実務はお母様に丸投げしよう!(他力本願)」

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